風がうるさくて聞こえないよ
フェイクライフ。ランダム生成のダンジョンに延々と潜っていれば、浮世のあれこれとは無縁でいることができるわけだけど、やっぱりたまには太陽を拝みたくなるし、新鮮な空気を吸いたくもなるよ。でもそんなことが心地よく感じるのも一瞬だけ。ありがたみなんてものが長続きしたためしがない。結局のところ完全に失うか、それに近いことを長いこと経験してみないと、いまの自分の幸せなんて実感できやしない。なにもかもが最低限揃った生活。こんな良い生活ができるなんて想像していなかったから、その点では満足ではある。大満足。もちろんこれ以上を得ることができるなら、遠慮なくいただくけれど、そのことだけにフォーカスして生きる気にはとてもなれない。だっておれはいまの生活に満足している。自分が無能なやつだとは思わないが、自分の能力はこの望外なほど良い生活にあまり反映していない。たまたまだ。ほとんどが運だ。あまりにも出来すぎだ。おれのような男がいったいなぜ。なにかに生かされているような気がする。なんてスピ臭いことを思うときだってあるさ。なぜおれがいまこんな状況に陥っているのかわからない。こんな生活は嘘っぱちだ。困窮してなきゃおれじゃない。惨めで劣悪な環境の中で精神がかき乱されていなければ調子が出ない。おれは眠たい。なんだかとても眠いんだ。聞いてくれ。こんなはずではなかったんだ。でもこうなった。おれができることなんてなにもありゃしないよ。
漠とした部屋はおれの中にあり、まるで整理されていないその様から、おれの混乱が見て取れるというものだ。寂寥の荒野を歩めば、物言わぬ幽霊たちとすれ違う。おい勘弁してくれよ! こんな一文、おそらく何万という人間が書いたに違いない。なんて陳腐な表現だろう。物言わぬ幽霊ってところで、おれはあまりの酷さにゾッとした。もう少し頭を使って文章を書かなければ。眠いだなんて甘えたことを言っている場合ではない。最近のおれは隙あらばこの文章を小説にしてしまおうと画策しているのだけど、それにしたって物言わぬ幽霊とはね。いやはや! おれのイメージする小説が、寂寥の荒野を歩めば、物言わぬ幽霊たちとすれ違う……なんていう一節が入っているものなのだとしたら、おれは小説などを書こうとするべきじゃない。だってあまりにもわざとらしくて嘘くさい。一人称オイラでロックンロールの詩を書くようなものだ。そんなことが許されるのはルースターズの時代までだ。物言わぬ幽霊が許されたのはいつの時代までだ? わからないね。もしかしたらいまでも許されるのかもしれない。でもおれは許さないよ。おれがそんなことを書くことを、おれは許したくない。
小説はどこまでいっても作り物です。それはそう。もちろんそう。だけどおれの中に存在しない言葉を使いたくはない。本当は自分が書くことのできない漢字も使いたくないんだ。けどそこまですると、平仮名ばかりになっちまうから、その辺は適当に。おれが考えるのはこんなことばかりで、物を語るということに興味を示さない。つまり物言わぬ幽霊ってのは、おれのことだったんじゃないか?
下らない。あまりにも下らない。おれがよくやる強引なオチのつけかた。こういうのをもう少し綿密にやると見事な伏線回収なんて褒められちまうんだろう。下らない。とても下らない。オチとかいう概念自体にクソ興味ない。逆算パズルみたいなものだ。パーツとパーツ、これは形が合うかな? なんてさ。おれが書いた小説のようなものも、螺旋状の少年も、行き当たりばったり、先のことなんてなにも考えていない。きっと本当は書くことなんてどうでもいいんだ。いや、どうでもよくはないぞ。今日はたまたま変なところに迷い込んでしまったけれど、書くという行為におれが魅せられているのは確かだろう。そうじゃなきゃこんなに文章を書き続けやしないよ。ところで逆算パズルってなんだ? 知らないよ。なんとなく浮かんだ言葉だ。なんとなくでイメージしてくれよ。ああ、こういうことが言いたいんだなって雰囲気でわかってくれればいいんだよ、こっちは。厳密に意味を考えても仕方のないことってあるよ。思いつきのなんとなくってそういうものなんだ。こういうなんとなくなところに言語センスって出るんだよ。逆算パズル。なんかいいだろう。なにかを表しているって感じがするだろう。でもたぶんそんなもの存在しないよ。おれが咄嗟に思いついた言葉だから。もしあったらごめんね。でも多分ないと思う。いままで聞いたことないからね、逆算パズルなんて言葉は。最近のおれの書く文章は、書き進めるほど口語調になってゆくことに気づいているだろうか。スタミナがないんだよ。落ち着いた文章を書き続けるスタミナが。どうしてもビートが大雑把になってしまう。おれは作り込むということができない。それがおれの弱点だ。でもそんなことはもう気にしてもいないよ。むしろ長所なのかもしれない、なんて考える都合の良いおれさ。だってAIは疲れないだろう。リズムキープの鬼だろう。人間ならではの不確かさ。それこそがAIに打ち勝つ鍵だと思っているよ。
そうだ。おれのダイヤグラムの歪さはそのままでいい。いや、更に歪になってほしいくらいだ。だから苦手なことを克服しようなんて思わない。興味のないことに挑戦しようなんてことも。ああそうだ。おれはイカレ野郎だぜ。差別を扇動するようなやつには躊躇なく文句をつけにゆくし、ここで悪口だって書くぜ。それが嫌ならそれで構わんさ。ふん。ブクマが外れたもんでね。そんなことは別にどうでもいいんだが、攻撃的な阿部千代よりヘイト野郎を支持するよって言われたような気がして、すごく嫌な気分だぜ。あのな。おれ以外にそういうことをするヤツがいるんなら、なにもおれだってそんな面倒なことはしたくないよ。でも差別と親和性の高いヘイトスピーチの定義すら知らないヤツは、その通りです、日本に迎合しない外人どもは出て行って欲しいですよね、なんて言ってさ。積極的に支持を表明したり評価ぶちこんだりするけど、そうじゃないヤツって基本無反応じゃない。ここ、小説家になろうにおいてはね。やっぱり誰かは、そういうのは許しませんよってところを見せておかないと、あんな言説がまっとうな意見だと純情な少年少女が信じてしまったら大変じゃないですか。そうは思いませんか。おれだって好き好んでヘイト野郎と絡みたいわけじゃないよ。つうかまったく絡みたくなんてねえよ。嫌だよ。憎たらしいことばっかり言うんだから、ああいう連中は。普通にムカつくんだからな。おれのイメージだって悪くなるだろうし、いいことなんてなにもないんだよ。あの白い鳥さんだっけ? ああいう人がやって欲しいよね。好きでしょう、クレームつけるの。でも言っちゃ悪いけど、超どうでもいいことにしか怒らないからね、あの人。まあ、あの人がどういう考えの人か知らないけどさ。ああいう人だよ。おれみたいな単細胞じゃなくて。データキャラみたいな人。そういう人に特攻んでもらいたいよね。まあでもそういう人って大体アレだからな。アレなんですよ。ああいう人でアレじゃない人ってあんまりいないよね。マジでみんな狂ってるよって思うんですけどね、おれは。安倍晋三と百田尚樹、その他ビジネス右翼の連中の罪は重いね。そりゃ国家のトップが長年ヘイト垂れ流してたら、こうなりますわね。結局、今日もこんな話をしちまったよ。なんか誤解を解こうとして、さらに泥沼化しているような気がするけど、もういいわ。どうでもいいっすよ。嫌うなり嗤うなりご勝手にどうぞ。ベー。




