十壱話 「赤の君」
武官たちに拘束された「赤の君」は、床にひざをついた状態で王に言った。
「わたくしは女児だけどあなた様の御子を産んだ者っ・・・!」
王は眉間にしわを寄せた。
「・・・それで、その立場で、何をしたと言うんだ?」
「わたくしめは無罪を主張しますっ」
「何について?」と王の隣に座っていたのは妃。
妃は本名を一般開示されず、その愛称を「白君:シロギミ」と言う。
由来は諸説があるが、「無罪」と言う概念的色の「黒」に対してのものだと言う。
その衣も白で統一されていて、四十代にさしかかる貫禄が出てきた妃は口の端を上げた。
「妾は男児を産んだ」
く、と喉元から出そうな悪口に耐え、つばに絡めて飲み込む「赤の君」。
「・・・っ、華麗用の茶葉はそれ専用である、と、以前に聞いていたのですっ」
「ほぅ、それで?」
「・・・そうだ、キリ!!あの女、食料調達係が言っていた!!普通の茶葉だと!!」
「・・・どういう意味だ?」と妃。
「止めぬか」と王。
「その美しい女に、王はきっとたぶらかされたのです!!次の『緑の君』キリに!!」
はっと息を呑む妃の横で、片手で頭を抱える王が深いため息を吐いた。
妃は「病床の『緑の君』が次の「緑の君」を推していると耳にしたのは最近」とぼやく。
「赤の君」は喜びを隠せぬまま、「そうでございますっ」と声を上げた。
「黒い茶が華麗で流行っているのなら、犯人は食料調達係に違いないっ」
王の方を振り向いた妃に、王は「食料調達係のひとりは自害した」と冷静に言った。
「あの女、キリ!!あいつが死んだんですねっ!?ははは」
「『その女』にたぶらかされて、白君に嫉妬をして華麗に黒い茶を広めたのか?」
「無罪を主張しますっ」
そこに武官の訪問者の知らせがあり、書状を持った高官が急ぎの報告に入って来た。
「華麗にて尿を調べた結果、六割の者が黒い茶に悪影響を受けております」
王は深いため息を吐いて、そして少しして「キリを呼べ」と側仕えに言った。




