58 都市設計失敗してませんか?
整然としていた城内とは異なり、上空から見た王都はひどくごみごみしていて、地上で歩いたときとはまるで違って見えた。正直言ってどこがどこだがわからなかった。高い建物と低い建物がごっちゃになっていて、しかも道路は曲がっていたり、行き止まりになっていたり、極めて非効率的だった。区画整理が必要かも知れないが、たぶん不可能だろう。何しろ魔族には明確な地権の認識はなく、なんとなく先に住み着いた人のもの、という程度の権利意識しかないのだ。
俺は苦労して目的の場所にたどり着いた。南の鐘楼以外の三つの鐘楼の位置を確認して、そこから逆算的に南の鐘の場所を特定してから高度を下げて、先ほど勇者と戦った道に沿って飛び、勇者が封印されていた落とし穴が既に破られているのを確認して、再び上昇した。
やはり勇者は既に罠から逃げてしまったようだ。
残念な気持ちと勇者が自由であることへの不安とそして勇者と面と向かわなくてすんだというホッとした気持ちが混ざり合って複雑だったが、逃げた勇者が魔族にとって危険であることは間違いないので俺はさらに勇者を探した。上空から周囲を確認しても、姿もなく争いが発生している気配もなかったので、俺はそこから同心円状に旋回して周囲を探索した。
影も形もなかった。
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