5 もうごまかせない。ごまかせないなら聞いてみよう。
これ以上は無理だな。
せっかく猶予を手にしたのに、俺はあっさりあきらめた。俺は服のチェックだけ済ませると、重厚な飾りのついた木製の扉に近づきそれを開いた。忠臣であるザビーネにここに自分がいる理由をそれとなく聞いてみようと思ったのだ。
作りがいいのか思いがけないなめらかさで扉は開き、その向こうに、突然俺の方から扉を開けたことに驚いたらしいザビーネの普段の無表情が少しだけ歪んだ顔と、そしてその先に驚くほど巨大な鋼造りの人の姿があった。
ザビーネ以外の誰かいるとは思っていなかったから正直俺も驚いた。
しかもザビーネが連れてきた鋼造りの人はただの魔族ではなく、天井に頭が届きそうな身長三メートルの巨体で全身の三分の二以上が最強の硬度を誇るアダマンタイトで覆われた鋼族の英雄の一人で、今現在の族長、その上魔族の中で反ジーメオン派の最有力人物エイリッヒだから驚きはいや増すわけだ。
だが、それ以上に重要な事実があった。
俺だけが知っている『みかこん』の重要イベントの一つ。
エイリッヒが西の塔でジーメオンと対面したと言うことは、すなわち鋼族の反乱が始まったことを意味するのだった。
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