荒磯に波
さあて、今日も作家ごっこを始めるか。おれがおれに依頼した連載文章、螺旋状の少年はお陰様で大好評。精神的前作にあたる、夜尿症の少年の成功はフロックではなかったことを現在進行形で証明し続けている格好である。
寡作で有名だった伝説の男、阿部千代の執筆魂が突如スパークした2023年10月中頃からの目覚ましい躍進は、吹きすさぶ南西風に立ち騒ぐ海の大波が、高く切り立つ断崖に打ち寄せ、海に突き出た巌に砕けて鳴り響くよう。そのまま東映マークが出てきてもおかしくない勢いだ。
そんなただいまノリノリの阿部千代クンの魅力は、なんてったって投げやりなところ。レイジーなルーザーが着地点など知らねえよとばかりに、吐き捨てる刺激的ときに意味不明な言葉の数々は、とかく暗い話題に陥りがちなインケツ令和ニッポンの雰囲気と見事にガッチャンコ。と同時に、差別、とりわけ民族差別や人種差別を徹底的に嫌う意外な一面も人気のヒミツか。急激にクソつまらなくなりつつある若者の街、渋谷を闊歩するお洒落に敏感な女のコたちからの支持が集まっているってウワサも、う~ん納得ってワケ。射々丸は今後も阿部千代クンの動向を注視していくつもりである。
俯瞰して見てみると、当たり前のように人間の世界ってカオスだ。埼玉の山奥ではヤクザ数人が死体を埋めていて、そこから数十km離れたこの部屋では、おれがこんな文章を書いている。おれの部屋から17kmほど離れたラブホテルに、べろべろに酔っ払った男が、若くてかわいい女ふたりの肩を抱いて入っていった。そういう出来事が、同時に起こったり起こらなかったりしている。おれには本当にもうよくわからない。確かに一度もわかった気になったことはないけれど、わからなさ具合で言えばいまが最高潮。今シーズン最高のわからなさ。近年稀に見るわからなさだ。ここまでわからないことだらけだと、反対にすべてがわかったような気になってくるから不思議だけど、それはただの勘違いか、もしくはなにも考えたくなくなっているだけだ。
それにしたってわからない。女の子ふたりに男ひとりだぞ。正直に言えば、そのときおれはひとりの女性と一緒にまさにその建物に入らんとす、という感じだったんだけど、その光景を見たときの謎の敗北感といったらなかったね。いやわからない。とにかくわからない。もし性別が逆だったならば、べろべろに酔っ払った女の子ひとりと男ふたりなら、状況はまあ理解はできる。ものすごく不同意の臭いがするし、実際にそんな光景は見たことはないけれど、どういった経緯でそうなったのかは何となくわかる。ホテルのカウンターの人に、あれ大丈夫なんすかね、なんて訊いてしまうと思うけど、まあ実際問題どうすればいいんでしょうね、そういう場面に出くわした場合は。
でもまったく逆だったからね。女の子ふたりもまあ陽気に酔ってはいたとは思うけど、足取りはそれなりにしっかりしていて、もう自ら入っていくって感じだったからね。いや本当にあれはなんだったんだろうか。以上、本当にあった不思議な話のコーナーでした。
今日の文章はずいぶんと軽いね。モスキート級って感じ。いまはピン級だけどね。さすがに蚊は失礼だろうって話になったのが容易に想像できる話だよ。最初は横文字だし格好いいじゃんって感じだったのかな。時代は変わるね。常識や倫理観なんかもあっという間に変わっていってしまうわけだ。それにしたって、女の子ふたりと男ひとりっていうのは……おれとしては、男はすぐに寝ちゃって、女の子はふたりでスーパーファミコンミニのがんばれゴエモンゆき姫救出絵巻で遊んでいたのではないかなと想像しているというか、なぜかはわからないけど、そうであって欲しいなと強く思っているんだけど、もしかしておれの性倫理観ってアップデートできていないのかな。いやもちろん女性の方が積極的に楽しんだってぜんぜんオッケーだし、複数人でそういった行為に及ぶというのも、嗜好としてあってもいいのではないですかって感じなんだけど、いざこの目で見てみると、やっぱりなんで? って思ってしまうんだよ。いえね、そういうシチュエーションなど絶対にあり得ないと言っているわけではなくて。そりゃどこかにあってもおかしくないし、そういう話を聞いたって、ふーんって感じで特別驚くに値しないことなんだけど、目の前にそれがある、当たり前のようにまさに今それが行われようとしているっていうインパクトだよ。百聞は一見にしかずってやつ? あれは本当に驚いたね。以上、本当にあった驚いた話のコーナーでした。
もういい加減にやめよう。おれはこういう話題は好きではない。横綱にも品格というものがある。書いているおれは深夜だけど、読んでいる人がそうだとは限らない。まあ読んでいる人の都合を考えたことなんてほぼないんだけどさ。それにしても、今日のこのノリの軽さはなんなんだ一体。なんだかチャラいよ。実際、面と向かって言われたことあるんだけどさ、チャラいって。あれは地味にショックだったね。おれは自分のことをチャラいなんて思ったことは一度もないからね。チャラいヤツが夜な夜なこんな文章を書くわけがないだろう。しかし、チャラいなんて言葉を含んだ文章を書いたことが、おれは今までにあっただろうか、いやない。それが今日は連発してるからね。チャラいって。なんだか嫌だね。好きな言葉ではない。関係ないけど、ドヤ顔って言葉もすごく嫌いなんだよね。だからこの言葉も今まで口に出したことも、文章の中で書いたこともないはず。たぶん。最初はちょっと好きだったんだよ、ドヤ顔って。勘違いしていたから。ドヤ街にいるようなおっさんみたいな顔って意味だと思っていたから。特殊漫画家、根元敬の言うところのイイ顔オヤジみたいな意味だと。でもでも、詳しく聞いてみたら、どやぁって得意な感じの顔ってことらしいじゃん。はあ~、くっだらない。なんだそりゃ。そのまんまじゃないですか。どこにおもしろみがあるのかよくわからない。なぜこんな言葉が唐突に普及し出したのか。よくわからない。おれには本当にもうよくわからないんだ。
TVのお笑いに慣れているヤツは、ここでおれがまた女ふたりに男ひとりの話を書き始めると思っただろう? 天丼ってヤツだろう? そうはいくかっての。このままドヤ顔の話を続けてやるぜボケが。いまではそのへんのおっちゃんおばちゃんすら口にするもんな、ドヤ顔って。狂ってるね。すべてが。ダサいんだよ。なにも言い当ててないじゃん、ドヤ顔ってさ。あれ、おれはドヤ顔ってドヤの部分を片仮名で書いているけど、どや顔なのかなもしかして。いや……でもドヤ顔の方が字面としてはしっくりくるというか。なんか見慣れている感があるというか。だけどどや顔、って書いたらどが続いてしまうものね。働けどどや顔、とかさ。意味がわからなくなってしまう。どんどんどや顔。どれどれどや顔。どすこいどや顔。どぶに落ちて顔がへどろでどろどろどや顔の丹下段平。
やっぱりドヤ顔が正しいと思う。まあもう二度と書かないけどね。ドヤ顔なんて言葉は。今日だけなんだから。だってどう考えたってダサい。おれの美意識が許してくれないよ。こんな言葉は。イケメンってのも生理的に受け付けないね。なんか軽いよね、全体的に。それはそうと、右翼はくたばりやがれ。がなり立てるだけでびびるとでも思ってんのかね、あいつら。弱い者いじめしか出来ない臆病者が生意気言ってるんじゃねえよ。いや今日、ちょっと嫌なことがあったもので。私怨です。




