変身の目的
学校から戻ると、部屋の中に奇妙な動物がいた。
カワウソくらいもある、二頭身のウ~パル―パで、つぶらな瞳。
ぬいぐるみの様なそれが、立ちあがってこちらを見ていたのだ。
「キャー、かわいい!」
私は思わず駆けよって抱きしめたくなったが、すんでのところで思いとどまった。
だって変ではないか。
今この時間には、お父さんもお母さんもいない。
こんな大きな動物がどうやって家に入って来たというのだ。
その上よく見ると、それは学校で習ったどの動物にも当てはまらず、さらに怪しい事に手には輝くバトンを持っていた。
小学生のお子様ならともかく、高一にもなってこんな危険な香りがする動物を、友達と受け入れるわけにはいかなかった。
「う、宇宙人?」
私はそっと後ずさりして部屋を出ようとした。
すると突然、そのウーパルーパが私に日本語で呼びかけたのだった。
「君、名前は?」
「さ、さやかです」
乗せられた自分に慌てながら、私は両手で口をつぐんだ。
「恐がらなくていいよ、さやかちゃん。僕の名はブルセーラ。君に魔法少女になって欲しいんだ」
それは全身をとろけさせるような言葉だった。
高校生にもなって、なにをバカなと思われるかもしれないが、実は私は昔から魔法少女に憧れていたのだ。
その夢が、今まさに叶おうとしている。
もちろん、漫画みたいな話だというのは分かる。でも、このバトンを手にした不思議な動物は?
一挙に乗り気になった私だが、どうやらすぐに契約というわけでもなかった。
ブルセーラは、バトンを私に渡しながら、「ただね、適正ってものがあるので、一度このバトンで変身してみて」と、言い放った。
「あの、呪文とかはあるの?」
「それは、さやかちゃんが心に浮かんだ言葉を唱えればいいんだよ」
つまりはそれが適正テストなんだろう。
だったら変身なんてできそうもないな・・・。
私はちょっとがっかりしながら、心に浮かんだ呪文を唱えてみた。
「パラレル・パンプル・パラリラポン!」
すると、なんと私の体が光りだしたではないか。
「すごいよ。さやかちゃん!」
ブルセーラは、すごく喜んでいるみたいだった。
だが、次の瞬間異変が起きた。
頭がクラリとして私は意識を失ったのだ。
そのままどのくらい気を失っていただろう。
両親がまだ帰宅していないところを見ると、ほんの数分かもしれない。
部屋の中にブルセーラはすでにいなかった。
体に掛けられていた毛布を払いのけ、あわてて起き上ると、
私は裸で、安っぽいオモチャのバトンを手にしていた。
着ていたセーラー服も下着もない。
どうやら、だまされたようだ。
そういえば、そんな変態動物が出没すると聞いたことがある。
翌日、ネットオークションに私の制服が出品されていた。
( おしまい )
この生物の名前がそもそも怪しいですね。(^^;)