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もんもん

 どうしてまだ生きなければならないのか。やりたくないことをやらされ続けたのがほとんどすべての人類の歴史だとすれば、ここ最近のそれは、徐々にやりたいことをやって生きていけるようになったと言えるのだけど、そうなると見えてくるのが、自分という存在の空虚さ、生きることそれ自体の無意味さ、摂取し続けること消費し続けること、そして飽きがくること、飢えがくること。

 もし、人類が人類全体のためにAIを適切に運用してくれるのであれば、大量の余暇時間が大量の人間に配られることになる。そんな時代がくることをおれは願ってやまないし、そんな時代がもうすぐくるのではないかと実感しているのだけど、それをディストピアだと思うやつら、勤労こそが美徳だと信じているやつら、奴隷であることを誇りに思っているやつら、そんなやつらがそういった時代の到来をめちゃくちゃ邪魔してきそうだ。寝そべり族、最高じゃないか。競争、労働なんてしたくないって非常に真っ当な精神だし、実際仕事のための仕事が溢れているいまの状況が狂っているだけだ。やることがないなら、なにもやらなくていいじゃないか。こっちはちゃんと奴隷やっているのに、怠けて奴隷をやらないなんてズルい。そんな卑しい考えを持っているやつがいないなんてことは言わせやしない。あんたらは周りを見渡す前に、自分の心の声をちゃんと聞いた方がいい。労働が好きなのか? 好きなら勝手にしろよ。もし好きじゃないなら、労働を減らしていこうって考えのやつらの足を引っ張るべきじゃない。

 必要な労働は確かにある。そんな労働に従事するのはやぶさかじゃない。ただ、本当にこの労働は必要なのか? そういうことをそろそろ考えた方がいい。万博って本当に必要? そう考えるのと同じレベルで。不必要な労働をすることで、誰が喜んでいるのか。不毛な労働に従事するより、その喜んでいるやつを引きずりおろす方が幸せの近道じゃないか? なんて書くと、反日パヨク決定だもんな。別にそれでもいいですよ。それでもいいけど、あんたら左翼アレルギー強すぎ。党派性だけでものごとを見るやつって社会にとっての害でしかないんだけどね。そんなくだらないこと考えているよりも、無駄に働かないでも普通に暮らせる方がよくないですかね。おれは週5日も働きたくないんだけど、あんたはどうよ?


 いまはただAI様に期待だね。おれを労働から解放してくれ。ブルシットジョブを駆逐してくれ。経済サイコパスどもを足腰が立たなくなるまでボコしてくれ。あとは絵を描くなり、小説を書くなりご自由に。おれはきみたちが書けないような文章を追求してゆくだけだ。こっちには生身の不合理さって武器がある。パラメータ化できない世界へとアクセスするパスは尻のポケットにいつでも差してある。要約できないもの。抽象化を拒むもの。言葉では語り得ないもの。そんなようなものを力業で言葉に変換してやるんだよ。おれは文学っていう発酵しきった巨大なクソの周囲を飛びまわる小バエだよ。いつか巨大なクソに卵を産みつけてやりたいね。それはきっと遠い未来の話ではないはずだ。そろそろ勇気を出して、自分は小説家だと力いっぱい宣言してもいい頃合いなのかもしれない。なに、おれひとりが勝手に小説家になったって情勢に影響は出やしないさ。大丈夫。不安にならないで。決してあなたの商売の邪魔はしないよ。不干渉を約束しよう。そもそも不感症の人々には興味がないんだからね。だから安心して。泣かないで。あなたはひとりじゃない。おれはひとりで歩いてゆくんだ。誰にもついてきて欲しくない。集団の中にいると息がつまる。挨拶しているだけで一日が終わっちまう。それなら荒野でひとり、こうやって火を焚いている方がマシなんだ。火の揺らぎを見つめながら独り言を漏らしていた方がね。


 実を言うと今日は熱があるんだ。滅多に外にでないヤツも風邪くらいひくんだよ。これが風邪なのかどうかもわからないけど。じゃあなんだって言うんだ。おれは、わからない、そう言ったはずだ。二度も言わすなよ。いいか、もう一度言うぞ。おれは、わからない、そう言ったはずだぞ。三度も言わすなって。

 考えてみてほしい。これは文字数稼ぎなのか否か。例えば、名作と謳われている小説にこんな描写があったとしたら、きみはどう思う? なにか狙いがあってのことなのだろう、そんな風に思いやしないだろうか。そんな風に思ってしまう時点で、なんらかの罠に嵌まってしまっていると言えやしないだろうか。小説家ってやつらは意地悪だ。こういう意地悪を小説中に散りばめている。だからたまに小説を読み続けることがとんでもなく馬鹿らしく感じてしまうし、こんな罠に嵌まりたいからこそ小説を読み始めることだってあるってことだよ。おれが言いたいのは。小説なんて、なんでもアリなんだ。なんでもイキなんだ。本来は編集者なんて不必要な存在なんだよ。小説にとって連中は障害物以外の何者でもない。でも連中にだって家族がいる。友人もいれば、上司だっているだろうさ。だからと言って、やつらに媚びを売る必要なんてあるわけがない。おれは自分の書いた文章にダメ出しされるのが、心の底から嫌いだ。一旦書き終わったものを更に良くしたいなんて気はさらさらないね。そんなにこの文章が気に入らないなら、おまえが直せよ。おまえにこの文章をやるから、好きなようにいじくりまわせばいいじゃないか。おれは書くのが仕事なんだ。おれが書き終わったと判断した時点でおれの仕事は終わりなんだよ。その後は知らない。それでもまだ仕事が足りないと言うのならば、それはおまえの仕事だ。ちゃんと仕事しろ。働け。おれはしっかりと働いた。いつもどおりのいい仕事だった。おれの仕事ぶりにおれは満足しているんだ。その満足に水を差す貴様はおれの敵だ。気分を害した! 失敬させてもらうよ。


 ごめんごめん。いつの間にか小説家になってた。でもおれは小説家だって思い込むってのも悪くないかもしれない。気分としては相当いいね。いままで自称小説家どもはくたばりやがれとか言っちゃってごめんね。これからはおれも小説家になったりならなかったりするから。一緒に頑張ろうね。だっておれたち宇宙船地球号の乗組員じゃないか。最近めっきり聞かなくなったね、宇宙船地球号。宇宙船だからなんだってんだよな。火の鳥・宇宙編読んだことないのかよ。密閉空間である宇宙船の中で不和になって疑り合い殺し合いなんて未来じゃよくあることですよ。下手したらコンピュータがとち狂って反乱を起こすからね。あれは確か2001年の出来事だったか。未来は過去になり、過去は未来になってゆくんだよ。宇宙って当たり前にそういうところだから。すべてが螺旋状になっているから。DNAの形状だってそうだろう。あれは二重螺旋だから凄いよね。つまり宇宙って入れ子構造だってことを示唆しているってことだからね。示唆しているってことだからね、なんて当たり前のように言っているけど、適当な出鱈目だってことくらいは理解しているよね。大体において、おれが宇宙がどうのとか言い出したら、それはもう限界だって合図なんだ。なにもかもを有耶無耶にして意識を宇宙に飛ばすのさ。まさかいまだにアカシックレコードをヴァイナルだと思っているやつはいないだろうな。螺旋状なんだよ。すべてが。つまり螺旋状の少年はスターチャイルドだってこと。

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