表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/99

ナイトシティは今日も雨

 とりあえず書きはじめてみよう。見切り発車なんて問題じゃない。もうとっくに発車はしているんだ。問題はおれが乗車していないこと。運転手不在で鉄の塊が暴走している。おれが止めなければならないだろう。制御できるとしたらおれだけだろう。それがおれの責任ってやつだ。自信はない。良いアイディアもない。なにもないが、とりあえず書きはじめてみよう。虚ろのトンネルの中、死霊どものヒステリックな笑い声、消え失せろ、貴様ら負け犬には用はない。スタミナだけは人一倍だ。いつまでだって走り続けてやる。ロウ、セコ、サーときて、トップギア。なんて書いているけど、おれは自動車運転免許は持っていない。ただ仮免は持っていたぜ。あれからなにも言われていないから、まだ有効なはず。二十年もの間、仮の免許で孤独なレースを続けてきた。無事故無違反。ゴールド仮免保持者ってわけだ。大丈夫。リバティーシティ、ヴァイスシティ、ロスサントス。運転経験はばっちり。ただ右車線に慣れすぎているかもしれない。実際、教習所で左折時にナチュラルに右車線に入ってしまって、「はーい、ここはアメリカじゃないよー」なんて教官に馬鹿にされた経験を持っている。あの時はかなりイラッときた。超絶ムカついた。気がついたら、教官をボンネットに縛り付けていた。そのまま超スピードで教習所を飛び出し、おれは解放という言葉の意味を知ったのだった。泣き出してしまった教官にはそのあと平謝りに謝った。よほど怖かったのだろう、彼は一瞬のうちに総白髪になっていたのだった。でも恐怖とかで一瞬で白髪ってそんなことって本当にあるの? あるのだからしょうがない。理屈じゃないんだ。しかし、あの時はどうやって教官をボンネットに縛り付けたのか。平板なボンネットにどのようにして? そのやり方をどうにも思い出せない。なにしろ頭に血が昇っていたからね。きっと理屈を超えた方法があったのだろう。


 銃を下ろせ。今ならまだ間に合う。いや間に合うはずがないだろう。無責任にもほどがある。もうやっちまったことはやっちまったこととして、現象として、いまここにある。そしてそれを引き起こしたのがおれであって、間に合うもクソもないわけだが。そもそもおまえが間に合わなかったわけだが。気楽なもんだよな、自分がまったく正しいと信じ込んでいるやつの言葉は。それともお咎めなしでおれを逃がしてくれるって言うのか。銃を下ろしたその瞬間から、おれはまたいつもの生活に戻れるって言うのか。そのまま歩いて自宅に帰れると言うのか。間に合うっていうのはそういうことだ。だがそんなことには絶対にならないことは、おれもおまえも承知している。そんなことは、もうわかりきっている。それでもなお、間に合う、そう言うのか。そういうものを、おれは欺瞞と呼ぶ。ああ、わかる。おまえの気持ちに嘘はないのだろうさ。おまえが言いたいのは、つまりおれはまだ生きていると。そういうことだろう。だがそんなものは間に合うとは言わないのさ。生きているからなんだってんだ。ただ生きていても仕方ないからこういうことになってるのだろうが。そして一発逆転を狙った。失敗した。なにも間に合っちゃいない。なにもかも手遅れなんだ。最初から手遅れだったんだ。おれもおまえも、間に合わせるつもりなどはなかった。だから、もういいだろう。終わらせようぜ。いますぐに。おまえの方だよ、まだ間に合うのは。さっさとやれよ。やっちまってくれ。おれはもう、うんざりなんだ。ここまでして、どうしておれはまだ、生きなければならないのか。おれは下手を打った。だからもう銃は下ろせない。下ろすわけにはいかないんだ。下ろしたが最後、おれは世界に殺される。ゆっくりじっくりいたぶられてなぶられて、死ぬまでクソ野郎どものストレス解消の道具にされちまう。だからおれは銃を下ろさない。死んでも下ろさない。絶対に下ろしはしないんだ。


 もちろんおれは銃など手にしたことはない。人殺しの道具など触りたくもない。だがもしおれが懐に銃を隠し持っていたとしたら、おれの態度はそれなりにでかくなるに違いない。普段よりも心なしか胸を張って闊歩するに違いない。電車の席で大股開いて座るに違いない。あまりおれをみくびるなよ、しまいにゃ撃つぞ。ケツの穴をふたつに増やしてやるぞ。鼻の穴をひとつにまとめてやるぞ。

 言うまでもないが、みっともない態度だ。だがやはりこういう態度のやつはおっかない。それが暴力の力だ。力とはパワー。パワーを根拠にした自信。説得力は抜群だ。

 だからといって暴力に容易く屈するのは懸命な判断とは言えない。連中にこれ以上の自信を与えてはいけない。なにはともあれ、落ち着くことだ。相手をよく観察してみたまえ。やつは自信たっぷり。身体はデカく、顔も怖い。だがその肥大した自信が命取りだったな。自慢の自信が慢心に変わっていることに自分では気づいていないんだな。所詮そんなもんだ。ほとんどのやつが偽物だ。大したことない。やれ。やっちまえ。ケツの穴を何度も何度も繰り返し繰り返し蹴っ飛ばしてやるんだ。二度と激辛ラーメンを食えない身体にしてやれ。もちろんカレーでも可。新宿三丁目のガンジー。あそこのカレーは辛かった。だがなんか知らないが、また食いたくなる。謎のクセになる感は、天一のこってりラーメンとどっこいどっこいだ。しかし天一の値段よ。昔からまあまあ高かったが、いまはチャー定で1300円くらいするから恐ろしい。でもその分ちゃんと従業員に還元しているのかもしれない。そう考えると許しちゃう。


 もう自分でもなにを書いているのか。それでも書かないなんて話にならない。選択肢にも上らない。この問題に関しては選択肢などという上等なものは存在しない。書く? そう尋ねられもしない。一本道のノベルゲーム。そういうのって意外と多い。しかもおもしろいんだから困ったもんだ。シュタゲだって実質そんな感じだもんね。トリガーフォンだっけ? そういう仕掛けはあるにはあるけど、あれは選択肢とは言わんだろう。分岐ともちょっと違う。細かいことは忘れてしまった。アサミンゴスの金属的な声。そうではないと言っとろうが! いいよね。アサミンゴスはボダランのリリスの声も担当しているのだった。やっ! いいよね。

 宮崎駿は声優のなにが嫌なんだろう。頑固なヤツ。ビデオゲームも超絶嫌いらしいね。MSXのナウシカのゲームがその原因という噂があるが、それはなんだかデマくさい。まあオタクってやつが嫌いなんだろう。それはわかる。連中は下品すぎる。ペニスでものを考えすぎる。そのくせなんだか高潔ぶりやがる。文化の担い手ヅラをする。世間にゃ顔向けできんという恥を忘れたオタクは害獣でしかない。身の程を知ってほしい。良心をベースにものを考えてほしい。もう少し違う角度からの視点も持ってほしい。宮崎駿もきっとそう思っている。落ち葉を掃除しながら、そんなことを思っているに違いない。

 すごく適当だ。おれは宮崎駿に関して特別な知識も愛情も持っていない。だけどキャラ立ちは抜群だ。触ってみたくなる。こういうことをすると本気で怒ってきそうな怖さが宮崎駿にはある。もうキャラ立ちっていう言葉からして嫌がりそうだ。それはわかる。実はおれも嫌いだ。なんというか、冒涜を感じる。そんな軽いものじゃないだろう。なんでもかんでも記号化すればいいというものではないだろう。そういう気持ちがおれにはある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ