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十九話 明日へ


 イサこと『緑の君』が出産する場にキリが立ち会って、無事に男児が生まれた。


 すぐに報せはトクンにも来て、後日、特別にキリと見舞いに行った。


 赤子をその腕に抱き寄せているイサを前に、キリとトクンは微笑ほほえみあった。



 面会めんかいを終えて、ふたりでそこらを歩く。



「イサが出産かぁ・・・感慨深かんがいぶかいなぁ」


「幼馴染みかぁ。私からしたら、ビジュンってことになるのかなぁ」


「ははは。ビジュンは王宮に功績を産みましたね」


「ああ、なんだ。たまご、とか言うのかと思った」


「たまご?」


「そう、ビジュンってたまごでいいから子供産んでみたいって言うんです」


 笑うトクンと、周りを気にするキリ。


 トクンは「普段はこんな顔女性には見せませんからね」と言い添える。


「わたし・・・やっぱりトクン様の笑顔が好きです」


「笑顔だけ?」


「いえ、全部です」


「ほう、『やっぱり』っていつから思ってたんです?」


「・・・か、からかわないで下さいよ!」


 

 トクンはキリの唇に口づけを贈った。


 ぎょっとしたキリが退こうとするのを抱き寄せて、トクンが言う。



「もう、男と女の関係です。王宮使おうきゅうずかいを、やめたんだから」


「そう、ですよね・・・はい・・・え、でも・・・人前では・・・」


「分かってます。自分でも意外です」



 そっとトクンの胸元に手を添うキリ。



「・・・私、あなたの前では女になりたい。あなたをつうじて母にもなりたい」


「きっとあなたと幸せな家庭をきずきます」



 キリとトクンは接吻せっぷんをすると、微笑み合った。



 以後、ふたりを王宮近くで見かけた者はおらず、うわさによると徒市にいて・・・


 そして手をつないで街を歩く珍しい老夫婦になったと言う。






 ー終ー


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