1章−4
アレンが旅立った後、残った二人は通常の業務に戻っていった。
ローレンは軍に復帰し、戦後の処理として、壊れた家屋の撤去や施設の復旧に大忙しであった。
マリアも教会に戻り、日夜戦争で怪我をした人の治療に奮闘していた。
勇者が旅立って半年が経った。
ローレンとマリアは城に呼ばれて、今は王家の会議室で待機している。もちろん王族であるローレンも、教会の顔であるマリアもこの部屋で会議すること自体は珍しくはない。
しかし今回は緊急とのことで、王からの勅命の手紙まで来ている。
そのただ事ならぬ雰囲気に必然と緊張が走る。
「普段の会議というわけではなさそうですね。この王からの王令、欠席は絶対許さないということですから。」
「マリアにもか、赤紙の王令ってことは国を左右するほどの緊急案件ってか?」
この国で命令書にはその重要性から色によって分けられている。
その中で赤の命令書は最重要の案件として、基本王からの直接の呼び出しである。国が総出となって対応することも視野に入れなければならないこともある。直近でこの赤い王令が交付された時は、魔王が復活したときに重臣たちに配られたとき以来である。
「アルツール王がご到着です!!」
お付きの騎士の声を聞いた二人はすぐにその場から立ち上がり、不動の姿勢で王を迎える。
「良い良い、二人とも楽にせよ。」
静かに、だが重厚感のある声で二人を制した。
この国の王であるアルツールは魔王討伐を勇者パーティーに命じた張本人であり、勇者たちが活躍できるように陰で支えてきた人物でもある。そしてローレンの父親でもある彼は国内外からは賢帝と称され人気のある人物ではあるが、普段は執務室から出ることは最低限であり、人と接することもあまりしない。
そんな王がわざわざ二人を呼び出して本人自らが出てくること。それ自体が今回の呼び出しの重要性を物語っている。
「単刀直入に聞こう。二人は勇者に関する噂は知っているな?」
「アレンの噂?噂ってアレンが人を殺して回ってるって話だろ?そんなわけねーだろ、まさか親父殿はそれを信じてんじゃねーよな?」
父からの予想外の言葉に思わず口を挟んでしまったローレンであるが、アレンを悪く言われている噂に対してはローレンもマリアもよく思っていなかった。そんな中いきなり王から噂の件を持ち出されたのでは、黙っていられなかった。
「私もローレン同様に噂は耳にしています。今回の呼び出しはその噂が事実かの確認ということでしょうか。」
マリアは冷静な眼差しで王を見据えながら、今回の呼び出しの真意を探ろうとした。
「うむ。余も正直なところ最初はどこかのバカ者が流したもの程度に思っていた。しかし、最近になって無視できぬことがあった。」
王は側近に命じて資料を持ってこさせて二人へ配った
紙には老若男女問わず複数人の顔と名前が記載されており、そこには【死亡】を記されていた。それだけではただの死亡者のリストであり、噂と結び付けるには弱いように思えた。しかしローレンとマリアはリストの人物は過去に訪れた町で会ったことがある人ばかりであった。
「おいおい!どういうことだこりゃ」
ダン!!と拳を机に叩きつけるローレンその表情には明らかに怒気が感じられた。
あまりの音の大きさに一瞬会議室が静まりかえった。
一方アルツールはローレンの行動を読んでいたのか、続けて話し始める。
「資料のように殺された人物は皆此度お前たちを助けてくれたものばかり。中には一緒に街の平和を守るために行動を共にした者もいたと聞く、余はこの県は魔族の残党にわざと睨んでいる。そこでローレンとマリアにはその調査を命じる。」
アルツール王は顔を顰め、腕を組み直し今回の呼び出しの目的を話始めた。




