41 紙一重。
エイリッヒが「くそっ」と叫ぶ。俺を救うために駆け出そうとする。
尋常でない速度の攻撃だったが、幸い俺は勇者の一挙手一投足を注視していたから間一髪避けることができた。
死とニアミスしたことで冷や汗が流れる。
こうなる気はしたのだ。こんなに上手くいくわけがないのだ。俺の身体をかすめるように突き入れられた聖剣が横に振られる前に俺は大きく飛び下がり、必死な声で
「一つ質問していいですか!?」
俺を追いかけながら勇者が首をかしげる。
「ん? なんだい?」
俺はさらに大きく一歩飛び下がり追ってくる勇者からさらに距離を取りながら、それを追ってくる勇者に向かって
「私が背負っているこの秘書の子なんですけど、飲み過ぎて意識を失っていて、私とあなたの会話を聞いてません。だからこの子は抹消の対象外だと思うのですが?」
勇者は突然、動きを止めた。急制動を感じさせない朗らかな笑みを俺に向け、
「そういうことならもちろんだよ。女の子を殺したがるなんて、ガブリエルだけで充分だ」
読んでいただいてありがとうございます。もしログインされていたらブックマークとポイント評価をぜひお願いします!