表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/66

55 逃げ出しましょう。


 俺の言葉通り、爆発音やら地響きやらに近隣の住民達が起き出してきていた。


「ま、待て宰相殿。俺には何が何だか……」

「それは歩きながら説明しますので、ザビーネさんを運んでいただいていいですか? 私は左腕がありませんので」


 勇者を排除するために殉職した左腕は、実は闇精霊を使えば三週間ほどで元通りにできるはずだからさほど気にはしていない。


 なによりあの土砂で埋められても勇者が死ぬとは思えないからこの場を去るのが先決だ。そもそもまともに戦っても勝てないわけだし。


 ミカエルも雪崩に巻き込まれたあと、三日掛けて出てきた。同じ事が先ほどの勇者も可能だと考えるべきだろう。勇者にとってこの程度ではただの面倒な障害でしか無いのだ。


 あとのことはさておいて、俺とエイリッヒは大急ぎでその場を離れた。


 俺はいったんエイリッヒとともに城に戻ると、俺がエイリッヒとともに左腕を失って帰ってきたことに驚く城の侍従にザビーネさんのことを頼み(万が一のためにちゃんと枕元にタライを用意する優しさ付きである)それから自室に向かった。


 ジーメオンの部屋は華美さのかけらも無い執務用の机とベッドが置かれた寒々しい部屋だった。ベッドも木で作られたものの上に干し草をつめた敷き布団を乗せただけの質素なもので、掛け布団さえない。


 だが、俺が用があるのは、ベッドでも机でも無く、部屋の奥から降りることができる物置として使っている奥に細長い小部屋だった。


 ここにジーメオンの七つの肉体--『殻』が置かれているのだ。


 これは実はザビーネさえ知らないジーメオンの秘事である。


 ジーメオンは自身の直接的な肉体以外に『殻』を持つ。それが七つ。ジーメオンは魔術に特化した個体であるが、『殻』はそれぞれジーメオン本体では不可能な異能を持っていた。


 俺はその七つあるジーメオンの肉体の一つを使って、先ほど勇者を埋めた穴を見に行こうと考えたのだった。


読んでいただいてありがとうございます。少しでも面白いと思っていただけたなら、ブックマークやポイントをぜひお願いします!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ