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27 妖樹族の族長。


 妖樹族族長と腹を割って話せというエインリヒの提案に俺は頭を抱えたくなった。


 現在、八大魔族の中では鋼族と妖樹族がジーメオンを敵対視し、逆に叡智族と不死族はジーメオン派で、その他は中立(但しジーメオンに嫌悪と恐怖を抱いている)という状況である。


 もともと一角族であった魔王一族は、ジーメオンの能力によって急速に勢力を拡大した。


 一角族が不死族を下し鋼族と同盟を結びイシリア大陸で最大勢力となって魔王を僭称した二百年前、それ以前の最大勢力であった二角族が、剣牙族、巨人族(ただし戦闘には不参加)、竜族、叡智族、天魔族を説得し反魔王連合を形成した。その反魔王連合軍と魔王軍はイズラエル平野で一大会戦を行い魔王軍は見事それに勝利した。これで二角族は完全に滅亡し、剣牙族以下、反魔王連合に参加した種族の長は戦闘に参加していなかった巨人族を除いてことごとく殺され、反魔王勢力は一気に勢いを失い、魔王は名実ともに魔族の『王』となった。反魔王連合に参加しなかった各種族は雪崩を打って魔王に従うことを決め、妖樹族もまた魔王の麾下に参じることを伝えるために使者を送ってきた。その使節は妖樹族の長アグリッピーナその人であった。アグリッピーナは二千年は生きているという古代ドライアドの一体である。魔族における最初の一体--原種と呼ばれる精霊の化生体の次の世代、つまり第一世代と呼ばれる立場で、見た目はうら若き乙女であるが、その知恵は深淵の如く深く、その心は誰にも読めず、戦争向きではない妖樹族を導きこの乱世を生き延びさせた大政治家だ。


 そんな彼女は魔王軍の君臣の間に生じた間隙を確実に突いてきた。


 彼女は最前線で軍の再編を進めていたジーメオンではなく、一角種族の本拠地にわずかな護衛とともにいた魔王ヤザガエルのもとへ直接赴いたのだ。各種族への勧告はジーメオンの名前で出されており、他の長がすべてジーメオンのもとにやってきたのと異なる対応で、すでに事実上魔王軍の総司令となっていたジーメオンと名目上のトップ魔王ヤザガエルの間を裂くための手立てであることは間違いなかった。


 実際、魔王ヤザガエルは伝説の妖樹族長が自分のもとに来たことにすっかり気をよくして、妖樹族と同盟を妖樹族が有利な形で結んだ。さらにアグリッピーナは魔王相談役というよく分からない立場に就任し、それをジーメオンは追認せざるを得ず、魔王が治めるさまざまな種族が混在する魔族の国--黄昏の王国の秩序は建国当初から乱れることとなった。何しろ最後の最後で王国に参加した種族が、初期から苦楽をともにした種族以上の特権を手にしたのだ。こうして混乱の萌芽は仕込まれたが、形式上は魔王の配下であるジーメオンにはどうすることもできなかった。またこれによってもともと間隙があったジーメオンとヤザガエルの間に決定的な亀裂が入った。


 そんなわけでジーメオンにとってアグリッピーナはうんざりする相手であり、その記憶を共有する俺にとってもアグリッピーナは決して会いたい相手ではなかった。その策士アグリッピーナとの腹を割った面談は困難極まりない未来図だった。想像するだけで胃が痛くなる。


 おっぱいも小っちゃいし。

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