18 あれ? 俺、間違ってた?
あまりにも強引な侵入に、あれ? もしかしてまだ奥さん妊娠してなかった? いや、でも魔族の妊娠期間は二年近くのはずだし時期的に見て妊娠しているはずなのに……と逃げ腰になった俺の前に、待ちきれなかったのか必死に制止しようとしている兵士を三人ほど引きずりながらエイリッヒが現れた。
ぶら下がっている兵士に気づいてさえいない様子でエイリッヒは俺を見ると開口一番、
「宰相殿の言葉はまことであった!」
と歓喜の声を上げた。
どうやら怒りに駆られて、ということでは無かったようで俺はホッとする。しかもエイリッヒが抱えていたのは門番の兵士だけではなく、
「え? あれ?」
「そういうわけでな。妻が挨拶をしたいと申しておる」
エイリッヒが掲げるように曲げた右腕に座っていた小さな人型がぺこりと頭を下げた。まるで木でできた美しい人形を乗せているように見えたそれは、どうやら妖樹族の女性だったらしい。
「はじめまして。パウラと申します」
人形が言葉を発した。その美貌にふさわしい、まさしく鈴を転がすような声だったが弱々しかった。
「あ、どうも……ご主人にはいつもお世話になっております」
慌ててこちらも頭を下げた。
知識としては知っていたが、実際に見ると今さらながら驚愕である。
まず妖樹族の女性の美しさに驚いた。まるで芸術品だ。木目の肌と緑の葉の髪の毛、目は青く宝石のように輝いている。
さらに夫婦のサイズの違いにも驚く。成長したライオンと仔猫くらいのサイズの差がある。これでどうやって子どもができるのだろう、という疑問はジーメオンの知識が答えてくれた。魔族はどんなにサイズが違っても、肝心のもののサイズは一緒らしい。つまり、あれ--性器のサイズが共通なのだ。だからどんな組み合わせであろうと魔族同士は生殖行為が可能なのだという。ちなみに人間や亜人とは繁殖できない。この辺りも仲良くできない理由なのかも知れない。
そして俺の目には妖樹族の女性の周囲の光精霊が活性化しているのがはっきりと映った。
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