表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

古(いにしえ)の幻夢と厄介な騒動

作者: 安雲満
掲載日:2026/01/29

山渡羽東都国の首都暁湊の近隣の県、咲瓊(サクケイ)県大都(ダイト)市桂木(けいぼく)町郡佐久煌(さくこう)郡の閑静な住宅街に玉巻木蓮花(たままきれんか)は住んでいた。

住んでいる家は持ち家で1人と1匹暮らしである。

家の前には広い庭があり庭には様々な植物が植えられ四季折々に咲く花々は蓮花の楽しみの1つになっている。

玉巻木蓮花は40歳のバツイチ

スラッとした長身、折れてしまいそうな位に細い体、白い肌に優しげな眼差しは大輪に咲く向日葵のよう

醸し出される雰囲気は儚げで庇護欲を掻き立てる

我が強く自分の思い通りにならなければヒステリックにわめき散らし周りを振り回す気性とは対極の人間の様にしか見えない。どちらかと言えば楚々とした奥ゆかしい雰囲気を持つタイプに見える。

少なくとも蓮花の本質をよく知る人間を除いた人々が抱くイメージはそうである

本来の姿は似ても似つかぬ姿なのだが、幼い頃に父方の祖父玉巻木寛一(たままきかんいち)の意向を受けた庭教師により理想の淑女となるべく徹底的に叩き込まれていた為、そう見せるのには長けていた。

その教育は母校に入学するまで続けられた。

母校に入学後叩き込まれた淑女教育は更に磨きかがり周囲からの偏った印象に繋がりその淑女教育の賜物が誤解される遠因となった。

蓮花の髪の色は茶髪でゆるくパーマをかけている。普段はシュシュで緩く括りシャツやTシャツ等の楽なファッションをする事が多い。

楽なファッションなのは土いじりをしているからで公式の場はそれ場に合った格好をするが趣味の家庭菜園をするの使っていた。汚れてもいい様に着古した動きやすい服装をして作業していた。

住んでいる屋敷には広大な庭があり庭で趣味は家庭菜園と好きな花やハーブを育てていた。


端からみれば苦労知らずのお嬢様が戯れに土いじりをしている様にしか見えなかった。

しかしそれは周囲にそう錯覚する様に仕向け勝手な思い込みをする様に流れが作られ思い込んでいたに過ぎない。

蓮花は郊外に土地を所有し、所有する土地の一部を耕し野菜や果物を作り、他には花やハーブを育てる為に土地を耕し専用の畑を作り育ていた

それらを育て、特定の相手のみ取引し収入を得ていた

その事を知る人間は少なく蓮花が所有している土地で作物を作っているのを大部分の人々は知らないだけなのだ

蓮花は作業をする際はメイクをせずかつらを頭にセットし農作業用の帽子をかぶり作業着を着て伊達眼鏡をかけ胸をは晒しを巻いて男装していたので作業をしている人間が蓮花だと気付いてはいなかった

蓮花は代理人を置き、その代理人が土地の所有者だと周囲に周知させていた為土地の所有者だと思われる人物が代理人であるとは思いもしなかったのだ。

代理人の名前は甘田紀陽(かんだきよう)、帰化して山渡羽東都人になったが、元は京華絽里安人で玉巻木家と親しい

かつてはシェフをしていたが現役を引き、経営する側になりいくつもの飲食店を経営している。

甘田紀陽は元の姓は(しゅ)と言い現在60歳になる。

蓮花とそう年が変わらない様に年しか見えない

若い頃からモテていて現在でも秋波を送られる程だ

蓮花が幼いた頃から玉巻木家と付き合いがあり蓮花にしてみればステキなお兄さんだった。

洙紀陽は本業の傍ら農家でもあるのでそう見せるには丁度良かったのだ。

おまけに育てている物も同じだったので隠れ蓑として使わせてもらっていた

蓮花の作る物は基本的に国内で流通する事はほとんどなく流通しているのは専ら海外なので知られる可能性は非常に低い。

甘田紀陽桂木町の隣町、神原町に代々暮らす名家、甘田家の長女、甘田泰子(ひろこ)と結婚して甘田家に婿入りし甘田家を継いだ。

甘田夫婦には6人の子供がいていつも賑やかにしている。6人の内3人は父親似で後の3人は母親似のだ

何故そんなややこしい事をするのかと言うと父方の祖父寛一に知られない様にする為だった


蓮花と寛一の考えがあまりにも違う為蓮花は頭を悩ましていた。

それは蓮花が物心ついた頃から始まり苦慮していた

寛一の抱く理想があまりにも大きすぎてその想い家族に押し付けて強要する。そんな人間性の持ち主だったからだ

それがどこにでもいる様な老人ならまだ良かったが、彼は玉巻木一族の長であり玉巻木家が経営する会社の本社に長く君臨し権力を未だに維持している会長だから始末に悪い

蓮花の才能を認めず、自身が望む姿を蓮花に押し付けその勝手な幻想を蓮花にさせようとして、蓮花が出した成果を頑なに受け入れようともせず現実を事実を受け入れる事を拒み逃げていた。

蓮花が作り出した作物の味はよく取引先からの評価も高い

蓮花が作る野菜にしろ果物にしろ蓮花は収穫すると実家に持って行くので寛一の口に入らない訳ないのにも関わらず


その寛一を心く思わない存在がいた

それが蓮花を守護している精霊、妖精、神獣、龍神である。

蓮花は生まれた頃、この土地に代々拝み屋を生業にしている降矢家に両親に連れて行かれ見てもらった結果蓮花の周りには羽を生やした黄緑色をした妖精と黄緑色をした精霊が付いていて、更に頭上には黄緑色をした龍がいる。と言うのだ

当時の降矢家の当主降矢忠信(ふるやただのぶ)

蓮花はこの土地の土地神の守護を受け、授けられた能力がこの世にあるありとあらゆる物の姿を見声を聞き、この世にあるありとあらゆる植物を操り育てる手を持つ。また蓮花は食物を司る女神の祝福を受けてもいるのでいずれは料理の才に長け高名な料理人となるだろう

こう言った。決して悪い結果でないにも関わらず、蓮花の父玉巻木周助は喜ぶ所かガックリ肩を落とし

「もしや、とは思っていたがまさか緑の祝福を授かっているとは」

と悲しんだ表情を浮かべたのだった

彼が落胆したのは蓮花が玉巻木家を継ぎ本社の代表取締役となり次代を担う存在となる様な言葉を期待していたからである。

それは蓮花の父方の祖父玉巻木寛一の意向による物だった。

しかし父周助はこの意向を無視して敢えて降矢忠信から聞いた内容を話さずにいたのだ。

言おうが言わまいが寛一の答えは予め決まっていたから・・・


蓮花はこう見えて中学生の頃から本格的に始めて経験はそれなりに重ねて来ているので腕は確かだ。


植物は蓮花に取って身近な存在で、家には物心ついた時からあった。父方の祖母叶恵(かなえ)が花が好きだったのと母の静枝(しずえ)が華道を嗜んでいたので活けた花が飾ってあり蓮花が花に興味を持つのは無理からぬ事だった。

屋敷に通う庭師や花の世話をする使用人の作業を目をキラキラさせて見ていた物だ。土いじりの真似事をする様になるのは当然の成り行きで最初は反対する人間はおらず微笑ましい物と見られていた。

小学校に進むと果物にも興味を持ち、使用人の中に詳しい者がいたので教えてもらっていた。

その使用人は甘田紀陽と親しい人間で蓮花が土いじりに興味を持つ環境を意図的に作り出し尚且つ、甘田の意向が玉巻木家の人間に悟られずに自然な成り行きで進む様に動けと命じていたからであった。

その計画は成功し蓮花は花や植物に携わる職業に憧れる様になった。だがしかし蓮花の思いとは裏腹に両親は蓮花の土いじりをあまりよく思っていなかった

“両親は”、と言うより祖父の寛一

趣味として嗜む楽しむならともかく職業にするとなると話は別だ

もし家業に関わる物に興味を持ったのならばまた別であったのかも知れないが


寛一は蓮花に後継者候補の兄、玉巻木元基の補佐を任せられる位の教育を受けさせようと言う思いがあった。

かつて元基は長男である事から跡継ぎ候補にと早い段階から考えていたが、元基の3歳の時蓮花が生まれて以降こう考える様になっていた。

”この選択は果たして正しいでのだろうか?元基を跡継ぎにするのが果たして正解と言えるのか?“

・・・と

彼が考えを変えたのには理由があった

蓮花は物心ついた頃から賢く成長するに連れ寛一が心変わりをするには十分で元基への気持ちが離れて行くと同時に元基では後継者としては不安があると言う気持ちは確信に変わった。

玉巻木家は宗家の人間を始めとして傍系に至るまで仕事が出来る者が多いからだった。元基の存在が霞む程に

元基は後継者としての資質に欠けているのではないかと思い始めた彼は考えを変え視野を持って後継者候補を見極める事に注視する様になって行った。

考えを変えたが基本的な概念は変えずにいたのでそれがまた問題だった。

元々木寛一は、後継者に対する強いこだわりがあり跡継ぎは基本宗家の血筋、長子の男子を。と言う考えに強く執着していた。

加えて言うなら己の絶頂期を上回る程の器頭がなければいけない。と言う思想に囚われていた。

不幸にもそのお眼鏡に叶ったのが蓮花はその頃大都市内の私立の小学校に通い成績は常にトップで学級委員長を任される程だった。元基から気持ちが離れていた寛一が注目するには十分だった。

寛一は蓮花を見てこう思った。

“今はまだ見限る程ではないが、元基を最終的に後継者候補として相応しくないと判断した場合、元基の後釜に据えられる様に今から育てなければ”・・・と

そう言う思惑があった故に土いじりにあまり熱心になっては困ると感じていたのだ。

それと同時に蓮花におしとやかで奥ゆかしい女性になって欲しいと願う寛一の意向により事実とは異なる姿を強いられていた。

余談になるが、蓮花が元基を差し置いてTAMAMAKI 家具の後継者候補になる事は無かった。

後継者候補に寛一から指名されておきながら器がないからとまだ幼い元基から後継者候補の座を奪い、蓮花に鞍替えしたら元基の立場はどうなるのかとと周助と周助の妻静枝(しずえ)は寛一に力説し説得しようとした。2人の中に静枝の実家柚木家が介入したので寛一は引くしか無かった。

寛一から見て周助は普段は穏やかな性格でのやる事に異を唱える様な息子では無く従順な印象だった。

しかしそれが、本社代表取締役としてTAMAMAKI 家具を引っ張るには頼りないと思っていたのだ。既に代替わりをしたにも関わらず何をするにしても干渉していた。周助は気にも止めず何を言われてもされても父のやりたい様にしていた。それが寛一には気に食わなかったのだが

息子夫婦考えを改めなければな、と思い見直した

それ以降周助の言う言葉を聞き入れる寛容さを見せる様になった。

それからしばらくして蓮花が中学に進学する年齢になった。

周助はこれ以上父による悪い影響が蓮花に及ぶのを防ぐ為、周助は寛一にあの手この手で誘導し蓮花は暁湊市にある全寮制の中高一貫の学校、聖貴絹光(せいきけんこう)学園に進学する事を皮肉な事に蓮花の本質が磨きがかかる様になってしまう

蓮花が聖貴絹光学園に進学する事になる経緯だが甘田紀陽が裏で周助に寛一が蓮花を聖貴絹光学園の進学を許しを得られる様に知恵を授けていた

実は聖貴絹光学園は、甘田の実家洙家の本家当主夫人、貴旭光(キキュウコウ)の曾祖母貴絹光が建てた学校だったからだ。


蓮花の学生時代、家族・・・特に祖父玉巻木寛一の可干渉から解放されたのが何よりも嬉しかった。自分の好きな事を好きなだけ出来る喜びに解放感を感じた物だった。

蓮花はこの頃の時の事を今でもたまに思い出す

(13歳の時だったわ、“彼”と出会ったのは

“彼”と出会ってからよく似た犬と出会う様になったのだったわね

“彼ら”は大地の守護神の眷属、または緑の精霊からの祝福を得た神の愛し子、神の加護を得た犬型の精霊、常に傍らに寄り添う人に愛を注ぐ隣人。

それが“彼ら”)


蓮花は13歳の頃、聖貴絹光学園に入学した。

聖貴絹光学園は男子と女子に分かれていたので女子校の様な物である

聖貴絹光学園での出会いが刺激のある学生生活を送る事が出来、部活やクラブで出会った先輩や後輩と出会ったお陰で視野が広くなる事が出来た。

この学校で友達になって卒業後も親しくしている子は多い

その中の1人が春日井榛花だ。春日井榛花と同い年で従姉妹の春日井香燿子(かすがいかよこ)もいた

春日井香燿子は後に春日井榛花と同じ職業を選び小説家になり黛鏡子(まゆずみきょうこ)と名乗る

同い年でクラブが同じだった榊明日香(さかきあすか)も未だにやり取りをしている

榊明日香は榊出社株式会社の代表取締役榊孝太郎の娘だ。

余談だが榊出社株式会社は後に海外の財閥が買収し社名だけ残されている。

クラブは外国語を学ぶクラブで私は京華絽里安(けいかろりあん)語を専攻した。

明日香はクラスが違ったけれどクラブで知り合い仲良くなった。明日香は卒業後京華絽里安国で製紙会社を経営する洪知永(こうちえい)の長男、洪知邦(こうちほう)と結婚する事になっていた。

蓮花はふっとその時の事を思い出していた。

(あの時の事を思い出すと今でも腸が煮えくり返る様だわ

生まれる前から決められていたのですって

明日香から聞いた所、お互いの父親が友人で子供が生まれたら結婚させようと言っていたそう

その話を聞いた時

私の事じゃないのに“馬鹿じゃないの?あり得ないわそんなの、信じられない!!”って叫んで怒ったのはいい思い出

ただの仲のいい友達同士が自分の子供が生まれたら結婚させようと言っていたのとは違いどちらも経営者一族の息子である事よね、だから純粋な気持ちで自分達の子供を結婚させようと言うのとは違う

それはただのエゴだわ、私がもし明日香の母親ならそんな馬鹿げた話あり得ないと夫の頬ひっぱたいて止めさせようとしたわね

典型的な政略結婚で本人の意思は関係ない。明日香は拒否権は無いみたい

でも、明日香に拒否権は無いけれど親の言いなりになるのが嫌で嫌でたまらない。でも、諦めるしか無くて受け入れたくないのを無理矢理飲み込んで受け入れざるを得ないのが屈辱でしかなく悲しい、

明日香が心の中で憤っているのが見えた。

何とかして明日香を助けてやらなきゃって子供ながらに思ったわ

私は物心ついた頃から何故か、人の何を思い考えているのかが分かり、視える事が出来てその人が出すオーラも視えた。

幼いながらこれは言ってはいけないのだと思っていたから誰にも言わずにいたけど

今思えば熱かったわね。若さ故ってやつかしらね)

クスッと笑みを浮かべかつての自分に想いを馳せた。

蓮花は再び回想に戻る。

(聖貴絹光学園に入学して世界が広がったと感じて嬉しかった。それは植物に造詣の深い教師が一定数いた事や漢方やハーブに詳しい教師や家庭菜園を趣味としていた教師もいたから。私がのめり込むのは当然の成り行きで、この時期に得た物が糧となり私のスキルはめきめきと上がって行くのを感じたわ

住み慣れた地元から離れたからなのかそれとも多感な時期を世間から隔てられた環境で学舎で学び寮生活をしていたからなのか、それとも好きな土いじりを好きなだけしていたからなのか

学業の傍ら、好きな事を誰にも反対されず土いじりに没頭出来る環境にいたからなのかそれは分からないけれど怖い位に毎日が充実していて楽しかった。)

聖貴絹光学園と言えば、あれも懐かしいわね

蓮花は違う事を思い出していた。

(聖貴絹光学園に入学してしてしばらくしたある日突然目の前に全身黄緑色の光を放つ白い大型犬が現れたの

今思えばどことなく雰囲気が綿毛に似ていたのよね

目の前に姿を表した黄緑色の光を放つ白い大型犬に戸惑い目を瞬かせていると心の中に声が響いて来たの

お爺さんの様な声の様に聞こえたわ

【おやあ・・・?この人間、緑の祝福や大地の加護を持っとるのかい珍しい】

不思議そうに私を見つめてそう言った。私はその言葉の意味が分からずキョトンとしていたわ

(えっっ、何これ、黄緑色に光る犬?)

私ははこの状況にパニックになってしまっていたのだけど

この黄緑色の光を放つ白い大型犬は私に

【こりゃ人間の娘、儂は犬ではないぞ緑神狼族(りょくしんろうぞく)よ。

緑の加護を大地の守護神から授かりし貴い一族じゃ】

こう語りかけた。・・・そんな事を言われてもね、分かる訳ないじゃない

(りょくしんろうぞく?)

不思議に思ったけどその緑神狼族の言う言葉を聞くしか無かった。

緑神狼族と名乗る黄緑色の光を放つ白い大型犬は

【うむ。】

と頷くと私を見つめ

【昨今なかなか見る事が叶わぬ事象に精霊や木霊達が騒いでおってのう、その場に赴いた所其方(そなた)がおったのだ】

こう言った。

私は驚いて目を瞬かせ戸惑った

(わ、私?私は何もしていません・・・)

戸惑いながら言うと目を細め愛おしそうに

【花の世話をしておったではないか、其方は草花の記しておる書物を読み解く事に注視し、草花を学ぶに適した先達(せんて)に声をしきりにかけ学ぼうとしておった。それが嬉しくてのお

その熱き思いがほとばしり緑の光を放っておったから精霊や木霊達が騒いだのじゃ】

言うと蓮花はいつから見ていたの、と思ったわ

(何で知っているの?)

当然の疑問を言葉にすると満足げに

【ふぉっふぉっふぉっ】

と笑い

【この学舎に入学しする者が新たに入る度にどの様な娘が入るのかをを見ておるからの。

儂はこの学舎に長く住んでおる主の様な者じゃ

其方の様な人間は何百年も見ておらぬからのう

おまけに緑竜樹(りょくりゅうじゅ)の輝きがまとわりついとるわい

こりゃ奇異な事よまさか異国の神の力が及んどるとはのう参ったわい】

一方的に言われても何の事だか分からなくて話の内容はほとんど分からなかったのよね

これが緑狼神族との初めての出会い。

妙に気に入られて護ってやる、とか言って無理矢理私の側にくっついて離れない様になって最終的には元々いた場所から離れてしまったわね

今でもいるわ、多分私が死ぬまで離れないのかも・・・ね)


蓮花の花の育てるスキルやハーブの育てるスキルな野菜や果物を育てるスキルは非常に高くプロでも通用するレベルだったがそれを知るのは限られた人達だけでほとんどの人間は知るよしもなかった。


蓮花が現在住む屋敷に訪れる集落の住民は庭で育てている花、ハーブ、家庭菜園を育てているのは実家から寄越された使用人がしているのだと信じて疑わなかった。

蓮花自身がそう思い込む様にしていたからだ

確かに庭が広いので人手が必要な時には実家に連絡して使用人を寄越してもらう様に頼む事もあるが、実際は蓮花が全ての作業を行っている。

蓮花が意図的にそう言う流れにしていたと言うのが大きいが、蓮花が土いじりをする者様に見られない事が最大の理由だ。

そうは見えないと言うのと幼い頃から周囲に印象付けられていると言う物も大きい

要するに素の玉巻木蓮花を知る人間が少ないのだ

蓮花自身特定の相手としか関わりがなく集落に住む住民とは直接のやり取りはない。

常に通いの家政婦が数人おり町に住む住人が家に訪れる際、彼女達が中に入る為蓮花は必要最低限の挨拶をするに留め余計な事は言わず愛想よく笑いかけるだけだった。

それが、“奥ゆかしく所作が美しい笑顔が素敵な玉巻木宗家のお嬢さん”

と言うイメージを作り出していた。屋敷の内外には警備員が出入りし外部の人間を警戒するかの様に睨みを利かせている為外部の者が蓮花の素顔を知り得る機会は少ない

集落に住む人間が玉巻木家が経営する会社に勤める者は多いのでたまに本社や大都市内にある支社やTAMAMAKI 家具の支店等で見る機会はあるが重役達と仕事の話を交わす姿は高嶺の花その物でそれがより一層に勝手なイメージをされる原因となっていた。




蓮花の住む屋敷は両親から結婚祝いにプレゼントされた物で家族が増える事を前提として作られた5LDKで広い庭がある。

玉巻木家から並々ならぬ期待が込められていたが離婚により意味を成さなくなった。

玉巻木一族の直系、しかも本社の代表取締役の娘、ともなれば無理もない

(それも無駄になってしまったけれど)

蓮花はため息を吐き庭に広がる風景を眺めた

有責による離婚なので慰謝料は相場より多く支払われたので金銭的には困っていない。

庭の一部を家庭菜園用の畑を作り野菜とハーブを育てているので食生活は困らない。 

子供の頃からよく知る近隣の住人が手土産を持ち訪れる

手土産もお菓子から始まり肉や野菜に至るまで多岐に渡りその量は1人暮らしには多すぎる程だ

困らない理由のほとんどはもらたされる手土産による物が大きい。

娘を気遣う両親が様子を見る様に言い含めているので引っ切り無しに来客があるのだ

地域一帯の有力者の孫でありTAMAMAKI 家具の創業者一族の直系の娘が元夫の不貞により傷物となった事を気遣かわれているのをひしひしと感じ居たたまれない気持ちになる。

離婚した内容が内容なので尚更

TAMAMAKI 家具とは玉巻木家が経営する家具会社の事で創業者は現会長玉巻木寛一の祖父玉巻木彦次郎が興した会社だ。玉巻木家は桂木町を含む地域一帯に土地を持つ地主で名家、玉巻木家はこれらの土地の顔である。玉巻木の姓を持つ人間を住人達はあちらこちで見かけ見ない事は無い程だ。しかも玉巻木の姓を持つ人間のほとんどはそれなりの立場の者達である。

地域に根付き地域に住む住人達と身近な関係を築いている人間ですら玉巻木の人間もしくは関係者なので古くから暮らす人々は玉巻木家、特に玉巻木宗家の者をお殿様と未だに言う

お殿様、と言う表現は大袈裟な表現ではない。かつてはそうであったからだ

玉巻木家はかつて藤瑛(とうえい)と言う王朝が存在した時代、咲瓊県を治める君主であったのだ。

更に遡ると咲瓊県が遥か昔の時代には佐久煌(さくこう)国と言っていた時代から存在し、佐久煌国を支配していた大豪族だとされている。

それは言い伝えとして語り継がれていて桂木町を始めとした玉巻木家の先祖が支配していた地域に広く伝わる

玉巻木家が先祖が佐久煌国を支配していた豪族の子孫だと自認し誇りに思っている事が感じられる



玉巻木蓮花の実家は桂木町にTAMAMAKI 家具を興した経営者一族であり創業者は玉巻木彦次郎

玉巻木彦次郎は蓮花の高祖父に当たる人物で玉巻木家具を創業した。

玉巻木家具を誰もが知る家具屋にすべく力を注いだ結果現在のTAMAMAKI 家具がある。

玉巻木家が住む桂木町佐久煌郡には玉巻木家が興した会社がある。この会社が本社で大都市には支社をいくつも置き支店もある。

玉巻木家が行う物は家具だけに留まらず多岐に渡る。

その1つが玉巻木建築である

元々玉巻木家が有する土地は様々な種類の木々が豊富にあるので玉巻木家の庶流は藤煌朝時代木材業を営み手広く商いを行い富を築いた。時代が下ると玉巻木建築と言う名になり玉巻木家具の傘下に下った。

蓮花の住む屋敷も玉巻木建築が携わり作られた物である


玉巻木家は典型的な一族経営で咲瓊県にある支社のトップ直系の創業者一族で固めれ取引先は大手企業が多い。

元夫は加島進也と言った。

加島進也がかつて勤めていた会社も玉巻木家が経営する支社の1つだ。

元夫加島進也は蓮花と結婚した事により玉巻木家の一員となったが結婚して数年後加島進也が犯した過ちにより離婚する事になった。

それが蓮花が1人と1匹で生活する様になる切っ掛けである。

蓮花は庭に植えられた桜の木を見つめ

(あれからもう、10年以上になるのね)

感慨に耽りながら思った。その眼差しを見ていた飼い犬の綿毛(わたげ)が不思議そうに首をかしげ

「蓮花お嬢さん、どうしたんだい?」

こう言った。

綿毛は白い毛に大きな体を持つ大型犬でピンと立った耳につぶらな瞳、口元は口角を上げた様な笑顔

傾げたポーズが可愛らしい

大きな体はがっしりとしている。尻尾はふさふさしていて背中にくるんと巻いた巻尾だ

この犬は人語を話す。人がいる時は普通の犬様に振る舞うが2人だけの時は人語を話し年齢はいくつかは分からない

綿毛は蓮花の事を“お嬢さん”と呼ぶ

いくつなのからかは分からないが彼の口ぶりからして年上なのだろう

蓮花はくすり、と笑い

「もう、10年以上経つのね。って思っただけよ」

言うと

桜の木を一瞥した綿毛は忌々しそうな顔をして

「あの“馬鹿男”と結婚した時に植えた桜の木か?

そろそろ片付けてもいいんじゃない?」

言った。その“馬鹿男とは”勿論加島進也の事である

蓮花は綿毛の言葉を聞いて吹き出し

「あはははっっ、確かにそうねでも・・・」

こう言った後綿毛に笑いかけ

「でもね。桜の木には罪はないし切ってしまうのは可哀想よ。もし片付けるなら桜の木の世話を任せられる人に譲りたいわね」

桜の木は罪はない、切ったら桜の木が可哀想

・・・を強調した

綿毛はプッと笑い

「確かにね」

とつぶやいた

蓮花は、桜の木から背を向けしゃがむと草むしりをし始めた。ついさっきまで向けていた笑顔は消え表情を暗くさせた

(加島と別れる切っ掛けになる出来事が起きたあたりから“あの夢”を見る様になったのよね)

蓮花は元夫加島進也と離婚する切っ掛けとなった時に起きた出来事を思い出していた。

“あの夢”とは、一言で済ますなら幻夢と言える物だった。

前世の記憶が夢となり見せていた。と言えばそう言えるのかも知れないし現実から逃避したいが為に自らが生み出した物、とも言えるかも知れない物

それが“あの夢”なのだ

その原因となったのが、元夫加島進也が犯した不倫なのだがそれが単なる過ちで片付けられないレベルの事態にまで発展してしまったのである


蓮花と元夫加島進也が離婚する切っ掛けは結婚してから数年後に起きた事件が発端だった。

内容はよくある若い部下との不倫が妻の知る所となり最終的に離婚となった。

と言う物だったがしかし、それで話は終わらなかった。

蓮花が玉巻木家一族直系の人間である事や株式会社TAMAKI家具の代表取締役玉巻木周助の次女である事、玉巻木一族中でも時期代表取締役の呼び声高い蓮花を裏切り瑕疵を付けた事、浮気相手が婚約者がいる身であり近々結婚の予定である事等から

離婚すれば終わり、と言う訳にはいかなかったのだ。

しかも浮気相手は素性を隠していた。

経歴こそは実際に存在するのは確かで経歴も詐称ではない。

名前は梶本美結ほ(かじもとみゆう)暁湊にある女子大を卒業した後新卒で、TAMAKI 木材の本社に就職し、事務員として勤めていた。

TAMAMAKI 木材はTAMAMAKI家具 に家具用の木材を扱う会社で代表取締役は、TAMAMAKI家具の代表取締役玉巻木周助の実弟玉巻木春孝(たままきはるたか)で取引先でもある。

経歴上の梶本美結は、大学で建築学を学び建築に関わる企業に興味がありTAMAMAKI 木材は最も希望していた会社でもしほんとうの梶本美結ならば喜んで仕事に没頭していたであろう

しかし、TAMAMAKI 木材に就職し、勤めていた“梶本美結”、蓮花の元夫加島進也に近づき不倫関係となった“梶本美結”はそうではなかった。

TAMAMAKI 木材に就職するのを誰よりも欲し望んでいた企業に就職したにも関わらず就職後の梶本美結の熱量は驚く程低く仕事態度もいいとは言えなかった。

蓮花は草むしりをしながらその時に起きていたもう1つの出来事を思い出していた

(“あの女”が両親や親戚を巻き込んであんなややこしい事をしなければまだましだったのたけどね

しかも、意図的に過去にしでかした“悪さ”を身代わりに仕立てた相手に押し付ける為にしたのだから

赤の他人ならまだしも身内にするだなんて卑劣きわまりないわ。それで“本当の”梶本美結が迷惑を被ってしまった訳なのだけど)

もう1つの出来事とは、梶本美結に成り代わった女が梶本美結のふりをして蓮花の元夫加島進也に近づき不倫関係になった騒動の事である

まず始めにTAMAMAKI 木材に勤めていた梶本美結と本物の梶本美結の違いに気がつき調べようとする人間がいなかった事が偽物の梶本美結が好き勝手出来たのだ

その時本物の梶本美結はと言うと山渡羽東都(やまとぅーうっど)国におらず海外旅行に出かけていた。

まさか名前と経歴を使われトラブルに巻き込まれただなんて思いもせずに・・・

梶本美結が山渡羽東都国で騒ぎになっている事を知ったのは一緒に行動していた洙央修(しゅおうしゅう)に親戚の甘田紀陽からの連絡で知った洙央修が梶本美結に知らせ発覚した。

偽物の梶本美結は本物の梶本美結の経歴を元に履歴書を作成しTAMAMAKI 木材の面接を受けた

本物の梶本美結と偽物の梶本美結が双子の様に見た目が似ていたから出来た事だった。

それは後に甘田紀陽の紹介で父の周助が探偵事務所に依頼し、梶本美結を徹底的に調査した結果偽物の梶本美結の正体が明るみとなった。

その探偵事務所は、黄探偵事務所と言い甘田が山渡羽東都国に訪れた時に連れて来た黄帯常(おうたいじょう)が探偵事務所を興した。

元夫加島進也とは元夫加島進也から猛烈なアプローチにより交際が始まり、半年の交際を経た時元夫加島進也のプロポーズされ結婚が決まった。

幸せだったのは始めの頃だけだった。

蓮花の見た目や作られたイメージとはかけ離れた物を持っていた事や育った環境が違う事等が重なり夫婦仲が冷め仮面夫婦となるのに大して時間はかからなかった。

それと結婚前と比べいくら遊んだ所で懐は傷まない程に金が家にはあり実家も蓮花が頼めばいくらでも寄越す様な家である為加島進也が散財を覚え浮気を繰り返す様になるのは当然で蓮花自身も

“私は浮気相手に目くじらを立てる様な狭量ではないわ所詮は遊びよすぐに飽きるわ”

との態度を貫き相手にしようともしない

蓮花は初めから加島進也が蓮花に対する猛烈なアプローチにより始まった交際も交際して半年を経てされたプロポーズもそれを受け結婚した事も加島進也の一方的な熱に浮かされた独り善がりで起こしたに過ぎない上に金目当てだと分かっていたからだ。

玉巻木家は大企業であり、桂木町に何代も前から基盤を持つ名家で広大な土地を持つ地主で資産家

それだけでも玉巻木家は美味しい家だ

そう言う意味で狙われたとしても不思議はない

蓮花は最初から結婚に期待しておらず、よくて家同士の釣り合いの採れた政略結婚、分を弁えない金目当ての小物との結婚のどちらかの選択肢しかないだろうと思っていた。

そもそも政略結婚に愛何てものはない、とドライな考えしかなかったので仮面夫婦となり幾度も裏切られたとしても痛くも痒くも無かった。






蓮花は1人娘と言う訳ではなく既に跡継ぎがいた。それは上の兄玉巻木元基で年齢は43歳、本社に勤めており役職は部長、元基は副社長父方の叔父玉巻木寛次郎、専務父方の叔父玉巻木逸喜(たままきいつき)に挟れ睨みを効かされた状態が続いていた。

長兄の元基にしてみたらすぐにでも後を継がせて欲しいと思っているだろうが如何せん素質に欠けていたので父の周助の意向に元基は2人から常に目を光らされいた

蓮花は次女ではあるが幼い頃から妙に大人びていて聡い子供だったので祖父の寛一に気に入られ、玉巻木一族の望む敷いたレールを走る有能な手駒とする為に育てた。と寛一は思っていた

跡継ぎは決められていたにも関わらずこの娘を跡継ぎにしたいと言う妄執に囚われていた寛一はその欲望を捨てられずにいた。


蓮花と元夫加島進也が離婚するに至った経緯だが

新卒で入社した部下中野瞳との不倫が玉巻木家の耳に入り玉巻木家により強制的に離婚するに至ったのだが、その経緯がよくありふれた物ではない為に事態は収集不可能な物になって行き加島進也は様々な意味合いで窮地に立たされる事になる。

不倫相手の中野瞳が蓮花の母玉巻木静栄の実家柚木家が経営する会社の取引先の会社の重役の娘だと言う事、既婚者だと分かっての交際だと言う事、婚約者がいたのにも関わらず不倫をした事、婚約者は中野瞳の父、中野秀紀と学生時代からの親友の息子だと言う事が更にややこしくさせていた


蓮花の父周助と母の静栄(しずえ)を始めとし父方の祖父母祖父玉巻木寛一・玉巻木伊都子(たままきいつこ)夫妻の逆鱗に触れた。

婿の裏切りに誰よりも悲しみ怒りを露にしたのが母静栄で我が事の様に怒ってくれた。

母の静栄が親戚中にに婿の裏切りを触れ回った結果、実家の柚木家を始めとした親族は怒りを露にした。

柚木家は古くから桂木町に存在する名家で玉巻木家と代々の当主同士の交流が深く、数代前に婚姻関係があったので繋がりは深い。この家もまた会社経営を行い経営に携わる人間のほとんどが親族で固めれた一族経営で玉巻木家が経営する会社の古くからの取引先でもあり信頼も高かったので玉巻木家が動けば当然柚木家も動くのは至極当然の成り行きであった。


蓮花は草むしりをしながらハッとして

「あれ、最近榛花(はるか)と話をしてない様な・・・」

とつぶやいた。

蓮花の頭にパソコンデスクに頭を突っ伏し、テーブルの上にありとあらゆるスイーツが皿に置かれ冷蔵庫には決して健康的とは言いがたい物が入り

雇われている家政婦も真面目に務めをしているとは正直言い難い

少なくとも蓮花の求めるレベルではないだけだが


蓮花は表情を険しくさせ

「蓮花は連絡しないと、榛花、何やっているの馬鹿・・・っっ」

こう叫ぶと一目散に携帯電話を置いている方角に走って行った

その姿を見た綿毛は驚き

「お嬢さん、どうしたのさ!!ちょっと待ってよ、待ってってば!!」

慌てて蓮花の後を走って行った

蓮花が屋敷の中に入り置いていた携帯電話を手に取り無我夢中で春日井榛花のSNSや電話に春日井榛花が出るまで連絡を入れ続け、反応がない度に発狂した様に怒り狂い

「何ででないのよあいつーーっっ、絶対仕事に入り込んでるんだわ、早く出なさいよーーっっ、!!」

叫びながら暴れていた。

屋敷で働く家政婦や使用人達はその様子をただただ眺める事しか出来ずにいて綿毛はおろおろするしか出来なかった。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ