59 発見しちゃった。
王都から出てしまったのかも知れなかった。何しろ勇者というのは本気を出したら馬どころか軽く自動車を追い抜く速度を出せるスペックだ。なんなら空だって飛べる。
俺はベルフェゴールの高度をさらに上げて、大きな範囲を捜索した。ベルフェゴールの目にかかった魔術のおかげでまるで望遠鏡でも覗いているような感じで遠くまで確認することができた。
王都から離れておそらく二十エガス(km)くらいの距離感で俺はそれを見つけた。
それは、小隊規模で五十人前後の部隊だった。
見た瞬間、俺の脳が怒りで沸騰した。
それはどう見ても魔族ではなく人間の部隊で、周囲の風景に溶け込むような茶色いマントを身につけており、魔族の国に秘密裏に侵入してきた工作部隊であることは明確だった。
しかもその部隊は旅のものらしい魔族の一行を襲っていた。魔族の側も必死に抵抗をしているようだが既におそらく剣牙族の亜種と思われる魔族の死体が二つ転がっていた。
感情の高ぶりに俺の視界が紅く染まった。これほどの怒りは生まれてはじめての経験だった。路上で勇者を見た時の怒りを数倍にした感情の爆発だった。
理由がわからなかった。人間の侵入は確かに腹立たしいが、ここまで怒る必要は無いはずだった。にもかかわらず感情の制御ができなかった。
訳がわからないまま気がつくと俺は大規模魔術を組み上げていた。『殻』に蓄えられていた魔力がごっそり無くなった。
半径二百エルメほどの円状の精霊門が掌握され、それが火のフェーズに変換された。三千三百万単位の火霊が魔力圏として装填され、そして魔術が発動した。
業火。
大木ほどの太さのうねる炎が七本、何もない空間に出現した。炙るような熱が百メートルほど離れた俺の顔を赤く染め上げた。その炎が蛇のように絡み合いながらさきほど見つけた人間たちに襲いかかった。
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