49 チートを前に。
チート主人公に感情移入すると楽しく読めるチート設定だが、敵側に回るとまったく楽しくないことが分かった。
このままでは俺があの南の鐘と同じ運命をたどるのは間違いなかった。ジーメオンの身体は鐘泥棒といわれそうなほど背が高いが、だからといって半分になるのは困るのである。
ジーメオンは八つの命を持つが、それは別の姿の身体を持つだけで、身体の中に命が八つストックされている訳ではないのだ。
「こちらから動きましょう。待っていたら狙い撃ちされるだけです」
「……あい分かった」
エイリッヒがそう答えたのと、ずれが進んだ南の鐘がついにバランスを崩して落ちて地響きとともに砕けたのが同時だった。
俺は鎌を振りかぶり一気に走る。
勇者は笑顔で
「お? 罠じゃ無いのかい?」
「罠ですよ!」
そう言って鎌を右袈裟に振る。
それを受けようとする勇者の聖剣に鎌が触れる寸前、強引に鎌を引き戻し、勇者の空いた胴体に向かって前蹴りを放った。ジーメオンの長い右足が勇者のみぞおちに吸い込まれていく。
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