表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/99

不可抗力のパラライズ

 おれは軽薄なやつではないけれど、かなり軽率に自分の考えを文章として吐き出しているのではないか。でもそれこそを期待しているおれもいるし、おれの役割なのかもしれないと自分勝手に納得して、前に進むことにする。

 今日はこんなことがあった、あんなことがあった、大人になってからもいちいちこういった報告をしてくる人間がいるけれど、その人はきっと、物心がついた頃からしっかりと自分の話を聞いてくれる人間が側にいたのだろうなと思う。そしてそれはおそらくとても幸せなことなのだろう、とも。

 子どものころ、おれは父親とふたりで暮らしていたわけだけど、父親はおれの分身だから、まあ時系列で言うと逆なんだけどそれはそれとして、自分の興味のあることにしか目をくれない大人だったので、子どもであるおれの発する言葉なんかにはてんで耳を貸しやしなかった。おそらくおれもかなり早い段階でそれを理解し、自分を話題の中心として彼と話すことはしないようにしていて、そこに疑問や不満を持つこともなかった。だからなのか? おれは自分にどのようなことが起こったのか、そのときおれはどう思ったのか、みたいな話が魅力的だとはどうしても思えない。

 だからなんだって話だ。なにかおれの核心に迫るような予感があって書き進めてみたけど、結論としては、だからなんだ、というところに落ち着いた。いやしかしこの、だからなんだ、が悪さをしているのではないだろうか? なにを言っているんだ。いやだからその、自分自身へのその、なにを言っているんだ、という言葉、それがボトルネックとなっていて、おれの文章がなんだかなにかに阻害されているような、どこか他人事のような、糞詰まりのような気分で進んでゆくことになっているのではないか、というところでこの文章を断つ!


 だからなんだって話だ。過去を省みて自己分析を試みたとて、それがなんになる。おれは心理学者でもないし、カウンセラーでもないの。なにがおれの核心だ。はっきり聞き取れる寝言ほど気味の悪いものはないんだよ。自分のことなど、文章の上ではどうでもいいことだ。玉砕覚悟で突っ込むだけだ。なんて威勢だけはよくても、どのような文章を書こうとしているのか、具体的なビジョンは用意していないのであった。用意しようにも無いものは提示できないのさ。要因があって結果があるなんてことは、後から好きなだけ言いたい放題なのさ。今このときをどう切り抜けようかなどと、悠長に考えている暇などはないの。反応速度でなんとかするんだよ。反射神経でなんとか返すんだよ。そこに思考を差し挟む余地などはありゃせんのよ。テーブルテニスのラリーのように。言葉を打って、打ち返して、打って、打ち返す。前陣速攻同士のバチバチの打ち合いよ。おそろしいスピードで言葉が跳ねて、弾け飛ぶ。

 そして唐突に話は飛ぶが、おれはラノベってやつを読んだことがないのだが、おもしろいのかな。興味がないわけではない。見下しているわけでもない。いや昔は見下していたけど、いまはそんなことない。なろう小説と呼ばれているものとラノベって同じもの? 違うもの? よくわからないね。なろう小説ってやつは、正直おれにはキツい。何度かここのランキング上位のものを読んでみようとチャレンジはしてみたけど、ちょっと無理でした。音楽でいうとビジュアル系バンドがどうしても耳が受け付けてくれないのと一緒の感じ。うへえってなっちゃう。ただまあ、あれが小説ではないなんてことは言いませんよ。これが小説なんだと言われたら、ハァ? ってなるけどね。これが、じゃなくて、これも、だろう。これも小説だろう。言っていることわかるかな。文章上で言っているって書くとき、おれはいつも迷っているという知られざる事実。つまり、言っていることわかるかな、と書くのではなくて、書いていることわかるかな、そう書いた方がいいのかなって迷うということなんだけど、通じていますか。……返事がない。あるわけがない。だってこれは会話ではないから。文章だから。


 振り切ったか? ろくなことにならなさそうなことを書いている自分に気づくと、前置きなしで個人的な感覚について書いて、とんずらするという文章テクニック。このテクを使えるやつはそう多くない。なぜなら、読者が混乱するから。パニックを起こして、不安になってしまうから。周りの人間の全員が自分を白い目で見ているような気になってしまうから。動悸が尋常じゃないくらい速くなり、呼吸が苦しくなり、その場にへたり込んでしまうから。しくしく泣き出してしまうから。モルダー、あなた疲れているのよ。そうなんだよ。みんな疲れ切っている。それでもへたり込んだままではいられない。立ち上がらなければいけない。そんなことは自分自身が一番わかっている。だから苦しく、辛いんだ。言うことを聞かないんだ。身体が、精神が。制御不能、制御不能、制御不能。もうやめてくれ。勘弁してくれ。あなた、疲れているのよ。うるせえ! だからなんだってんだ。疲れていないやつなんて存在しているのか? みんな疲れている。疲れ切っている。いまさら、疲れているのよ、なんて言われたってどうにもならないんだよ。カウンセリングなんかクソの役に立ちやしないぜ。話せ、話せと、自分のことを話せと促してきやがって、嫌だっつってんのに、そんな下らないこと話したくねえっつってんのに、てめえは何様だ? 促すだけ促して、結局はこっちに全部返してくるんだろう。そっちのやり口はお見通しなんだよ。結局は、否定をしない、口を挟まない、ただそれだけだろう。おまえらのテクニックは。モルダー、あなた……本当に疲れているみたいよ? だまれ、だまれ! 脳まで梅毒につかった売女が。いますぐに消えろ、消え失せろ。みんな疲れている。あまりにも疲れてしまっている。疲弊した社会構造、腐敗した権力構造。そいつを根本から治療しなければ。だからこそ、革命だ! ビバ・ラ・レヴォリューションだ! おい、ゲバラのTシャツを着ているヤツを今すぐ全員連れてこい。革命だ! ウキウキわくわくの暴力革命だ! 腐った連中の×××に梅毒を注射してやろう。鼻持ちならん連中の鼻をもぎ取ってやろう。その鼻でネックレスを作るんだ。干し首ってあれどうやって作るの? 頭蓋骨は抜くんだよね、もちろん。で、干せばいいのかな。天日干しでいいのかな? それであんなにちっちゃくなっちゃうの? 人体って不思議。


 それでラノベなんだけど、ブギーポップっておもしろいのかな。すこし興味あるんだけど、まだ売ってるのかな。でもちょっと買うの恥ずかしいね。そんなときのための、はいAmazon。楽天市場ってなんであんなにダサいんだろう。絶対にあそこでは買い物したくないわ。なんか暴力的だよね。情報の詰め込み方とか、チカチカしてるバナーとか。なんとなくパ・リーグの球場のネット裏広告? って言うのかな。野球中継で、ピッチャー……投げました! の時に映る広告。あれも同じダサさだね。西武ドームとか、いやもうネーミングライツやってる球場は名前わからないから西武ドームで通すよ、仙台球場とかさ。

 どうよ、この文章のとっちらかり具合。解読しなくていいからね。嫌がらせに近いから。で、話は続いて、楽天市場のセンスってあれだよね、ドンキに近いよね。おれ嫌いなんだよ、ドンキ。あとはカルディとか、ヴィレッジヴァンガードとか。目にうるさい店たち。シュプレヒコール! 圧縮陳列断固反対! 商品ひとつひとつに真心と愛情を! 圧縮陳列断固反対! わかりやすい動線と広い通路を! 圧縮陳列断固反対! 売り場にゆとりと安らぎを! お疲れさまでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ