狂った果実
差別主義者の日本人死ね! クルド人はこんなこと言ってないけど、おれは言うわ。差別主義者の日本人は死ね! くたばれ! いいだろう? おれは一般日本人なんだから。われわれ日本人の国なんだろう? 日本は。で、日本の文化、しきたりってなんだよ。おれは日本人だけどそんなもん思いつかないぞ。強者には迎合しろとかそんな感じか? 蕨、川口のすぐ近くに住んでいるし、よくハッピーケバブにも飯食いに行くけど、一般日本人であるおれはクルド人の迷惑行為を見たこともないし、我慢をしたこともないが。だいたいが、あの動画で起こっていたことって、ヘイトデモに対するカウンターだからね。日の丸の旗を振りかざした外国人排斥主義者が蕨に煽りに来たからそれに抗議してたわけよ。わかりますか? で、あそこでブーイングしていたのは当事者のクルド人より日本人の方が圧倒的に多かったわけなんだけど、さもクルド人だけが騒いでいるように動画を撮っているのが本当にズルいし、印象操作以外のなにものでもないよね。実際におれも蕨にいて中指立てていたからよくわかりますよ。
労働力っていう美味しいところだけ外国籍の人たちからもらって、金はなるべくあげたくありません、人権も尊重しません、子どもは作らないでね、働き終わったらさっさと国に帰れ(一応言っておくけど、クルド人の方々がこうやって日本にきたって言っているわけじゃないからね)なんてことをしているインケツ国家の味方をするくらいなら、おれは外国籍の人たちの味方をするよ。一般日本人が外国人に我慢をしているだと? ネットしかしてないからそんなことを思うんだろう。実際は変なことをしたら、インケツどもになにされるかわかったもんじゃないから、差別されようが、不当な扱いを受けようが、外国籍の人たちは我慢しているんだよ。それくらいわかれよ。想像してみろよ。小説書いてるんだろう? 一般日本人って何様なの? 特権階級なの? その割にはおれらの生活ラクにならんなあ。
一方で日本で生まれたクルド人の若者が非行にはしっているって事実はありますよ。そりゃグレるっしょ。日本人だってグレる若者はいっぱいいるのに、自分のアイデンティティも定まらず、理不尽な差別に晒され続けるんですよ。グレるなって言う方が無理な話だとは思わないですかね。ヘイトスピーチするヤツをまっとうだとか、クルド人は迷惑だとか、外国人は日本に迎合しろとか主張なさる前に、なぜこうなっているのか考えて頂けませんかね。あなたが真面目で善良な方だということは重々理解しております。悪意に基づいた冷笑嘲笑系の差別主義者ではないことも。でも一緒なんです。悪意があろうがなかろうが、差別は差別ですし、ヘイトスピーチはヘイトスピーチ、人権侵害は人権侵害なんですよ、中将どの。
そんな感じのことがあったわけだけど、おれは別に怒っていない。イラついてもいない。日本に住んでいたら当たり前にある風景。誰かがどこかで犬笛を吹くと必ず表れる風物詩と言ってもいいだろう。ただ反抗はする。直接文句は言わせてもらう。到底納得のゆくことではないから。実生活の中でも、波風立つのが大嫌いな連中はこんなおれの態度をすごく嫌がるけど、おれは気にしない。虐めを見て見ぬフリするようなダサい真似をするくらいなら、進んで厄介者になりましょうとも。おれはあんたらのように、骨の髄まで差別に冒されているわけではないので。綺麗事ばかり抜かして、いざって時には足が竦んじまう臆病者ではないのでね。そんな感じで、ピーッ、前半終了。
よし、遊ぼう。未来に向かってキックオフだ。インケツ野郎にはファックオフだ。本を売るならブックオフだ。おれは滅多に本を売らないが、いまの部屋に引っ越す時にごっそりと、もう二度と読まないだろうと思うマンガや書籍を売り払った。特にマンガは厳しめに精査した。悩むくらいなら売る方に突っ込んだ。結果、萩尾望都のポーの一族と諸星大二郎のマンガしか残らなかった。あ、キャプテンとプレイボール、あしたのジョー、はだしのゲンも残ってるわ。
全部で7万くらいにはなっただろうか。元がいくらだったかは考えたくもない。ああ、こんなに小さくなっちまって……って感じだ。いまやそれも過去の話。過ぎ去りし日々をいちいち振り返っても仕方ないのだけど、ふとした瞬間に振り返ってしまうのが人間というもの。色々なことがありました。色々なことがありすぎて、もうほとんど覚えてないよ。おれの記憶はあまりにも劣化が早く進み、懐かしいというより、もはや別世界の話。
若かりし頃、アイアンクロスのごっついネックレスを首から下げていた頃がある。ある日、飲み屋で見知らぬ白人男性に、おまえはナチなのか? そう問い質された。その時は反抗した。喧嘩になりかけた。家に帰ってから考えてみた。本屋に行って、ヒトラー時代のデザインという本を買った。ハーケンクロイツだけがナチスのシンボルではないことを知った。それ以来、二度とそのネックレスを掛けることはなかった。そんなみっともない話だけが生々しい記憶として残っている。そんなみっともない記憶だけが、いまのおれを作っている。なにが正しくてなにが間違っているかなんてわからない。あの時、なにも考えずにあのネックレスを掛け続けていたとしても、いまのおれと大きな違いはなかったのかもしれない。それでも、それでもだ。みっともなさに気づくことができたいまの自分を、おれは気に入っているんだ。そして、あの時おれに絡んでくれたあの野郎のことを、おれは恩人だと思っているんだ。
へへ、おれはこういうビターでナルシシズムのかたまりみたいな文章も書いちゃうんだぜ。さすがにちょっと恥ずかしくなってしまったけど、いいんだ。きみだけには読ませてあげる。みんなには内緒だよ。
それにしても困ったよ。困った困ったこまどり姉妹。だって明らかに文章を一度締めくくってるからね。これ以上なにを書けって言うんだよ。いきなりマジになるもんだから、焦るよね。おれが一番焦るんだよ。書きながら、おいおい、マジかよ、このトーンで続けるのかよ、どうしたんだ阿部ちゃん。そう思っているからね。やっぱり引っ張られるよな。どうしたってそういう話題に引っ張られてしまう。まあそれもいいだろう。螺旋状の少年だから。くるくる回って踊るのさ。ゼンマイ仕掛けのオモチャみたいに。きりり、きりり、ねじを巻かれたオモチャのように。身体の中も螺旋で巻かれて、引っ張られて、勢いつけて、くるくると。口もぺらぺらよく動くよ。真偽合わせて煙に巻くのさ。なぜ急にポエミーになったのかって言ったら、書くことがないから、適当に書いているだけなんだ。だって一度マジになってしまったんだ。もう有耶無耶にするしかないじゃないか。螺旋状の少年は恥ずかしがり屋の妖精なんだ。本当は意味のあることなんて書きたくないんだ。だけどたまに書いてしまうよ。なぜだろう。考えたってわからない。だから誤魔化すしかないだろう。はっきり言うぜ。ここまできたらもうおれは適当に適当を重ねるだけだから、読んだって意味ないよ。ただただこんな調子で、くるくる踊り続けるだけだよ。またこういうのだったらいくらでも書くことができるんだ。だってほとんどなにも考えていないからね。文字が繋がって進めばそれでいいんだ。それだけでいいんだ。今日も読んでくれてありがとう。いい夢を。




