1章−3
「アレンの年齢だと確かに観光もしたことがないでしょうから、イメージが湧かないのも無理からぬことでしょうね。それでしたら、祠の様子でも見てきてくれないでしょうか。」
「祠?祠って確か旅の途中にポツンと立ってたヤツのことか?」
ローレンは、三人で旅していた際に幾度となく見かけた祠を思い浮かべながらマリアに聞いた。
「はい、その通りです。あれは女神様の加護がある由緒ある祠なのは間違いないのですが、実際にいつ頃からあるのかもわかりませんし、加護も他の教会とは一線を画したでしょう?」
祠とは三人が旅をしていた時に、森や湖の真ん中の突如として存在している、石で出来た小さな祠である。しかし小さいながらも、その祠の周辺では魔物が侵入せず、また勇者たちが全滅した際には最後に訪れた祠で、復活をするという通常ではあり得ない加護が付与されたものである。
「あの祠か。確かに何度もお世話になったけどさ、正直不気味なとこあったよな、流石に死んだと思ったら、次に目お開けたら祠の前で生き返ってんだぜ?まあ金が半分無くなくなってるのも訳わからないんだけどさ。結局教会にも祠がいつからあるとかの記録なんてないんだろ?」
「はいそうなんです。女神様の加護が働いているので、害があるとは思いませんけどかなり不思議な力があるのは事実です。そこで、アレンにはその祠を調べてきて欲しいんです。」
「確かにあの祠には何度も助けられたよね!!それを調べれば旅行になるの?」
アレンは少し元気が出たようではあるが、まだ旅行の趣旨が分かっっていないようではある。
真面目にマリアからの依頼を遂行しようとするアレンにローレンが見かねて口を挟んだ。
「そんな調査とか硬っ苦しく考えなくていいって。そしたら、日記みたいにして書いてこいよ!そんで完成したら俺たちにも見せてくれ。教会側もそんな急いで調べようとはしてないんだろ?」
おそらくアレンは調査として真剣に依頼をこなそうとするだろう、そしたら、先の旅行を楽しむこともしないであろうと予測したローレンは日記として記録するように提案した。
ローレンの言葉にマリアは頷きながら答えた
「ええ、いつかはやらなければならないとは思っているようではありますが、まずは復興が先ですからね。その前にちょっとでも情報があればありがたい程度です。もちろん報酬は支払いますよ。ざっと3億マネほど。」
マネとはこの世界の通過である。
「3っ、ちょっと待て待てそれ平民の一生分の稼ぎじゃねーか。そんな金お前の一存でポンと出せねーだろ!!」
「もちろん教会にはこれから説明しに行きます。教皇様もちゃんと話せばわかってくれます。」
教皇はマリアの育ての親であり、温和ではあるが教会のためにはある程度は厳格な人であり、民からの信頼も厚い人物でもある。しかしそんな教皇でもマリアが本気でお願いしたらつい許してしまう子煩悩なところもある人物でもある。マリアが教皇に無茶をいい、それを実行に移す教皇を止める部下たちというのは悪い意味で教会の名物でもある。
ローレンはこの後教会で起こるであろう騒動の想像し、寒気を覚えつつも話を日記のことに戻した。
「とっとにかく、マリアもああ言ってるしやってみたらいいんじゃないか?。。。。。。一応報酬は出るみたいだしよ。」
さてその報酬は本当に正規な教会の予算から降りるかは置いておいたローレンはアレンに改めて旅に出ることを勧めた。
「うんそういうことならやってみるよ!二人に読んで貰うための日記か〜なんか照れちゃうね」
元々素直で優しい性格のアレンである。お願いされたら断れない気質もあり、前向きに考え始めた。
それから三人は祠の回る順番や準備するものを夜通し語りあった。
たまにアレンの心配をしすぎたマリアが暴走し旅について行こうとしたり、ローレンが夜の店の情報を教えようとアレンにこっそり教えようとしてマリアに絞られたりと、そこには歳の離れた弟を見守る兄姉のような微笑ましいやりとりが続いた。
「それじゃあ行ってきます!!」
ある程度話がまとまり準備もできたアレンは城を出発し、城門をくぐり自分がもたらした平和な世界へとその足を踏み出したのだった。
残った二人はアレンを見送った。そして勇者が旅に出てから数ヶ月後、王都である噂が流れてきた。
【勇者が人を殺して回っている。】