九話 国王
『王の間』に呼び出されたのはキリ、イサ、トクン、そしてビジュン。
それに同席することになった夏公長は内心はらはらとしている。
なんと言っても、王からの謝罪と王への報告の両者を兼ねた場面である。
夏公長である『陽吾:ヒア』は王の間にやって来た四人を見渡した。
形式の礼の姿勢をとり、王である男が「うん」と発した。
こうべを上げた四人に、王は視線を巡らせる。
「今回貴殿たちを呼んだのは、『緑の君』の勝手な行動を詫びる機会が欲しかったからだ」
キリとイサについては、自白剤の入った水を飲まされて倒れた。
そしてふたりは一連の過去や思想や、件の簪についての質問を受けたらしかった。
キリとイサは顔を見合い、首をかしげた。
そのような覚えがないのは、その場で専用の術士がいたからで・・・
また、その術士を使用したのも「緑の君」の勝手である、と・・・
「青の君」が言っている、と言う事情だった。
王と「緑の君」は幼馴染みであり、「青の君」は子供が産めない体質で情の仲。
「『緑の君』に先に聞いたが、自分の代りに誠の美女を見て納得したかった、と・・・」
王は「緑の君」が、容姿を気にしていることを知っていた。
なので明らかな美女、「緑の君」からも「青の君」からもキリの名前が出てきた。
そして王はトクンとビジュンを見て、「同時に報告もあると?」と訪ねる。
トクンが緊張した様子で、ビジュンは始終自然体であった。
夏公長は、ビジュンを王様とふたりきりにしてはならないような気がした。
「ビジュンが集めた書について、民から、自分には相談できないことだった、と・・・」
人の好いトクンは今にも泣きそうな・・・申し訳なさそうな声で報告をした。
「話には聞いているが、ビジュンだったか、正義を背負ってるのか?」
「ううん。まさよし。父上の名前~」
「ん?ああ、そうなのか・・・」
「王様って・・・名前、何て言うの?」
「ああ、宝物の宝に、秀でていると言う意味合いでハヤブサ『宝隼:ホウシュン』だ」
ビジュンの「あら、良い名前ね~」の態度に、見張りの武官はヒアに目配せをした。