26 鋼族の条件。
実際のところ、グラム城攻略はやめるわけにはいかなかった。それを放置しておけば、魔族が棲むイリシア大陸への侵攻は確実に行われる。現在、人類サイドでは七人の勇者が集められ、天使庁の指揮のもと着々と準備を進めているはずだ。『みかこん』ではそうなっていた。グラム城はそれを邪魔するためにも絶対に必要なのだ。
俺の言葉に、エイリッヒはじっと俺の目を見つめてきた。
「……はじめるのだな?」
「ええ。先ほど言ったように、待てば待つほど人類の勢力は拡大していきます。それほど人類と魔族の生物としての底力は差があるのです」
「分かった。ただし、その前にこちらも条件がある」
「なんでしょう?」
「宰相殿には妖樹族の長アグリッピーナ殿ともこのような場で腹を割って話をしてもらいたい」
思わず見返した。
酔っているのは間違いないが、思った以上に真剣な目がこちらを見つめていた。
妖樹族、ドライアドを中心とした動く植物というべき彼女たちは、ジーメオンを敵と見なす一派だ。
そんな相手と腹を割って話す? そんなことそもそも可能なのか?
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