ゆいこのトライアングルレッスンD〜たくみと秋祭り〜
『ゆいこのトライアングルレッスンD』に投稿したものです!
毎日レッスン!2日目٩( 'ω' )و
「ゆいこ、今年も一緒に行くぞ!」
「オッケー!」
わたしは、たくみの誘いを二つ返事で了承した。
毎年この街で開催される秋祭り。
ひろしと、たくみと、3人で行くのが恒例行事になっていた。
お祭り当日、わたしは浴衣を着て約束の場所へと向かった。
「たくみ、待った?」
「ん? 今来たとこ。ゆいこ、浴衣かわいいな」
「バカっ! 何言ってんのよ!」
本当は嬉しいくせに、素直になれないわたしがいる。また今日も、たくみの言葉を突き放してしまった。
「あれ? ひろしは?」
「ひろしは、来ないよ…」
「えっ!?」
「今日は、ゆいこと俺の二人だけ!」
たくみがわたしを見て、微笑む。
わたしは、当たり前だと思っていた。
お祭りには3人で行くものだと。
「ゆいこ、行くぞ! 花火が見れる特等席!」
「え、ちょっと! たくみ!」
たくみは、わたしの手を握ると、人混みをかき分けて足早に進む。
どうしてこうなった?
こんなはずじゃないのに!!
わたしの心の中は、何故だか言い訳を探そうとしている。
やがて、見晴らしの良い場所に着いた。
完全に二人っきりだ。
「こ、こんなの、まるでデートみたいじゃない!」
「え? 俺は最初からそのつもりだけど?」
「へっ……!?」
こんなとこ、ひろしに見られたらどうするのよ! そう口に出しそうになり、わたしは言葉を飲み込んだ。
あれ? わたしったら、何を……。
夜空に花火が上がる。
繋がれた手から、たくみの想いが伝わってくる気がした。
「ねえ、たくみ……」
「ん?」
「たくみってさ、そのぉ……わたしのこと、好きなの?」
勇気を出して、たくみに尋ねた時、無情にも目の前に大きな花火が上がり、わたしの振り絞った小さな声はかき消された。
「ん? わたしの……なんて?」
「べ、別になんでもない!」
わたし達はしばらく、ただ花火を見つめていた。
帰り道、男友達と歩くひろしの姿を見つけた。
「ひろし!」
わたし達は、どちらからでもなく、スッと繋いでいた手を離す。
「ゆいこもお祭り? 楽しかった?」
「う、うん。そんなことより、ひろしは女の子とデートじゃなかったのね? わたしはてっきり……」
「俺がいなくて、寂しかった?」
「べ、別にそんなんじゃ……。ひろしが誰とお祭り行こうと、わたしには関係ないし?」
「俺は寂しかったよ」
ひろしがわたしの耳元で囁いた。
「へっ……!?」
「ゆいこ、来年の秋祭りは、俺と一緒に行ってくれよ!」
ひろしがわたしを見て、微笑む。
横を見ると、たくみはご機嫌斜めな様子だ。
3人で並んで歩く帰り道。
わたしの両隣には、ひろしとたくみがいる。
いつも塾に迎えに来てくれた二人だ。
ひろしとたくみが、他の女の子とデートしていても平気……なんて言ったら嘘になる。
この時間は、あとどのくらい続くのだろう。
そう長くはないのだと、わたしは悟った。
明日は、ひろしと登山をお届けします!
感想など頂けると喜びます。