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13 鋼族族長は混乱している!


 エイリッヒは疑問の言葉を発したあと、何かに気づいたように目を剥いた。


「……ま、まさか妻の腹の子を堕ろすつもりか?」


 それから思い詰めた顔で一人でブツブツ言い始めた。


「いや、確かにパウラの命を救うためならばやむを得ないのかも知れぬが、そもそもパウラがそれを認めるか……あれはずいぶん我との間に子どもを欲しがっていたのでな。いや、それを説得するのが我の責任か……」


 意外なエイリッヒの素顔だった。どうやらかなり恐妻家らしい。しかも奥さんのことを心底心配している。


 俺はエイリッヒを安心させるために言った。


「違います。安心してください。生まれてくる子どもの命を奪おうなどとは考えていません。私は直接胎児に精霊を支配する方法を教えようと考えているのです」


 エイリッヒが今度こそ完全に固まった。


 実際、俺も『みかこん』内でそのような描写がなければ考えもしなかっただろう。


 だが、ミカエルは『みかこん』の中でパウラの腹の子に、霊気を使って精霊の制御の仕方を教えていた。胎児にモーツアルトを聴かせる胎教のようなものである。精霊の制御の初歩は半ば本能に近いからある程度まで育った胎児ならば可能なのだろう。

 もちろん、俺は霊気を使うことはできないが、魔力で同じことが出来るのではないか、と思っているのだ。


 『みかこん』の中にジーメオンが人間の捕虜から重要な情報を聞き出すシーンがある。このシーンでジーメオンがやっていたことがミカエルが行っていた霊気を使う同調ととても似ていることに思い至ったからだった。ジーメオンとしての記憶に照らし合わせても可能だと思う。


 エイリッヒの視線が左右に泳いだ。


 それはそうだろう。あらゆる意味で混乱中のはずである。突然、敵だと思っていた相手に、妻の妊娠を伝えられたのだ。すぐに飛んで帰りたいに違いないが、それを表立って言えないのだ。


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