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2 つらいんですけど。

     @


 まず圧倒的な記憶に打ちのめされた。


 ジーメオンとしての無限に続くような記憶の海に飲まれ掛けて、よろめく。

 何とか倒れずにすんだが、まだふらつく身体のバランスを必死に取りながら自分で自分に言い聞かせる。


 冷静になれ。

 落ち着け。


 おそらく現実には数分。だが、主観的には数時間にも及ぶ戦いののち、かろうじて俺は記憶の読み出しを止めることに成功した。そのままふらふらと窓に近寄ると、下を見た。眼下に魔王領が一望できた。石造りの町並みと所々に上がる炊煙、そして夜空を照らす月が二つ繋がっていることから感じる圧倒的なファンタジー感。


 とは言っても『みかこん』の世界観は全般的に中世風の世界+魔法という平凡なファンタジーなので、見ただけで「あ、俺、『みかこん』の中にいるわ」とは分からない。二つの月は確かに珍しいかも知れないが、月がふたつあったりする世界はファンタジーでは普通にある、と思う。では、なぜここが『みかこん』だと確信できたかというと、自分の悪の宰相ジーメオンとしての記憶があったためだった。


 ジーメオンは数千年近く生きてきたらしい。恐ろしいことに振り返って見れば確かに人類からしてみれば憎まれて嫌われて卑劣や鬼畜と言われるのにふさわしい所業の数々だった。


 とりわけここ数百年はひどく、ぱっと思い出すだけで、それはちょっとどうなのよと言いたくなるような悪行三昧である。根源的に人間に対する憎悪があり、人間を滅ぼすために行動をしていたようだ。しかもジーメオンは強かった。ミカエルを苦しめた六つの殻と呼ばれる身体を持ち、魔術のエクスパートでもある。


 うんざりすることに俺は先代の魔王の死にも関わっていたらしい。『みかこん』内ではそういう噂もある、程度であったが実体はほぼ主導的にジーメオンが行ったことと言っていいくらいである。


 その果てが、今現在魔王領の実質ナンバーワン。実質というのは形式上は先代魔王の娘である現魔王ハインリーケがトップと言うことになっているからだった。もちろんまだ生まれて一三年に過ぎないハインリーケにはなんの権限も与えられず、すべてジーメオンの手の中だ。現在は魔王領をまとめ上げ、いよいよ人類を滅ぼすべく動き出す準備なのだった。


 念のために夢じゃないよな、と頬をつねってみたところ、痛みを感じなかったがそもそもこのジーメオンの身体はかなり特別な魔族で感覚が鈍いのである。だが、つねられている感覚はあるのでたぶんここはリアルだ。


読んでいただいて有り難うございます。ブックマークと評価のみが支えですのでぜひお願いします……!

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