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66 人類の事情。


      @


 あとで聞いた話である。


 この日、人類の側に勇者カマエルによっていくつかの凶報がもたらされた。

 一つは、必ず来る大戦を前に、魔王側の戦力を削る秘密の作戦が失敗したこと。

 そして勇者の一人が魔王側に拘束されたこと。

 つまり勇者を倒しうる戦力が魔王側に存在することが判明したのだった。


 一方、人類の領域への侵攻部隊として呼び出されていた鋼族が魔王城を包囲したことも伝わった。これは魔族側の内通者からのものだった。鋼族が反乱を起こした可能性が高いと思われていた。


 この『人類の危機』と言える状況に天使庁は、天使庁が秘匿する最強の勇者--『ミカエル』の投入を決断した。

 内心ではその決断をまだ迷っていた教皇エルメッサと五人の枢機卿が待つ天使庁の最奥、秘蹟の間に当代の『ミカエル』が現れた。

 二十歳前のはずだったが、たくましい筋骨と整った顔立ちの堂々たる偉丈夫が、若干内股で歩く姿には違和感があった。


 勇者ミカエルはもじもじと前に進み出たあと、手で口を押さえて周囲を見回した。ステンドグラスから降り注ぐ光がミカエルの周囲を優しく舞った。


「すごぉい。こういうのパリで見たかも……」


 エルメッサは咳払いをした。


「勇者ミカエルよ、そなたが責務を果たすときが来た」

「責務ってなんですか? 聞いてないかも」


 くねくねと身体をくねらせながら不満を漏らすミカエルに枢機卿のひとりがややいらだちを交えた声で答えた。


「勇者の責務はただ一つ。人類の尖兵として魔族を滅ぼすことだ」

「え? あたしが戦うんですか? え? ちょっと怖いんですけど……」

「何を怯える!? お前に与えられた力は人類最強だ! 勇者の中の勇者、大勇者とさえ言われる存在こそミカエルだ!」


 枢機卿の言葉に、ミカエルは口を尖らせた。口では何も言わなかったが不満があるのは明確だった。

 エルメッサは頭を抱えたくなった。

 それでも。

 それでもなお、ミカエルは最強なのだ。



読んでいただいてありがとうございました。これにて第一部完です。今は別のを準備中ですがもし皆さんの応援があれば続きを書きたいと思います。よろしければ評価をお願いいたします。評価だけが心の支えです……! それではまたお会いしましょう!

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