43 闘う勇気。
俺は覚悟を決めた。
それから立ちあがり、ザビーネから離れた。
エイリッヒと並んで、勇者と相対する。その距離二十メートルほど。
勇者から視線をそらすことなく、エイリッヒに声を掛ける。
「残念ながらこの相手は戦うしかありません」
「……勇者、と言ったか?」
「ええ。あいつが持っている武器はあらゆる物を切り裂く斬鉄の恵みを持っています」
「恵み、だと? 人間どもの魔術--天使の恵みという奴か」
「うんざりしますが、でもそういうわけだから武器や盾で受けることは不可能なのです」
「……」
エイリッヒが言葉にならないうめき声を上げた。
ゴーレムは俊敏さに欠けるパワータイプの種族だ。従って相手の攻撃は武器か盾で受けるのが基本である。その防御が意味を成さないと知れば、呻くのも当然だった。
理屈上は勇者より先に自分の武器を勇者の身体に届かせれば勝てるが、聖剣で払われれば武器さえ切り落とされてしまうのだから、エイリッヒとしては攻略方法が見つからない。
さらに、
「めんどくさいことに魔術も基本的にはああなった勇者に傷はつけられないのです」
エイリッヒが今度こそギョッとした顔をした。
読んでいただいてありがとうございます。ブックマークは評価ポイントがやる気の元です。ぜひ、お願いします。




