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23 チューハイスタイル


 すぐにキッネと別皿に置かれたライルが届く。ライ麦に似た穀物から作られた蒸留酒は癖があるものの、こうして冷やして酸味のあるライルと一緒に飲むと飲みやすいのである。


「このような飲み方があるとは知らなんだ。何もかも宰相殿のおかげだ」


 届いたばかりのキッネにライルを絞り込んで「皆に精霊王の祝福を」というお決まりのセリフのあと、「我が息子にも精霊王の祝福を」とこちらは二倍ほど大声で祈り、それから一息に飲み干してエフゥと酒精混じりの息を吐いたエイリッヒは感慨深げに言った。


「宰相殿には感謝しておる」


 そうして頭を下げた。今日だけでエイリッヒが何度俺に向かって頭を下げたか数え切れないほどだ。エイリッヒは心底奥さん思いらしい。


 羨ましい。


 一刻も付き合っているとさすがにアダマンタイトの鉱皮越しであっても微妙な感情表現が分かってきた。ゴーレムであろうと現代日本の人間となんら変わりは無い。忠義を美徳に持ち、家族を愛し、部下を大切にしている中小企業の社長だ。


 こういう相手は嫌いでは無かった。


 宰相殿という呼び方については何度か指摘したが酔っぱらっているせいか結局直らなかった。まぁ、この場末の店にさすがに宰相がいるとは思わないだろうから、あだ名か変わった名前だと思ってもらえるはずだ。


 この店自体は行きつけというわけではなく、勘で適当に選んだのだが、正解だった。いい飲食店というのは、現代日本もこの世界も変わらなく、古びているが店構えが清潔で、かつ店員からやる気が感じられるものだが、この店はまさしく当てはまる。つまみもうまく、混んでいるのに新しい飲み方を試したいという客の無茶な要望も聞いてくれる。


 実際、評判がいいようでこの狭い店内に色んな種族が入り乱れていて、空いているテーブルはなく、あちこちで会話と魔族ならではの合唱(手拍子付き)が行われていた。おかげで、ゴーレムと美女と骸骨という妙な組み合わせの俺たちもさほど目立っていない、と思う。

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