ポニテ
義兄さんが髪を切って来た。
小ざっぱりと涼やか!
そして何だか……
凛々しさが増した様だ。
「いいなあ……」
思わず言葉が零れてしまって……
義兄さんに振り向かれてしまった!
どうしよう……
とりあえずは“言い訳”の言葉を……
「男の子は涼しくっていいよね!私もショートヘアに戻ろうかな」
また心にも無い事を言ってしまった……
髪は絶対!!!!!
切りたくはない!!
でも男の子は涼しそうだなって思うのは事実!
だって学シャツを裾出して着れるもん!
そう!素肌の上にそのまま着てるヤツも居て……
私はそれに気が付くと目を逸らしてしまうのだけど……
もし、義兄さんが素肌に直接学シャツを着たら……
私は目を逸らすのだろうか?
ヤバい!妄想で顔が赤らむ!!
私はため息をつくフリをして、義兄さんから見られない様にそっと俯く。
実際のところ、義兄さんは素肌に直接学シャツは着ないけど……“裾出し”して着る。
これがまた涼しそうだ!
試しに私もやって見たのだけど……
ウチの高校の学シャツは裾が長めで……私がやると、『ありえなくね?』になってしまう。
ああ、義兄さんくらいに足が長けりゃ、似合うんだろうけど……
ええ!これはこれで私には『美味しい』話題なのだけど……話を戻すね。
結局私は“シャツイン”で学シャツを着るのだけど……長袖の時はともかく半袖だとタンプトップは着れない!絶対にTシャツ!!
その理由は……恥ずかしくてちょっと言えないけどね!
とにかく!!
その下にブラトップを着る訳だから暑くてたまんない!
“中坊”の時はショートヘアに体操着の日常だったからこの差は大きい!!
こんな風に心の中でウジウジしていると義兄さんが言葉をくれた。
「ポニーテールにしたら?」
「ええ~!!似合わないよ!」と結構アセアセしながら言葉を返す。
「そうかなあ~可愛いと思うけど……」
『可愛い???!!!』
私、心の中で悲鳴に近い叫び声を上げたけど、努めて努めて平静を装い、なんとか言葉を返した。
「じゃあ、考えてみる……」
部屋へ戻ってもまだドキドキが止まらない!!
もうこれは!!
お義母さんに助けてもらうしかない!!
私はスマホの握り締め、考え考えメッセを送った。
『私の髪で可愛いポニーテールにしたいの!!』
◇◇◇◇◇◇
義兄さんと晩ご飯の支度をしているとお義母さんが帰って来た。
で、「後は悠耀一人で出来るよね!」とお義母さんは私を自分の部屋に拉致した。
お義母さんは『私ならきっと気後れして手が出せなかったであろう』可愛いシュシュやリボンをショ袋から出して私の目の前に並べてくれた。
「奏ちゃんなら直ぐに覚えられるから……今日は全部、私がやってあげる。だから奏ちゃんはどのシュシュやリボンがいいかを選んでね」
私はもう、鏡の前で頷くしかない。
そしてお義母さんのポニーテール講義が始まった。
「髪を梳く時にはキッチリじゃなくて凹凸が出る様にするの。結ぶ高さは耳の真ん中あたり。毛先は軽く“外ハネ”させるの。奏ちゃんの髪質だとやりやすいわね。あと、首周りがスカッ!とするより後れ毛を出してあげた方が可愛らしさが上がるのよ。こんな感じで……」とお義母さんはスイッ!スイッ!と後れ毛を抜き出して行く。
確かに可愛い……
「で、この後れ毛を……」とお義母さんは毛先をヘアアイロンで緩くカールしてくれた。
わあああ!!!
私じゃないみたい!!
もう私は……どうしていいか分からないくらいにキョドっていると……
「私の感覚からすると……悠耀が好きなのはこのシュシュかな? あの子、少女趣味的なところがあるから……」
そのお義母さんの言葉に……私はホント!真っ赤になってしまうのだった。
おしまい
このお話は 拙作「義兄のいる風景」 https://ncode.syosetu.com/n4287jp/
のスピンオフです。