ここはおまえに任せておれは先に行く
微熱っぽい日。ソフトフォーカスレンズを通して過ぎてゆくうたかた状態。おれの挙動にはブラーがかかり、頭を動かすたびにシャリンと電気が走る。ちくしょう。また薬を飲み忘れていたんだ。まったくいつまでこんなものを飲み続けなければいけないのやら。だけどカプセルを飲み込む時は、いつも健康優良不良少年気分。春木屋のカウンターでピーナッツ3個を頼むんだ。あの頃の未来と言ったら、猥雑で、退廃的で、刺激に満ちていた。いまの未来はどうだ? まるでヴィジョンが浮かんでこない。おれたちは未来を夢想することをやめてしまったみたいだ。きっと西暦のせいだろう。2000年代も24年目らしい。そろそろ四半世紀が経とうってのに、2000という数字にいまだ漂う未来感は一体なにごとだ。ミレニアムベイビーも20代中盤だってよ。龍が如くがナンバリング8作目だってよ。しかもコマンドバトルRPGになって2作目だってよ。ミレミアムタワーの便所もそろそろ黄ばみが気になっている頃だろう。これが未来だぜ。ごきげんじゃないか。
おれは物質的にはごくごく一般的な生を送っていると見せかけて、精神的には浮世離れした生活を営んできたわけだけど、気づくと社会は異様に変容していて、なんだか不細工な心の狭い連中にまわりを囲まれていた。当たり前のことが当たり前でなくなり、普通のことがまるでタブーのように扱われ、日常生活の一部がヤバいだのエグいだの闇が深いだの、戯言を抜かすボケナスどもの顔色をうかがいながらも、それでも前向きに生きている偉い男がおれなんだ。物質界にどっぷり浸かったヤツらは、よく嗤い、よく喋る。へえ、こういう生き方もあるんだ。最初に気づいたころはなんとなく感心していたものだし、おれだって器用なところを見せてやらないと、なんて積極的に混じり合おうとしてみたけれど、無理なものは無理だということがよくわかった。おれはもう、連中に愛想笑いすら浮かべたくない。挨拶もしたくない。それでもおれも霞を食って生きているわけではないので、そろそろ労働者再デビューをしなければならない。気分としては最悪ってわけでもなくて、まあまあって感じ。なんだかんだで働いて金をもらうのは、気持ちのいいものであるからね。どうせ、なるようになるし、なるようにしかならないんだ。むしろおれとチームを組むヤツらに同情するよ。きっとおれは掻き回す。ごめんね。おれはきみたちを嫌ってしまうだろう。泣かせてしまうかもしれない。泣くなって。仕事ごときで。どうせ仕事なんて冗談みたいなものなんだから。真面目に懸命にやってりゃいいんだろう。こんなに簡単なことはないじゃないか。おまえらさえ、おれの邪魔をしなければな。あと残業。これだけはマジで好きになれない。一刻も早く職場から離れたいおれの心を踏みにじる悪魔の所業よ。やりたいヤツはやればいいよ。おれは嫌なんだもん。
まあいいんだ。今回ばかりはおれも少しは奉仕の心ってやつを胸に刻んで取り組もうと思うよ。できるのか? やってみなければわからないぜ。無理ならそのときはそのときってことで。今までずいぶんおれのワガママで人を傷つけたり悲しませたりしてきたんだから、その懲役って考えるんだよ。おれへの罰だよ。生きること自体が罪であるならば、生きなければならないことが罰なんだ。さあ、おれを裁いてもらおう。おれを断罪してくれよ。
そんなこんなで2時46分。ルート246。深キョンだね。小西康陽プロデュース。こういうまったく興味のないことはいちいち覚えているくせに、大事なことはすべて忘れてしまうんだ。でも人間ってそういう生き物だよね。特別高くアンテナ張ってるわけでもないのに、わけのわからないことばかり受信保存してしまうのさ。タンスを担いだ演歌歌手とかね。デボン青木とかさ。節操なく脳内に記録しておけばいいってものじゃないだろう、そう叱ってやりたいけど、おれの身体はおれの言うことをちっとも聞いてくれないんだから。
まったくおもしろくない文章を書いている自覚はあるよ。でもこの流れは止められるものではない。おれなりにあらがうつもりで、こういう自意識を書いてみたんだけど、一度勢いのついたものはどうしようもないぜ。大自然の驚異の前には人類は無力なのさ。だってしょうがないじゃない。おもしろくしようとして、おもしろくできるのなら最初からしてるって。こういうときは判断を他人に委ねるに限るね。いつもはおれ自身が審判だけど、今日は審判が試合放棄だ。おれはつまらない文章だと思う。けど他の人が考えることはまったくわからないし、多くの場合において理解に苦しむ考えばかりだから、もしかしたらこんな文章だっておもしろいと感じる人がいるかもしれない。もしそうなら、良かったね。楽しい文章が読めて羨ましいなあ。おれはつまらないと思うよ。それでも書き続けるんだよ。書き終わったら発表するんだよ。なぜ? なぜ。疑問に思うこと自体が間違いなんだって。そう決まっていることなんだから。そういうものなんだよ。この文章がおもしろくないことさえ、おれのせいじゃないからね。おれはもうそれくらいの精神性を得たからね。だからお勧めだよ。なるべく毎日文章を書いて他人に見せ続けるのは。恥ずかしいとかそういう気持ちが一切なくなるから。おれ自身もうわけがわからないんだから。確かにおれが書いている文章なんだけど、たまにまったくの赤の他人が書いた文章のように感じるよね。だからどうしたって思うだけなんだけどね。おれが。
最初は文章が上手になりたくて、文章を書きまくろうとこういった活動を始めたわけだけど、結果的に文章が下手でも全然気にならなくなったっていう皮肉な話だよ。良いんだか悪いんだか。おれにとっては悪いことではないんだけど。とてもラクだからね。産みの苦しみも飽きも通り過ぎると、こういう境地になるんだなっていう、妙な感動があるけどね。こんな景色だったんだって。別に綺麗な景色でもなんでもないけど、まあいいかって感じ。でもやっぱりすべては繰り返すわけだから、また来ると思うわけですよ。産みの苦しみだったり、飽きだったり、クオリティが気になったり。というか先週くらいはそんな感じだった気がする。なんというか、文章の中だけ時間の流れがゆっくりなんだよな。実生活では一週間前なんて当たり前に一週間前なんだけど、一週間前に書いた文章なんてかなり過去のことのように思えるからね。あれ? これってむしろ時間の流れが速いのか? ちょっと待て。しばらく考える……時間の流れがゆっくりだと、一日が長いわけで。つまりこういうことか。おれの意識だけが速くて、文章の中に流れる時間の流れは普通、みたいな感じ? つまりとか言ってるけどつまれてないじゃん。つまれてないって表現もどうかと思うけどね。もうよくわからないね。とにかくおれの伝えたいことが伝わっていることを祈るのみよ。伝わっていなくたって、阿部千代さんもいろいろと考えたりしてるんだなって思ってくれれば。別に思わなくたっていいんだけどさ。まあ勝手にしてください。おれは知らない。おれには関係のないことだから。でも意識が速いってのは、もしかしてアレですか。おれの文章は上達の一途を辿っているということでいいのですかな。成長著しい若手の有望株ってこと? トップ・プロスペクト? イチロー二世? 九州のダルビッシュ? さよなら。