1章−2
「この後って今やってるパーティーのことじゃないよな?」
ローレンはアレンの真剣な問いに対して真面目に返答した。
そこには先程まで、説教されて怯えていた子犬のような青年はどこへやら、友人の話を真剣に聞くために床で正座していた状態から、椅子に座り直しアレンの目を見て問う一人の青年がいた。
「うん、魔王ももういないし、多分パーティーは解散になると思う。そうなったら二人はどんなことをするのかなって思ってさ。」
アレンは自前の金髪を指でくるくるしながら話した。そこには本当は聞きたくないが聞かねばならないことに対しての不安が感じられた。
「そうですね。私は元々聖職者の身ですから、再び女神にお使えするだけです。」
マリアもアレンの真剣さを感じ取ったのか、普段の甘やかしは控え、質問に対して真面目に答えた。
「まあ俺も元々はただの王族に戻って普通に古巣の軍で働くんじゃねえかな」
ローレンも既に決まってあった古巣へ復帰することを伝える。
「やっぱり二人はもう決まってるんだよね。」
特に悩む様子もなく、自身の今後にさらっと言える二人に羨望の眼差しを向けつつも、その表情はどことなく暗いように見えた。
アレンのその表情を見てローレンとマリアは心配そうにアレンの顔を覗き込んだ。
確かにローレンもマリアも軍と教会という組織の所属し、帰る場所がある。しかし、勇者とは女神からのお告げを受けてその使命を果たす者。組織のため、人のために戦うローレンとマリアとは魔王討伐のための意味合いは明らかに違う。ましてやアレンは魔物に町を破壊された孤児である。使命を終えた今果たして今後の自分はどうしたらいいのか不安になっているようだった。
「アレンは俺らとは違って何したっていいんだぜ?無理に自分の将来を決める必要はねえって。」
アレンの質問の意図を汲み、既に自分の将来が決まってしまっているローレンは励ますように言う。
「そうですよ、将来が決まっていることが幸福というわけではありません。無理に自分の今後を決めてもそれは絶対にうまくなんて行きませんよ。」
マリアはアレンを励ますように、そして優しく諭すように話す。
二人の言っていることはもっともだと理解しつつも、アレンの表情は暗いままである。
少しの沈黙が流れた中、ローレンがあることを提案した。
「そしたら、自分が平和にした世界でも旅して見てくればいいじゃんよ。観光でもしながらさ!」
「それはいい考えかもしれませんね。魔王を討つために、色々な街を巡りましたけど、それでもゆっくり観光なんてできる状態じゃなかったですからね。」
それはいい考えだと頷くマリア。
王都以外にももちろん様々な場所を巡ってきた一行達である。しかし当時は魔王討伐の真っ只中で観光なんてできるはずもなく、またどの街もトラブルが起きており、それを解決していたりと、ゆっくりと見て回ることなんてできなかった。しかし、平和になった今なら真にアレンが成したことを実感できるのではないかと二人は考えていた。
「旅で観光?ってなにすればいいの?」
アレンはイマイチパッときていないようで、頭をかしげる。
その表情には観光と旅がいまいち結びついていないようであった。
事実、魔王が生まれてきてからというもの遊びで旅行するなんて酔狂なものはほぼいなくなってしまい、大抵は仕事のため、魔物からの襲撃から逃げるためにすることがほとんどであり、魔王が生まれた時とほぼ同じタイミングで生まれたアレンとしてはいまいちピンときていないようだった。
「ああ〜そうか、観光とか旅行って言っても、アレン位の歳だとピンとは来ないもんか!
つまり〜あれだよ!いろんなとこ行って美味しいもの食って、綺麗な景色でも見てこいってことだ。」
そう言いつつローレンも幼い頃に数回行っただけで、具体的になにをするかまではうる覚えではあるが、それでも昔に家族で旅行した時の楽しさを思い出しながら語りかけた。
目的のない、遊びのため旅行にイマイチ反応が悪いアレンの心情を汲み取り、マリアはアレンにあることを提案した。
初めて小説を書いてみようと思って投稿しました、なるべく投稿頻度は空けないようにしたいなと思ってますので、どうか読んでもらえると嬉しいです。