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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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余命半年の母

作者: 猫山 緑
掲載日:2026/03/23

「言いにくいのですがあなたのお母様の余命はあと半年です。」


俺が高校生の時医者に言われた言葉だ。信じれなかった。いや、信じたくなかったんだ。いつも、母親が近くにいるのは当たり前だと思っていた。


俺の家庭はひとり親家庭だった。母親が1人手で俺と弟を育ててくれた。父親とは、父の不倫で離婚していた。クズな父親だ。


俺が高校3年生になって進路を決めたぐらいの時だった。


いつも通り家に帰って受験勉強をしているとキッチンから


──バタ


という音と共に何かが倒れる音がした。


俺は嫌な予感がして急いでキッチンまで駆け寄った。


そこで見たのは、しんどそうに横たわる母の姿だった。


俺は急いで救急車を呼んだ。


救急車が来るまでの1分1秒が1時間に感じるくらいの心への不可だった。心配で心が張り裂けそうになった。心の中でずっと無事でいてくれと願った。


救急車が到着し俺は弟と一緒に乗り込んだ。救急隊員が俺たちに「大丈夫」と励ましの言葉をくれたのを今

でも覚えている。その時は、それで心は和らいだ。


病院に着くなり、医者たちはバイタルがどうとか言いながらそのまま手術室へと母を連れて行った。


看護師に


「ここに座って待っていてね。きっとお母さん良くなるから」


と言われ、手術室の前で待っていた。


手術室のライトが赤くひかり、手術が始まったのがわかる。


待っている間俺はずっと泣いている弟を大丈夫となだめながら自分が泣きたいのを必死に我慢していた。


俺も心配で胸が張り裂けそうだった。


1時間程たっただろうか


手術室のライトは消える。


中から医者が出てくる。


「一命は取り留めたよ。当分は入院生活になるだろう。」


それを聞いた時心の中にあった緊張の糸がほぐれた。


看護師が俺らを診察室に連れていく。そこにはさっき手術室から出てきた人とは違う先生がいた。


「鈴木 涼子さんの息子さんだね。」


俺は小さく頷く


「お母さんの病状は肝がんのステージ4です。」


「癌、母さんが⋯⋯」


俺は膝から崩れ落ちた。


「治るんですよね。最近は治る病気になりつつあるって」


医者は申し訳なさそうに


「すみません。今の医術ではどうすることもできません。お母様の余命はあと半年です。もう末期ガンになってしまっているので。もうちょっと気づくのが早ければ良かったのですが。」


「ふざけんなよ。あんたそれでも医者か」


俺は我を忘れていた。頭の中はもう何が何だか分からないぐらいぐちゃぐちゃだった。


弟が泣きながら俺に抱きついてくる。


俺は頭を下げ


「たった1人の親なんです。どうか、どうか直してください。」


「善処はします。できる限りの最新医療を駆使して見ようと思います。」


俺は1週間何も出来ないくらいには放心していた。していたことといえば毎日母親の病室に行き、母親の病状を見ていたぐらいだ。その時心の許せる唯一の親友が飯などを買ってきてくれて生き延びた。そいつがいなかったら俺は余命宣告を受けた母より先に死んでいたのかもしれない。


親友は俺の話を親身に聞いてくれた。その時親友が


「話せるうちの母親と喋っておけよ」


と言われ俺はハッとした。


俺はなんて馬鹿なことをしていたんだろう。なんで弟の面倒まで親友に見てもらってるんだろう。なんで母親と面と向かってもっと喋らなかったんだろう。


俺は急いで病院に向かった


病室に入ると母親がいた。


遥斗はると。ちゃんとご飯は食べた?歯磨いてる?優斗ゆうとの面倒は見てる?」


「俺実はちゃんとできてなかったんだ。りゅうが家に来て手伝ってくれてた。」


「龍くんが!優しいわね。でも迷惑かけてるんじゃないでしょうね。」


いつも通りの母親だ。どこも悪いとこがないように見える。俺は思わず涙が溢れてしまった。


「どうしたの遥斗。ほらこっちにおいで」


お母さんは優しく俺の頭を撫でた。


俺は人前で見せては行けないくらい泣いた。ほかの部屋にまで聞こえていたかもしれない。


俺は泣き疲れてお母さんの膝の上で寝ていた。目が覚めるともう夕方だった。


「遥斗、早く家に帰って優斗と一緒にご飯をお食べ。」


俺は「うん」と言って家に帰った。


そこから月日はたち余命宣告されていた日に近づいた。


残り1週間で半年が経つ。1時間1時間が過ぎて行くのが嫌だった。これほどまでに時が止まって欲しいと思ったことは無い。


どんどん衰弱していく母親見ながら時は過ぎてゆく。


ある日病室に入るとお母さんが俺と弟に


「おかえり」


と笑顔で行ってきた。いつも通りの母親が戻ってきたと思って俺たちは笑顔で


「ただいま」


と言い抱きついた。


そこから数時間もしないうちにお母さんは亡くなった。笑顔だけど、悔しそうだった。


最後に母親から言われたのは『ただいま』だった。


いつも言っていた言葉だから遺言になるとは夢にも思わなかった。


いつかは分からないけど見たことがある。亡くなる直前だけ病気が無くなったと思わせるくらい元気になる時があると。お母さんはまさにそれに該当していた。


俺は高校を卒業して社会人になった。弟にだけは大学に行って欲しいと仕事を頑張った。お母さんには「優斗をよろしくね」と言われていた。俺はその約束を守れたと自信を持って言えるくらい頑張った。


無事、俺は弟を大学に入れ卒業させることが出来た。


やっと肩の荷が降りた頃俺は昔から付き合っていた子と結婚をした。かなり順風満帆な結婚生活だったと思う。子宝にも恵まれ2人の子が生まれた。


俺は歳を重ねて80歳になった。子供に囲まれ、天国へと俺は旅立った。


天国に着くと昔よく聞いていた声が聞こえた。


「おかえり」


振り返るとお母さんがいた。俺は笑顔で言った


「ただいま。話したいことがいっぱいあるんだ」











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