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19 妖樹族の女性は美しい。
パウラが弱々しく微笑んでから
「体調不良が続いており、不安だったのですが、宰相様の示唆で原因が分かりました」
穏やかな声だった。癒やし系だ。
少しエイリッヒが羨ましい。
俺は俺の心を読んだのかなぜか鼻高々のエイリッヒにチラリと目を向けたあと、パウラに向かって
「あー……えっと、なにより、です」
「はい。夫共々感謝しております」
パウラは腹部に愛おしげに手を当て、
「我らの子も宰相様に感謝していることでしょう」
エイリッヒが大きく頷いた。
「うむ。感謝しておる。それで今日参ったのは先日宰相殿が申しておった方法をさっそく試してもらいたいのだ。理由が分かったとはいえ妻が過敏症で苦しんでいる姿は辛いのでな」
これほど美しい奥さんを持っていたらそういう気持ちも分かる。俺は原口太一だった頃から奥さんに縁は無かったが、エイリッヒがパウラに向ける視線の優しさにちょっと感動しながら、
「分かりました。やってみましょう。こちらへ」
俺はパウラを執務室の隣の部屋に導いた。
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