3.仮婚約者の条件
アランの条件は
一、婚約を公表すること
二、毎週末一緒の時間を持つこと
だった。
それはアランに何の得もないのでは?と反論したが、頑なに譲らないので
お詫びの気持ちでその三に「一つだけお願いを聞くこと」を追加した。
定期集会で婚約しましたと時発表した時、研究員はそれは騒めいた。四方から「おめでとー」だの「上手くやったな」だの聞こえる。何処からか悲鳴も聞こえた。
ーーアランのファンの子だろうか、ショックを与えてしまった。
居た堪れなくなってチラリと仮婚約者を見上げるが、アランは上機嫌で群衆に手を振っている。
週始めに発表してしまったので、出歩く度質問攻めにあった。アランはぴったりと側について指を絡めながら「ずっと片思いしてたんです」だとか「やっと振り向いてもらえたんです」だとかあたかも自分が好きだったかのように話すので、
「…婚約破棄した後困るのは自分だぞ」
と耳元で囁いた。そりゃそうだベタ惚れだった婚約者と別れた後、すぐに新しい人とは付き合えないだろう。
研究室に行くまでに質問されてしまうので、仕事が捗らない。
ピリピリしていることに気づくと飴玉を口に入れられ背中をさすられる。
週末の前日やっと集中できると研究室に籠っていたらら朝になっていた。
「…また床で寝て」
朝焼け前、アランの声が降ってきた。
ずるずると紙の山から引き摺り出される。
ーー今日お洒落してるんだ、緑似合うな
そのまま膝裏に手を入れられてお姫様抱っこのような形で持ち上げられる。
長椅子に座りアランの太ももに頭を乗せられる。
「少し寝てください」
優しく頭を撫でられる。
見上げるとひどく優しい顔と目があった。
なんだか気恥ずかしくなって体を捩るとバランスを崩して落ちそうになる。
ーーわ、落ち
口にするより早く腰を掴まれ支えられる。
今日のアランはなんか変だ。いつもより口数も少ないし、徹夜に対する小言も言われなくて調子が狂う。
見上げると顔を近づけられてそのまま口付けられた。
「ほら寝て」
と眩しくないようにだろうか目を手で覆われ
また頭を撫でられて寝かしつけるように今度は背中をトントンされる。
ーー仮婚約者にキスする必要はないのでは?
睡魔が勝ってそのまま寝てしまった。




