十話 黒い茶
キリは職務中、見慣れない黒漆塗りの大きな箱を見つけた。
両側に持ち手があるその箱を開けてみると、大量の茶葉の出現。
片手にとって匂いをかいでみると、『普通の茶葉』である。
そこに配達係のふたりの男が来て、「これは『華麗:かれい』のもの」と運んで行った。
奇妙な心地がしたキリは顔をしかめ、しばらくその箱が運ばれていくのを見ていた。
華麗、王の寵愛を実際に受けた王宮の女たちを示す総称。
肩までの長さの髪は波型にくねっていて、その髪色は明るく毛先を赤に染めている。
美しい面立ちはどちらかと言うと愛らしい部類で、年は二十三。
胸元までの布を背中のヒモを編んで留める衣を着た、「赤の君」。
自室の豪華な椅子に座っていて、赤い扇子を顔元で揺らめかせた。
そこにいるのは、キリ。
愛らしい声の「赤の君」が「面倒くさい。本題をさっさと言え」と言う。
「はい。王宮内で、タチの悪い『黒い茶』が流行っております」
「あたしは子供を産んだわ~。他の華麗さんたちも、妃が男児を産んだからいいでしょ」
「・・・と言うことは、『華麗』で黒い茶が流行っておるのは・・・」
「・・・なんのことや?」
「その黒い茶葉を隠すために普通の茶葉を大量に輸入しているのは、『赤の君』ですね?」
「赤の君」は怒りをあらわに、扇子を床に投げつけた。
「どこにそんな証拠があるっ?」
「『黒い茶』が流行っているのは華麗でだけでございます。それを貴女は知っていた」
「・・・は?」
「違いますか?」
「知らんわ。なぁ、誰かー?この女を殺しといてー?」
「お言葉ですが、『赤の君』・・・貴女様のご実家は、徒市への茶葉の問屋」
「誰かっ、今すぐこいつを殺せっ」
部屋に現われたのはトクン率いる『華麗』に対しての派閥を持たぬ武官たちで、
一時期拘束された「赤の君」は王に無罪を主張した。




