表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/19

壱話 平女のキリ


 王宮の廊下には中庭に面した部分があって、飾り細工された欄干らんかん朱塗しゅぬりだ。


 王宮に仕えることになって間もない美女、『希李:キリ』。


 彼女のくらいはその時『平女:ひらめ』であり、平女は王の女達と言う枠になる。


 かと言って、王の姿を拝見する機会があるかどうかも分からない立場。


 特に、誰とも結婚しないことを前提に家から出された、なかなかの器量きりょうよしたち。


 内実、そんな都合で集められた雑務係で、希李は料理を司る役職にいる。


 幼少の頃、一時期の間、母親が料理のできない状態になった。


 それをきっかけに近所のばばたちの集まりに混じって笑いをとっては料理を習った。


 その経験を一般家庭の彼女が王宮で活かすことになったのは、彼女の容姿ようし


 彼女を見捉みとらえはっと息をんだまま、半刻はんこくも動けなくなった男もいた。


 彼女の恋人を名乗って、周りから固めて手玉てだまに取ろうとした女も、いた。


 そんな中、王宮にいる親戚がそれを知って口利くちききをしてくれたのである。


 口利きをしてくれたのは『由杏:ユアン』と言う中年の女。


 ユアンは王の側女そばめの世話係をしていて、側女が普段使う廊下を指定してキリを呼んだ。


 何の用事なのかと不思議な心地のキリの目前に、側女とユアンが通る。


 頭を下げて通り過ぎるのを待っていると、「話があるのだろう?」と側女様。


 ユアンがキリに「側女様が懐妊かいにんしたやもしれぬから、特別な食材を頼むよ」と言う。


 指定された食材は見知らぬもので、考え事をすると歩を止めてしまう癖が出た。


 もう役割のことで頭がいっぱいのキリは、ユアンが立ち去ったあともその場にいた。


 料理人として、食材調達の役割と関係しているからだ。


 そんな時見つけたのは、廊下に落ちているかんざしで、それは側女のものだと思われた。


 に緑を含む鼈甲べっこうの簪には、精緻せいちな柄が彫ってある。


 今先ほどユアンが担当している側女様は「青の君」。


 そして「青の君」が落としたと思われるこの簪は、「緑の君」のもの・・・


 慎重に清潔な手拭てぬぐいでその簪を拾って、ますます困惑しだすキリ。


 「緑の君」は現在、病床びょうしょうにあられる筈・・・


 「青の君」が立ち去ったと思われる辺りを見つめ、キリはしばらく推測おくそくに歩を留めた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ