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第八話『愛情の絆、永遠の美、求愛』

━━翌朝。


「ふわぁ〜あ」


今日は目覚まし時計に起こされて、聡美は夢の世界から現実世界に戻ってきた。


「……」


自然に目を覚ましたのでは無く、目覚ましに起こされた時の眠気は中々取れないもの……


聡美はうとうとしながら、トイレに行ったり隊服に着替えたり……朝の支度を整えていく。


「……よし!」


着替え終わり、顔を洗ったタイミングで漸く眠気が覚めた。


聡美にとって、AGPRに入隊してから六日目が始まろうとしていた━━


「……あれ?」


それから部屋から出た聡美は……ある違和感に気がつく。


いつもなら自身と同じタイミングで、隣の部屋から紫苑が出てくる筈なのだが……出てこない。


早起きには自信があると自称していた紫苑……実はまだ寝ているのだろうか。


……そう思いながら聡美は、現在の時刻を確認する為にスマートフォンを取り出した。


「……ありゃ」


現在の時刻━━六時四十五分。


……聡美は七時半に目覚ましをセットして起きたつもりだった。


道理で起きた時に、やけに眠たいと思っていた聡美━━昨晩の彼女は間違えて、六時半に目覚ましをセットして就寝していたのだった……。


「あちゃ〜あ……」


食堂で朝食が始まるのは八時から……紫苑も起きてはいるだろうが、部屋から出てくるのはまだまだ先だろう……。


もう朝の支度は終わらせてしまったし、今更二度寝は出来ない……あっという間なようで長い一時間、これからどうやって潰していこうか……聡美は頭を抱えながら考えていると━━


「ほっ……ほっ……」


「!」


隊服の上着を脱いだ状態の、黒いタンクトップ姿でこちらに向かってきている……星出彰子が角を曲がってきて現れた。


「星出さん、おはよう!」


「おっ、古川さんじゃねぇか。おはよう! やけに早起きだな、朝礼が始まるまであと二時間以上あるぜ?」


「えへへ、ちょっと早く目が覚めちゃって……星出さんは何してたの?」


「朝のランニングだよ。いつも日課にしてるんだ」


「へぇ!凄いね〜……あっ、もしかして理香ちゃんが倒れちゃった時もそうだった?」


「よく覚えてんな〜。おうとも! ランニングは運動の為にやっててな、あん時はあん時で理香を運べたから運動になってよかったぜ! ありがとな!」


「いや私、お礼を言われるような事は何も……!」


運動をしていても疲れているどころか、爽やかで気持ちよさそうな彰子。


そんな彰子を見て……聡美はある事を思いつく。


「あの、星出さん! よかったら……私もそのランニングにお供してもいいかな?」


「おっ? いいね〜、俺も一回誰かと走ってみたいと思ってたんだ! どうする? 俺はいつでも走れるからこのまま出発するか?」


「あっ、そしたらね〜……ちょっと待ってて!」


そう彰子に告げて、一回部屋に戻ってきた聡美。


隊服を脱げば、その下は白いティーシャツ姿となる……いつも着ている隊服は上下共に揃っている物で、元々柔軟な素材で出来ている事もあり、そのままの状態で運動する事が可能だ。


そうして上着を部屋に脱ぎ置いた状態で……聡美は再度部屋から出た。


「お待たせ! じゃあお願いします!」


「おう! 俺は古川さんのペースに合わせるから、焦らずゆっくり行こうぜ!」


「ありがとう!」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「ほっ、ほっ……」


「はっ、はっ……」


それから聡美は彰子に着いて行き……やがてピーストレーラーや基地で使う他の乗り物が置いてある格納庫にやって来た。


トレーラーよりも何倍も大きい乗り物達を眺めながら、聡美は一生懸命に彰子と並走をして会話をしようとする。


「改めて見ると格納庫って広いよね〜、確かにここだといい運動場所になりそう!」


「だろ? 俺のお気に入りの場所だ、この時間だと殆ど人もいねぇしな」


「この後はどういうコースを走るの?」


「この後は基地の入口まで行って、役職員室の方に行って、食堂の方に行って、医務室の方に行って……とにかく基地中を走るぜ!」


「ひぇ〜……朝から凄い体力だね……」


「いつも走ってるから慣れてるぜ! 古川さんは疲れたら途中で抜けていいからな」


「……ううん、最後まで着いてく!」


「おっ、好きだぜそういうの! でも無理はしないようにな」


「えへへっ、ありがとう……」


最後まで着いていく。


口で言うだけなら簡単であり、彰子とは違い普段から運動していない聡美がそれを実行出来る訳が無く━━


「━━ぜえっ、ぜえっ……!」


彰子のランニングコースの中で、まだ半分にも満たない……役職員室に着く頃には聡美は汗だくで、何とか彰子に着いて行っている状態になってしまっていた。


「おーい、大丈夫かー?」


そんな中で彰子は一切、ペースや呼吸が乱れておらず……先行して聡美を置いてけぼりにしないように、時節聡美が追いつくまで立ち止まっていた。


「はぁっ、はぁ……ごめん、星出さん……! 全然着いて行けてなくて……はぁ、はぁ……もし、あれだったら……っ、はぁっ……私の事は置いて行って……!」


「うーん、そうは言ってもなぁ……最後まで着いてくって言った古川さんの頑張りは無駄にしたくないし……そうだ!」


「……えっ?」


「乗っていいぜ!」


ふとしゃがみ込み、こちらに背中を向けた彰子。


「いいの? 今の私、汗臭いと思うけど……」


「それは俺もそうさ、よかったらどうだ?」


「ありがとう……」


そうは言っても、今の彰子は汗一つかいていない。


疲れにより、特に何も考えず……こうして聡美はおぶって貰う状態で、彰子に乗り込んだ。


「じゃあ行くぜ!」


「わっ」


そして軽い感じでひょいっと彰子は立ち上がると、そのまま普通に走り出した。


「これで古川さんのペースは気にしなくてよくなったから……俺のペースで普通に走っても大丈夫か?」


「う、うん……大丈夫だよ」


「よし来た!」


「わっ━━」


聡美に許可を貰い、徐々に速度をあげていく彰子……


そのスピードアップの仕方は……聡美というウエイトを背負っているにも関わらず、留まる事を知らない。


「えっ、ちょちょっと、速くない?」


「━━飛ばすぜ!」


「ふええっ!?」


そうして聡美は彰子との身体能力の違いを思い知らされながらも……彰子に乗せられて、聡美がかいていた汗が乾く程の速さで、役職員室の前を通り過ぎて行くのであった……。


そして通り過ぎて行ったタイミングで……その部屋から、理奈とゆあが出てきた。


「今のって彰子だよね? 毎朝走って精が出るねぇ」


「……誰か乗せていたような気もしましたが」


「あの叫びは多分聡美ちゃんだったな。彰子の走りに着いて行こうとしたんだろう……うちの理香も一回そうした事があってね、同じように叫びながら彰子に乗せられてたよ……いやぁ懐かしいねぇ」


「……ジェットコースターみたいな言い回しですね」


「ふふふっ……ゆあちゃんはジェットコースター好き?」


「……嫌いではないです」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「ふぇ〜……」


……その後、シャワーを浴びてからの朝食の時間。


あれから彰子と共にコースを完走した聡美━━半分は彰子に乗っていた状態だが、それでも相当な体力を消費しており……ゆっくりもしゃもしゃと、聡美は朝食を口に運んでいた。


「聡美ちゃん……大丈夫? 大分疲れてるみたいだけど……」


そんな聡美の向かいで、一緒に朝食を食べていた歩佳は……心配そうな表情で、聡美を見つめていた。


「! あっ、うん! 全然大丈夫だよ! 実は最近、朝からジョギングを始めてさ〜……始めたばかりだからなのか、まだ全然慣れなくて……すぐに疲れちゃうんだよね〜」


「朝から元気ね……元気すぎて最初から全力出してない? だからすぐに疲れるんじゃないかしら」


そして歩佳の隣には紫苑がおり、聡美の走り方は全てお見通しといった感じで……あまり聡美の事を心配していない感じで、淡々と箸を進めていた。


「流石に最初は抑えてるよ〜、でも毎日走っていれば、全力出しても疲れない身体になるのかな……そうなれるように、コツコツ頑張るよ!」


「うん、頑張ってね聡美ちゃん! 私は運動が苦手だから、お供とかは出来ないけど……応援は出来るから!」


「私も汗をかくのは好きじゃないから走らないけど……走った後に飲み物とかを差し入れる役は出来るから」


「二人とも……ありがとう!」


歩佳と紫苑……それぞれから励ましの言葉を貰い、徐々に食欲を取り戻すと共に元気が湧いてきた聡美。


「━━おっ、皆おはよう!」


「おはよう星出さん」


「おはよう……」


……それから食堂から朝食を貰ってきた彰子が三人の前に現れて、聡美の隣に座りながら、歩佳と紫苑と挨拶を交わした。


「古川さんとはさっき振りだな!」


「うんさっき振りって……星出さん、そんなに朝ごはん食べるの!?」


そして彰子は聡美とも話し始め……聡美は米、味噌汁、おかず、サラダが全て大盛りになっている、彰子の朝食を目撃する……。


「おう、沢山動いた後は沢山食べる! トレーラーを動かすには、それ相応に強い身体でいなきゃな!」


「凄いなぁ……私には到底真似出来ないや……」


「どういう事?」


「うん、実は━━」


それから質問をしてきた歩佳に……紫苑へも含めて、聡美は今朝あった事を話した。


毎朝ジョギングをしているという彰子に着いて行こうとした事。


でも結局最後まで着いて行けず……コースの半分からおぶって貰っていた事。


そして聡美の話を聞き終わる頃には……紫苑はこいつマジかと言った感じに呆れた表情になり、歩佳の方は苦笑いを浮かべていた。


「━━という事があったの」


「それは疲れるわよ……普段から走っていないのに、普段から走っている人と張り合おうとしていた訳でしょ?」


「うーん……ゆっくり走ってればいけるかなって思ったんだけどな〜!」


「ゆっくりでも、ずっと走ってたら疲れちゃうよね……でも凄いね星出さん、それだけの距離を毎日走ってるだけじゃなくて、今日は聡美ちゃんをおんぶした状態で走っちゃうなんて……」


「運動になる為だったら何でもやるって感じだからな〜、何なら全コース古川さんをおぶった状態で走ってもいいぜ」


「いやぁ、それはちょっと……」


計り知れない体力を持っていそうな彰子からの提案を受けて、今度は聡美が苦笑いを浮かべる。


そして聡美は……今日は走り切る事は出来なかったが、もう二度と走りたくないとは思っていなかった。


毎日続ける事で、いつかは疲れない身体になってやる━━紫苑と歩佳と彰子と楽しく朝食の時間を過ごす中で、聡美は静かに心の中で闘志を燃やすのであった……。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「うぃ〜、おはよ〜」


「「「おはようございます!」」」


……その後、九時。


朝礼の時間となり、いつものその時刻になったタイミングで、理奈とゆあが入室してきた。


「さて今日は、昨日とは違って資源回収の活動に戻るんだけど……今日は"大物"を狙っていくよ〜」


「大物?」


「しゃあ、頑張るか!」


「絶対今日中に根こそぎ回収してやるわ」


聞き慣れない理奈の単語に、聡美は首を傾げる……一方で彰子は掌に拳を当てて、美夜子の方は握り締めた自身の拳を見つめていた。


「おっと、聡美ちゃんは大物回収は初めてだったね……ではまず、私達が回収している資源の区分について説明しよう」


「お願いします!」


すると理奈はカチャッと眼鏡をかけた後に指示棒を伸ばすと……聡美達が座っている前方のモニターボードに、資源の区分表を表示させた……。


「私達は回収している資源を、その大きさや中身に合わせて四つのグループに分けていてね……まず一つ目が"小物"。かつては戦車と呼ばれていた、地上世界で最も多く転がっている資源の事を言うよ」


「そして二つ目が"中物"、かつてはヘリコプターやジェット機を含めた戦闘機と呼ばれていた物で……地上では小物よりも転がっている数が少なくて、小物程頻繁に回収できる資源では無いから、小物よりも上のグレードで位置づけられているよ」


「そして三つ目が"大物"━━かつては戦艦と呼ばれていた物で、特徴的なのはその大きさだ……そこから取れる資源はかなりの量が期待出来るが、滅多に転がっていないのが特徴だ」


「そして最後が"特物"……これは不発弾とか、滅多に無いんだけど核爆弾とか、小中大以外の資源の事を言うね」


「なるほど……」


「という訳で今回は大物を狙っていく訳なんだけど……さっきも言った通りマジでデカいから、トレーラー一機だけで回収すんのマジで大変だから━━二人でペアになって現場に行ってもらいます!」


「……えっ!?」


聡美の驚きに合わせて、ザワつくミーティングルーム内。


「ちょっと隊長、前回はそんな事しなかったじゃないですか!」


大物を二人で狙いに行くという事は、そこから取れる資源も二人で分け合わなければいけない……美夜子はそれが気に入らない感じで声をあげた。


「今回の目的は大物の回収もそうだけど、誰かと協力した状態で地上世界で活動させる為っていうのも視野に入れてるんだ……私達はチームだからね。地上では何が起きるか分からないし、いざという時は助け合わなければチームの意味が無いよ」


「っ……分かりました」


「そういう訳だから、一緒に組まれたらよろしくなぁ美夜子」


「もう……分かったって言ってるじゃない」


理奈に最もな事を言われて、美夜子は了承するしかなかった……そんな美夜子に、彰子はざまぁみろと言った感じに、ニヤニヤしながらそう茶々を入れたのであった。


「それで今回狙う大物は三つ……かつてはヤマト、ムサシ、シナノと呼ばれていた物を狙っていくよ」


「……でも大物となると、他の部隊も狙ってる代物だからね〜。先に見つけた方の部隊の物になる早い者勝ちになっちゃうんだけど、まぁ焦らずゆっくり落ち着いて行動してね」


「だからその争奪戦に勝つ事が今回の目的だから……今日中に大物にある資源、全部を回収しなくても大丈夫だからね〜」


「それで作るグループも全部で三つ! 私とゆあちゃんは基地で待機しているから……理香! お前も一緒に行っておいで」


「やったぁ! よーし頑張るぞー!」


「それで肝心のグループの決め方なんだけど……ドキドキワクワクのくじ引きで決めて行くよ〜」


そうして理奈は、どこから持ってきたか分からない箱を取り出して、隊員達に中に入っているくじを引かせていった……。


その結果━━


「あっ、赤色だ」


「おっ、俺も赤色だぜ! よろしくな!」


「うん! よろしくね!」


一つ目のグループは、聡美と彰子。


朝からよく会話をしている二人……なので気まずくなる事も無く、以前から頼りになりそうだと感じていた彰子と握手をする事で、今回の出撃は大丈夫そうだと聡美は確信した。


「あの……よろしくね、油井さん」


「ええ、よろしく大西さん……お互いに協力して、回収していきましょうね」


「う、うん……」


二つ目のグループは、歩佳と美夜子。


油井さんは、誰かと協力して出撃するのは好きじゃないんだ━━先程本人が出した言葉からそう感じていた歩佳は、恐る恐る美夜子に声をかけ……そんな歩佳を怖がらせないように、美夜子は真顔だが友好的な返事をした。


「おっ、紫苑と一緒だぁ! 頑張ろうね!」


「うん、よろしく」


「トレーラーの調子が悪くなったら理香に任せて! バッチリ治してあげるから!」


「ええ、頼りにしているわ」


そして最後のグループは、紫苑と理香。


メカニックである理香は、いつも基地で待機しているので……今回皆と一緒に出撃出来る事をシンプルに喜んでおり……その気持ちを紫苑も感じていて、嬉しそうにしている理香と微笑み合いながら話していた。


「さて、ちゃんと分けられたね……そうと決まれば、今日も元気に行ってみよー!」


「「「はい!」」」


それから理奈の号令に合わせて、隊員達は格納庫に向かっていく……。


「よっと」


コスモスに乗り込む聡美。


思えば一隊員として、資源回収という主目的の為に、他の隊員達が揃った状態で一緒に出撃するのは今回が初めてだ……聡美はワクワクした気持ちになりながら、コスモスの起動ボタンを押した。


「おはようコスモス!」


『はい、おはようございます。聡美様』


「えへへっ、今日もよろしくね!」


『よろしくお願い致します』


「オーライ! オーライ!」


それから聡美は、旗を振る誘導員に従って……地上まで射出される滑走路の手前にある、白線の内側までコスモスを移動させた。


その隣には隊員達が乗っている、デイジー、オリーブ、彰子のトレーラー、美夜子のトレーラー、理香のトレーラーがずらっと並んでいる。


この時点で聡美のテンションは最高潮に達していた。


『よーし、皆準備出来たね〜』


その時、司令室にいる理奈から、それぞれのトレーラーに無線が入った。


『聡美ちゃ〜ん、何だかんだ今回は研修でも何でもない本番のお仕事になるけど大丈夫かな? 緊張してない?』


「いえ……寧ろ楽しみです!!」


『おっ、いいね〜。何か困った事があったら、彰子先パイが助けてくれるからね〜』


『理奈さん任せてください! 古川さんの事は全力でお守りするっす!』


『との事だ聡美ちゃん、頑張ってね〜』


「星出さん……ありがとうございます!」


ただでさえ楽しみであるが、彰子も一緒にいる頼もしさも加わり、ますますモチベーションに満ち溢れる聡美。


早く地上に出たいと思う間も無く……理奈は隊員達に号令を出した。


『それじゃあ行こうか!AGPR〇五部隊、発進!!』


「「「はい!!」」」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「……ふぅ」


そうして地上世界にやって来た、聡美他隊員達。


そこでは相も変わらず薄黒い雲が空を覆い……錆と砂と岩だらけの世界が広がっていた。


『━━ではそれぞれの班で狙って貰う大物を伝える』


その景色を眺めていると……ふと、基地にいるゆあから指示の無線が入ってきた。


『まずは金井と理香班……ここから南東にあるとされているヤマトを狙え』


『了解』


『はーい!』


『続けて油井と大西班……ここから北西にあるとされているムサシを狙え』


『了解!』


『了解しました』


『そして最後に星出、古川班には……ここから東にあるとされているシナノを狙って貰う』


「『了解!』」


『尚今回は、各大物所在地周辺で黒雨が降る事が予想されている……そうなった場合は、無理な行動は控えて建物内等に避難するように』


『指示は以上だ……それでは、行動開始!』


それからゆあの号令によって、それぞれの班はそれぞれの大物を狙う為、それぞれの方角へと向かって行った……。


聡美は別れ際に、紫苑と歩佳に無線を入れようと思ったが……今の二人は、理香と美夜子と組んでいるので、邪魔はしないようにしようと考えて、聡美は彰子の方を向いた。


『それじゃあ早速行こうぜ古川さん! 改めてよろしくな!』


「うん、よろしくね!」


『トレーラーの操作はどんな感じだ?』


「大分慣れたよ! まだまだ全体的に時間はかかっちゃうかもだけど……回収作業も、もう一人で出来ると思う!」


『すげぇな……まだ入隊してから一週間も経ってねぇだろ? 頼りにしてるぜ!』


「うん!」


『勿論分かんねぇ事とか、不安な事があったら、いつでも俺に聞いて大丈夫だからな!』


「ありがとう!」


同い歳である筈なのに、聡美に対して頼れる姉貴分として振舞ってくれる彰子。


聡美は今回の出撃での勝ちをますます確信しながら……彰子と共に只管東へと向かっていく……。


「……」


それにしても、何故こんなにも彰子は頼りがいがあるのだろうか。


同い歳である筈なのに、私と違って精神的余裕があるというか……こんな事は口では言えないが、貫禄があると言うか……同い歳であっても、彰子の方が先輩であるからなのか━━聡美はそう思いながら、彰子に声をかけた。


『ねぇ、星出さん』


「どうしたー?」


『星出さんは、AGPRに入隊してからどれくらいいるの?』


「おう、三年いるぜ! 俺、AGPRには〇五部隊が設立した頃からいてな。 その時にはまだ理奈さんとゆあさんと、美夜子と理香と俺しかいなかったんだぜ!」


「因みに二年前に入ってきたのが歩佳で……一年前に入ってきたのが金井さんだな」


『えぇ、めちゃくちゃ星出大先輩じゃん……いいのかな、敬語で話さなくて……』


「いいよいいよ! 俺達タメだろぉ? 俺も同い歳から敬語で話されるの嫌だしなー」


『そっか〜、よかったありがとう……でも凄いよね! 紫苑ちゃんとも歩佳ちゃんとも油井さんとも同い歳だもんね私達』


「だよな〜。その呼び方からすると、金井さんや歩佳とは仲良くなれたみたいだな!」


『うん!ほんと、いつもありがとうって感じ』


「でも美夜子とはまだって感じだな」


『油井さんとはね〜、中々お話する機会が無くて……でも折角ならお友達になりたい! 勿論星出さんともね!』


「おっ、嬉しい事言ってくれるじゃねぇか」


一方で彰子の方は━━自身のトレーラーのモニターに表示されている、聡美のディフォルメアイコンを見ながら……その言葉通り、笑顔で聡美と話をしていた。


同い歳であっても、敬語で話さなくてもいいと言っても、彰子にとって聡美が後輩である事に変わりは無い。


後から入ってきた同じく後輩である歩佳の良さと、紫苑の良さとは違う……聡美の良さを感じながら、楽しそうな聡美の話し方から〇五部隊での近況を感じながら、彰子は安心した気持ちも含めて微笑むのであった……。


「……それで〜? 俺の事は名前で呼んでくんねぇのか?」


『いや呼んでもいいなら全然呼ぶよ!……えっと、彰子ちゃん!』


「彰子ちゃんか、ちょっと擽ったいけどいいな……よろしくな! 聡美!」


『ふふっ、よろしくねー!』


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


……その後、彰子との雑談を交えながら、コスモスを走らせた聡美。


元々コミュニケーション能力がある事もさながら、無限に話題がある彰子との会話が楽しくて……あまり外の景色を気にせず、聡美は彰子と共に走り続けた……。


『……そういや聡美、"海"って知ってるか?』


「海……うん! 言葉だけなら聞いた事あるよ。とにかく広くて、水がとにかく沢山入ってる場所の事でしょ?」


『おう! いつも地下で暮らしてる俺達にとって、縁もゆかりも無い場所だが……その戦艦っていうのはでけぇ船の事を言って、かつては海で動かす為の物だったんだ』


「へぇ〜……」


『だからほら、あれを見てみろよ━━』


「えっ━━」


それから彰子に促されて、聡美は前方を見る。


聡美達がやって来ていたのは、遠くの景色まで見渡せる丘……緑が一切無い、灰色の山々━━その景色の奥に、黒い水平線が見えるのを聡美は気がついた。


『!……あれが、もしかして』


「おう、あれが海だぜ!」


『すごいすごい! もっと近くから見たいから早く行こ!』


「ふっ、そう慌てなくても海は逃げねぇぜ?」


普段地下で生活している一般人にとって、生の海を見れる事はまず無い……その海を見せた事で予想以上に喜んでくれた聡美を見て、彰子は人差し指を鼻の下に当てた後にコスモスに着いていく……。


「……おおっ!」


やがて海沿いまでやって来た両機。


聡美はどこまでも続く黒い海を、お世辞でも綺麗とは言えない海を……そんな状態でもキラキラとした瞳で眺めていた……。


『ちなみに中には入らない方がいいぜ、見ての通り色んな有害物質が混じってっから……浸かろうもんなら、一瞬でトレーラーがお釈迦になっちまう』


「ひえぇ……気をつけるよ」


『それでシナノはこの海に沿った先にあるらしい……行ってみようぜ!』


「うん!」


そうしてレーダーを確認しながら、シナノに近付いて行く彰子の後に着いて行く聡美。


海には波があり、時節陸の方へとそれが押し寄せてくる……聡美はその波に当たらないように浜辺から距離を取りつつ、彰子と共に暫く進んでいると━━


「……おお!」


「おう! あれだな」


川が上流から流れてきて海へと放たれる場所……岩山に囲まれたその広い場所に、陸に座礁した状態のシナノはいた。


「……いやおっきいな!!」


『流石大物って呼ばれてるクラスなだけあるぜ。こいつを今日中に二人だけでバラして回収するのは、まぁ無理だろうなぁ』


そして聡美も驚いたシナノの特徴は、とにかく大きい事。


聡美や彰子のピーストレーラーの何十倍、何百倍もの大きさを誇り……彰子は頬を指でポリポリと掻きながら、二人が無茶をしなければ達成出来ない理想よりも、安定して達成出来る目標を頭の中で立てた。


「じゃあ早速回収していこうぜ! とりあえずシナノの中に落ちてる奴を、只管回収していくんだ」


『わ、わかった!』


「そしたら━━ストック」


『━━はい、彰子様』


それから彰子は、自身のピーストレーラーの事を呼んだ。


その名はストック……ふわふわとした赤髪のショートカットのデザインをしているストックは、モニターにアイコンとして表示されると共に、彰子からの呼び声に答えて返事をした。


「ストック、シナノの中にある資源の数を解析してくれ」


『承認。 回収対象シナノのスキャンを開始……暫くお待ちください』


刹那、ストックから緑色の光線が照射され……それがシナノに当たると共に、その光は網状になってシナノを覆い尽くしていった……


『━━スキャン完了、対象シナノ内にある回収可能な資源の数は四八七三二個と推測されます』


「サンキュ〜、聞こえたか聡美?」


『よっ、よんまんはっせん!? そんなに沢山、二人だけで回収出来るかな……』


「ふっ、今日中に回収は無理っていうのはそういう事だ。焦らずゆっくりやって行こうぜ」


『う、うん!』


「そしたら俺は向こう側から回収していくから……聡美はこっから回収頼むわ」


『わかった!』


「それじゃあまたな〜」


『気をつけてね!』


そうして彰子は艦尾の方に向かっていき……聡美はそのまま、艦首からシナノの中に入って行くのであった……。


「よーし、やるぞ〜…!」


気合いを入れる為にパンッと手を合わせてから、操縦グリップを握る聡美。


「……」


薄暗いシナノの中に落ちてある多くの物は鉄塊や銅、アルミニウムなどといった様々な金属……兵器に使われる素材となる物がゴロゴロと転がっていた。


『三態変化光線銃、融解モード、起動します』


「えいっ」


つまり元々分解されている状態なので、聡美が苦手としているレーザーソーを使う必要が無く……三態銃で液体に変えた後、クリーナーで吸い取るだけで回収が出来るという訳だ。


聡美はラッキーだと思うと共に、今回の仕事に対しての勝利を確信した。


溶かして吸い取って溶かして吸い取って……


四八七三二、あとどれくらいの数が残っているのか……その事が気にならなくなるぐらいに、聡美は集中してその作業を繰り返していく……


『おう聡美、資源回収はどんな調子だ?』


その時、彰子から無線が入った所でハッとなり……聡美は集中モードから我に返ってきた。


「うん、いい感じだよ! えっと今は……三千七十二個集めたよ!」


『やるな、俺は五千二十二個だ』


「えぇっ、もうそんなに集めたの?」


『おう、でも聡美が焦る必要は無いぜ? 三千七十二個だって素人じゃ絶対集めらんねぇ数だ、成長してんな聡美!』


「えへへっ、ありがとう━━げっ」


ふと彰子と会話をしながらシナノの中を進んでいると……戦闘機の残骸である中物資源が落ちているのを、聡美は発見した。


『ん? どうした聡美?』


「ううん、何でもないよ!」


恐らくシナノがまだ動いている時に合わせて使われていた物であろう……分解しなければ回収が出来ない資源の出現に、思わず聡美は嫌そうな声を出した。


「ふぅ……」


……だが彰子の言う通り、焦らずゆっくりとやっていけば大丈夫だ。


「よーし……」


『レーザーソー、起動します』


その言葉を胸に灯し続けながら、聡美は右腕を変形させるボタンを押した。


「ほっ、はっ、やっ」


しかし分解作業だけはゆっくりやっていると色々と考えてしまうので……スパスパと素早く、怖いと思う前に手際よく切っていく。


そうしていく内にいつの間にか━━聡美はどこをどういう風に切れば、上手く資源を切断出来るかが分かるようになって来ていた。


「ふぅ……」


やがて中物資源は何回も刃が入れられ……これ以上切断しなくてもいいくらいに細かくなったのであった。


またもや聡美は集中モードに入っていたので……我に返った時には、少し細かくしすぎてしまったかと心配になる聡美なのであった。


『スムーズな分解作業、お見事です。聡美様』


「えへへっ……ありがとう、コスモス」


だがコスモスからの褒め言葉を受け取った事で、その心配も瞬時に達成感に変わった。


これで今の私なら、どんな資源だって回収出来る筈。


もう二度とパニックにならないように、この気持ちを忘れないように思いながら……聡美は細かくなった資源を溶かして回収するのであった。


『なんか集中してたみてぇだけど、なんかあったか?』


「うん……あの、実は私……レーザーソーを使うのが苦手で……」


『えっ、そうだったのか!?……大丈夫かよおい、その状態で三千個も集めさせちまったのか……?』


「ううん! 今までは分解しなくても回収出来る資源ばかりだったから、レーザーソーを使ったのは一番最後に回収した資源だけだったよ……でもまだ完全に慣れてないから、掛け声とかして気を引き締めたくて……ごめんね、うるさくて」


『いや、それは全然いいんだけどさ……でもそうだよな、レーザーソーって昔は資格持ってなきゃ使っちゃいけない工具だったし』


「ええっ!? そうだったの!?」


『おう、三態銃だってそうだぜ。一応今は資格持ち無しからでも使ってもいいって事になってるけどな……出力が抑えられて危険が無い分、未経験からでもAGPRに入れるっていうのはそういう事だ』


「……その資格は、働いてる内にいつかは取らなきゃいけない感じ?」


『おう、三級資源回収機搭乗者ってのを取らなきゃいけねぇ……確か実務経験を積んで一年後から講習が始まるんだっけか』


「おお、かっこいい名前……そっか、今すぐ取らなきゃいけないんじゃないんだね。 よかった……」


『そそ、だからさ。資格とかそういうのは何も考えずに、聡美のペースで上達していけばいいと思うぜ?』


「ありがとう!……ところで彰子ちゃんは、資格持ってるの?」


『おう、二級の搭乗者資格を持ってるぜ、三年働いてなきゃ取れない資格だな。だからついこの間取ったばかりのホヤホヤの奴だ』


「ええ、凄いね……勉強とか大変そう……」


『いやいや俺めっちゃ勉強苦手だぜ? そんな俺でも取れたんだから聡美だっていけるさ……資格取ってからはいいぞ〜。 色々特典はあるけど、シンプルに資源を換金した時の給料が増えるからな』


「いいな〜……」


最初は資格取るの面倒くさそうだなと思っていた聡美だったが……彰子の話を聞いている内に、資格に対して興味を持ち始めていた。


得意な事を自称していなければ、資格も持っていない聡美……そんな自分が資格を取れば、生き方に対しての価値観が変わったり自信を持てたりするかもしれない……。


資格を取る為には、あと一年は働かなければいけないのだが……資格を取る為には必須となるであろう、このコスモスを完璧に乗りこなすようにするのは今からだって出来る。


だったらもっともっと上達してみせると、聡美は操縦グリップを握り締めて誓うのであった……。


『おっ、もうこんな時間か。聡美、そろそろ昼メシにしねぇか?』


「あっ……そういえば、何だかお腹が減ってきたかも……」


『丁度いいじゃねぇか。折角なら景色のいいとこで食べようぜ! そしたら……甲板まで来れるか? 座標送っとくからそこで集合な〜』


「わかった!」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


『聡美、ここだここだ!』


「ごめんお待たせ〜、ちょっと迷っちゃった!」


『全然大丈夫だぜ〜』


それから甲板へとやって来た聡美。


そこでは既に彰子のストックがいて、聡美のコスモスに気がつくと、彰子はぶんぶんとストックで手を振った。


「そしたらまず地上に降りられるようにするか」


『えっ、そんな事出来るの!?』


「ああ、と言っても時間制限付きだけどな。ちょっと待っててな」


『う、うん!』


「えっと〜、そしたらー……ストック!」


『はい、彰子様』


「セーフフィールドを展開してくれ」


『承認、現地点から半径百メートルまで、セーフフィールドを展開します』


すると彰子のストックの機体が緑色に光り出し……その光が空に打ち上げられたかと思うと、ドーム状になってコスモスとストックを覆った。


「……よし」


その事を確認し、彰子はハッチを開けて外に出たのであった。


『聡美! もう出てきて大丈夫だぞ!』


「お、おお……! わかった、今行く!」


有害物質が蔓延する地上に彰子が立っている姿を、コスモスからのモニター越しで見て聡美は戸惑うも……それからハッチを開けて、聡美も外に出るのであった……。


「っ……!」


「ふふっ、そんな息を止めなくても大丈夫だぜ。ここの甲板は一時間の間は安全だ」


「えっ……! あっ、本当だ……息をしても苦しくない!」


「じゃあ早速飯にしようぜ! えっと、軽く支度だけさせてくれな……」


すると彰子は持っていたレジャーボックスを開けて……椅子を取り出して座り、二人分の飯ごう、折り畳み式のコンロと鍋、そして椅子をもう一つ取り出したのであった。


「あとは火をつければ……よし、これでどんな飯でも作れるようになったぜ! とは言っても持ってきてんのはレトルトの奴だけだけどなー」


「凄い! キャンプみたいだ! この道具、態々彰子ちゃんが基地から持ってきてくれたの?」


「いや、トレーラーに備え付けになってる奴さ。だから聡美の方のトレーラーにもある筈だ。緊急事態の時に外に出て飯だけは食えるように、セーフフィールドっつう機能も合わせてある訳だな」


「なるほどね……緊急事態の時以外に使いたいな……」


「勿論今みたいに普段からでも使えるけどな。んでどれにする? 米にかける奴でもパンにかける奴でもパスタと混ぜる奴でも何でもあるぜ」


「おお〜……」


それから聡美も椅子に座らせて貰い……彰子が広げた風呂敷に入っていたレトルト食品達を手に取って選び始めた。


「うわカルボナーラ美味そ……これにしようかな」


「おっ、じゃあ俺もパスタでミートーソースにすっか」


それから彰子は鍋に水を入れてパスタを茹で始めた。


それを彰子はゆっくりとかき混ぜていき……やがてパスタは柔らかくなり、それを皿に装ってカルボナーラの素をかけて更にかき混ぜていき━━


「そら出来たぜ、カルボナーラだ」


「おおありがとう! 彰子ちゃん、何だか手馴れてるね」


「ふふっ、三年いるだけあって地上飯は何回かやった事あってな。 パスタを茹でるだけなら誰にも負けないぜ!」


そうニシシと笑いながら、聡美は自分の分のパスタにミートソースをかけた。


「地上飯か……いいね。 彰子ちゃん、料理自体は結構する感じ?」


「するけどレトルトぐらいしか作れないんだわ……歩佳の方が全然得意だと思うぜ! 一回地上で作ってくれた物をご馳走になったんだが、ありゃあ美味かったなぁ」


「だよねぇ、歩佳ちゃんのご飯美味しいよね〜」


「おっ、食べた事ある感じか?」


「うん! 一昨日歩佳ちゃんのお家にお泊まりした時に食べさせて貰った!」


「ああ、そういや申請出してたんだったな……おっとわりぃ、パスタが冷めちまうから食べようぜ!」


「ああうん! いただきま〜す」


そうしてカルボナーラを一口食べた聡美……。


「うわ美味しっ……いや、マジで美味いなカルボナーラ」


「ふふっ、手作りの料理もいいけどレトルトも捨てたもんじゃねぇだろ?」


目をつぶって昇天しかけているような表情で感想を述べた聡美を見て、彰子は笑いながらミートソースパスタを頬張る。


彰子の方も美味そうにパスタを食べており……そんな彰子に、聡美は微笑みながら甲板から見える景色を眺めた。


「お外で彰子ちゃんと一緒に食べてるからだよね……これで天気がよかったり景色が綺麗だったら、もっと美味しく感じるのかな……」


「それを思えば、もっと仕事を頑張ろうって思えるからいいよな。まぁ俺は今のままの景色でも好きだけどな」


「私も! どんなに汚れちゃってても、中々来れない地上だしずっと見ていられるよ!」


「ふふっ、ポジティブだな聡美は」


「えへへっ」


歩佳の料理も美味いが、彰子が作った料理も美味い。


綺麗な景色も見てみたいが今の景色も好き。


聡美の会話の中には自身の事を除く、一切の否定的な意見が無く……その事を感じ取り、彰子は微笑んだ。


この人当たりがいい新人がいれば、皆と仲良くなり……いつかは隊員全員が揃った状態で、地上飯を頂く事が出来るかもしれない。


そんな光景を想像しながらふっと笑い……彰子は最後の一口をよそって咥えるのであった……。


「ご馳走様でした! いやマジで美味しかったありがとう!」


「おう、お粗末様だぜ」


やがてお互いのパスタはあっという間に無くなり、聡美は手を合わせて彰子と笑い合った。


その時━━


『━━彰子様』


「んー? どうしたストック」


地上飯道具を片付けていると……突如ストックが起動して、彰子に呼びかけてきた。


『━━ここから南東百メートル先から、ピーストレーラー二機がこちらに接近中です』


「えっ!?」


「なんだそいつら……ははーん、さては他の部隊に先を越されちまったから、美夜子達か理香達がこっちに逃げて来た感じか?」


『いえ、その二機は当部隊所属のピーストレーラーではありません』


「━━なんだって?」


余裕のある表情で考察をしていたが、ストックに否定をされて……慌てて彰子は、聡美と共に南東の方を向いた。


その方とは甲板から景色が眺められる場所……二人は船首の方に駆け寄って、そこから見える光景を確認した。


「!……おいマジかよ」


「確かに皆が乗ってるトレーラーとは違う色してるね……」


そう彰子と聡美が会話している間にも、二機のトレーラーは残り七十メートル、五十メートルと……どんどんこちらに近付いて来ている。


「……!」


そうして接近してくる内に、トレーラーの詳細が分かるようになり━━残り三十メートルの時点で、彰子はある事に気がついた。


「あのトレーラーに書かれてあるマーク━━〇三部隊の奴等だな」


「〇三部隊……!?」

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