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悪役令嬢オタクの私、ヒロインに転生

作者: わか

これは、夢なのだろうか。


朝起きて身支度をしようとした私は見慣れない部屋で目を覚ました。起きて直ぐに頬をつねったり、軽く自分を小突いてみたりと知る限りの夢から目覚める方法を試した。長々と行ってもあれなので結論から言おう。“これは、夢では無い。”


けれど正直に言ってしまうと、覚めて欲しい訳では無い。むしろこのまま覚めないで欲しいと願うほどだ。何故かって?そんなの決まっている。私はこの世界にいる悪役令嬢の大ファン(限界オタク)なのだから!


「推しの世界ッ!!推しと同じ空気を今吸っているとか、嬉しすぎてやばいんですけど!!」


まず初めにこの世界に着いて説明しようでは無いか。ここは恐らく、私が大好きな乙女ゲームの世界だ。そして私はヒロインの“レベッカ”。このふわりとした髪の毛に華奢な体、可憐な声。さすがヒロインと言ったところだろう。こんな美少女を操作してたとか普通に申し訳なくなるほどだ。というかレベッカ思っていたよりも小さいのね...ゲームでは分からないことをしれて嬉しすぎる。


……いやいや、違う違う。レベッカも好きだが、私が愛してやまない推しはこの世界の悪役令嬢である“ローズ”様なのである。あぁ、名前の響きから美しい。彼女はストーリーでも冷酷卑劣な事を繰り返し何度もレベッカからヒーローを奪ったのだ。本来なら恨むべき立ち位置なのだろう。


しかし!私はその彼女に惹かれた。冷たく鋭いゴミを見るような目、カーブをえがき綺麗に笑う口元、踏まれたく…失礼、長く細く美しい足。もう全てが最高すぎる私の推し、それがローズ様だ。


「ここは…多分メインストーリーの最初の時よね!この後外に出た時に悪役令嬢とすれ違う展開が来るはず!!となれば─────」


窓から外を確認したところまだ春くらいであることが分かった。この物語は春から始まるため、もしかしたら今はその始まりの時期なのかもしれない。我ながらオタク具合に少しひいたのはまた別として。そしてここで外に出た主人公がヒーローとすれ違う瞬間がある、がそんなのは正直どうでもいい。これは途中までプレイした人にしか分からないのだがヒーローとすれ違う前に実はローズ様とすれ違うという演出があるのだ。本当に製作人には感謝しかない。となれば今からでも外で張り込みを...


とその時、こんこんっとノックの音が部屋に響いた。直前まで叫んでいたため別に悪いことなどしてはいないが謎の緊張が体に走る。というか私、レベッカを上手く演じられるのかななどと不安も募る。


「レベッカお嬢様、マリアでございます。」


マリアーーー!と叫びたくなるのを必死に抑え私はその場で綺麗なガッツポーズを決めた。マリアとはこの乙女ゲームでレベッカ専属メイドであり幼馴染であるという重要立ち位置のキャラなのだ。レベッカが5歳の時に同じ5歳であるマリアと出会いここまで共に育ってきた。

そして最終章の「私は今からお嬢様の親友として、女として言わせていただきます。レベッカ、自分の心のままに」というセリフにはローズ様推しの私ですら何度泣いたか分からない。あ、というか返事してない。


「は、はいマリア。入って良いわ...よ?」


ごめんよレベッカ...。私はどう考えてもあなたを上手く演じられない。


「失礼いたします。...あら、そんな驚いた顔をされて...。いったいどうなさったのですか?」


レベッカへの懺悔を告げながら入ってきたマリアに目線をやる。しかし笑顔を保ったままなどの考えは一瞬で吹き飛び頭の中に?が浮かぶ。


あれ、マリアなんか髪短くない?え、こんなもんでしたっけ?いや、そんなわけない。伊達に一日の約半分このゲームをプレイしてきた訳では無い。


「あ、いや、なんでもないわ。」


まさか、まさかだよな。


先程から感じる少し違和感が頭の中で組み合わさりひとつの結論へとたどり着く。そしてそれがあっているかを確かめるために恐る恐る口を開く。


「マリア。来年は楽しみね?」


「?...えぇ、来年はついにお嬢様の入学ですものね」


..やっぱりかぁぁぁ。


どうやら私は、本編エピソードが始まる1年前に来てしまったようだ。1年前だと分かるものも分からない。

いや、待てよ。ローズ様が悪役令嬢として出てくるのは現実?世界で言う高校からだ。つまり今のうちにローズ様と会って友達ちなれば...学園生活をローズ様の過ごせるのでは?!正直ヒーローには微塵も興味が無いためローズ様が彼を好きだと言うのなら死ぬ気で応援するつもりだ。


つまり何が言いたいか。最高、神様ありがとうということだ。まさか、しがないゲームオタクの私が。この私が!!ローズ様と友達になれる機会を与えられるなんて。これはどんな手を使ってでもローズ様と知り合わねば...


「お、お嬢様?」


マリアに引き気味に声をかけられ慌ててレベッカ顔にもどす。いけない、いけない。この可愛い顔であんな表情をするとは。オタクとして有るまじき行為!!


「いえ、なんでもないわよ!」


「え、えぇ。承知いたしました」


と、言うわけでここから私のローズ様と仲良くなろう大作戦が始まるという訳だ!!

読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
え!一瞬続くと思ってましたがここで終わりなんですね。 続き読んでみたいです!
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