明るくてとても良い子だったのに
排外的で好戦的。存在しない侵略者と椅子取りゲーム。偏見と妄想と恐怖に支配され、性悪な指揮者にいいように踊らされちまう。貧しいってのは哀しいね。なにをそんなに欲しがっているんだ。あんたの欲しいものは、本当に心から欲しいものなのかい? どうしても諦め切れないほど大切なものなのかい? 隣人を傷つけてまで? そんなに欲しいものって一体なんなんだい? それって本当にあるのかい?
あっちでこっちで幻とダンス。徒党を組んで目を皿にしてSNS。スクロールしてデマゴーグをスプロール。唱える題目ラブ&ピース。荒廃が悪意を呼ぶのか、悪意が荒廃を呼ぶのか。沈殿してゆく老廃物は見て見ぬふりか。繰り返すつもりか100年前の9月1日から。
いい加減にしやがれ。ちったあ鏡を見やがれ。顔の見えないそこのおまえ。自分自身に生まれ変われ。
わかっている。なにも言わないでくれ。わかっているんだ。おれがきみの目にどう映っているのか。きっときみは面倒くさそうに、笑ったような困ったような顔をしている。そんな顔は何度も何度も見てきたよ。おれの心がクチュッとするのは、嘲笑われた時や小馬鹿にされたりした時じゃなくて、そんな顔をされた時なんだ。きみとおれはこんなにも近い場所にいるのに、こんなにも遠く遠く隔たっている。そんな非難がましい目で見ないでくれ。おれが揺れちまう。なぜだか悪いことをしているような気になっちまう。口籠もってそのままなにも言えなくなっちまう。まるでパラライズガンで撃たれたように。その度に思うんだ。おれが本当に戦っているのはきみなんだって。おれが本当に味方につけたいのはきみなのにって。
だからたまにこんな文章を書くよ。理由なんてないよ。書かないわけにはいかないだけだ。いいね、なんて最強にどうでもいいものだと思っていたけど、こんな文章を書いたあと、いいねってやられるとすごく喜んでいるおれがいる。自分でも意外なほど嬉しいおれがいる。なぜかほっとしているおれがいる。それだけだ。それだけが伝えたかった。
そうなんだ。おれにだって、外へと向かったあったかハートはあるんだよ。いっつも自分のことだけを考えているわけじゃない。ただいつの間にか根付いていたバンカラ気質が、そういったものが表出するのを阻止するんだ。気難しい男の皮を被った単純野郎さ。まあこんなことを書いているとわけがわからなくなってくるから、もうやめにしておこうと思う。湿った空気はおれの身体に障るんでね。クチュクチュしてたってしょうがない。とは言っても、今日はコンピューターに向かい合った瞬間からどうにも拭えない違和感が。目の前のこいつになにかを注ぎ込もうと四苦八苦しているんだけど、感触が軽いというか、骨がスカスカというか、見た目ほどの重さのないダンベルに拍子抜けというかね。そいつは良い兆候だぜ、阿部ちゃん。こんなコンディションの方が後で見返した時にまあまあな文章なことが多いんだ。でもおれはいま気持ちよくなりたいんだよ。水中でもがくような気分で文章を書きたくないよ。それでも急がないといけない理由がある。だってもう2時半だ。おれの文章を楽しみにしている人たちは午前3時の住人がほとんどなんだよ。まあおれが勝手にそう思い込んでいるだけなんだが、午前3時の仲間たちをがっかりさせたくない。よって、おれの締め切りは午前3時台なんだ。知らなかっただろう。
でも良くないね。他者の目を意識して文章を書くことは、おれには向いてないことを嫌ってほど痛感したじゃないか。それはそうなんだけど、完全に他者の目を意識しないって難しいよ。これは欲なのか、なんなのか。おれは欲しがっているのか、そういうことなのか。否定したいし、否定してもいいのだが、きっぱりと否定できるほどの自信がないおれにがっかりだよ。そうこうしているうちに時計は進むんだ。待ってくれ、おれを置いていかないでくれ。いまさら焦ってどうするね。なにも湧き起こってこないんだろう。文章を書いてどうするね。書き終わったら逃げるようにここから立ち去るんだろう。無駄なことに掛ける情熱。シャワーを浴びたい。でも服を脱ぐのが面倒くさい。髪を乾かすのが面倒くさい。でも頭がそろそろ痒くなってきた。どうして外に出ていないのに、おれの身体は穢れてしまうのだろうか。代謝を止める方法はないのだろうか。こんなに面倒なことって他にあるか。おれは風呂が嫌いだ。
それでも3日で限界だ。そのくらいになると不快が面倒を上回る。誤解してくれるな。外に出る、人に会う、そんなときは新品同様にピカピカにしますよ。だって汚いとか臭いとか、他人にそう思われるのって恐怖以外のなにものでもないじゃないか。たまに明らかに長いこと風呂に入っていないやつっているけど、ああいう連中にはそういう恐怖がないのだろうか。黒いTシャツから塩が吹いていることに対してなんの感慨もないのだろうか。とにかく色々なやつがいるものだ。おれはそういう世界で生きているという当たり前のことを力強く書く!
感嘆符をつければ力強い文章になるってわけでもないんだが、それでもなんとなく急に読んでいるひとをびっくりさせたくなったんだよ。予想外のことを起こしてやろうって原動力は大体それだ。他人の目を意識……うるさいよ。そんなことを言っている場合じゃないでしょう。だってもう3時を回っちまった。まったくなんてこったい。時間よ止まれ。サブタンかファウストか。どちらかというとサブタンです。でもどっちも未読です。情報として知っているだけ。おれは情報を食って生きているのです。体験のすべては情報として処理されます。情報は有益かどうか精査され、無益と判断された情報は容赦なくオブリヴィオンゲートの彼方に投げうたれます。残酷な神が支配するこの情報帝国の非道なやり方に背を向けたのがおれです。おれなんです。おれは地下に潜りました。時代と時代の間に落ちたまま、忘れ去られた情報たちを解放しなければいけないと思ったのです。どうしてそう思ったのかは今となってはわからないです。おれはあっさりと帝国に捕まり、再教育を施されたのです。いまの唯一の楽しみは大河ドラマを観ることです。それなのにいつも観るのを忘れてしまって、まだ一度も大河ドラマを観ることに成功していないのです。大河ドラマって何曜日の何時にやっているんですか。これは情報不足でした。面目ありません。吉高由里子さんの魅力はなんてったって、声です。最近ようやく名前を覚えました。再教育の賜物です。ああいう声の女性が、おれは好きっちゃ! だから藤田ニコルさんも好きなんです。最近ようやく名前を知りました。再教育の賜物です。ああいう声ってなんと言うのでしょうか。ハスキーヴォイス……っていうのもなにか違う気がするのです。それはそれとして、今日も今日とて情報です。質の良い情報のシャワーを全身で浴びる前に、お湯のシャワーを全身で浴びようと思っています。身を清めないと情報に失礼だからです。再教育の賜物です。良質の情報を蓄積すればするほど、しょうもない悩みとは無縁になり、人生は素敵なものへと変貌します。政治と宗教の話はいけません。思想的な話もいけません。野球の話は大丈夫です。あとは大河ドラマですね、なんといっても。吉高由里子さんは一重まぶたなところも良いですね。一重まぶたの女性が、おれは好きっちゃ!




