22 素面ですから。
酔っ払いの二人に対して、俺はほとんど酔っていなかった。酒は飲んでいるがこのジーメオンの身体の対毒耐性はかなり強力なようで、酩酊感はまるでなかった。
俺は目の前の空になったばかりのコップを手に取ると魔術を使った。たちまちコップは霜に覆われそしてその中に大きな氷の塊ができる。それから店員を呼び、
「この中にキッネとライルのかけらをお願いします」
ライルは柑橘類の名前だ。キッネとライルと氷の組み合わせはこの店のメニューにあるわけではなく、俺が指定したものだが、先ほどから同じ注文をしているので店員も慣れたもので黙ってコップを受け取った。
それを見て声を上げたのはエイリッヒで、
「さ……宰相殿、我の分も頼んでもらえぬか?」
呂律の回ってない口でそう言った。
俺は黙ってエイリッヒのコップの中にも氷を作ってやった。
それからこっそりと
「彼の分は薄めでお願いします」
と店員に頼むと、獣魔族と思われる店員は分かってますという笑みをかすかに浮かべて頷いた。
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