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12 ずるですみません。


 物語のラスト近く、ジーメオンが封印されたあと、病み衰えた妖樹族の女が、戦いで焼け野原となった王都ヤザットにぽつねんと立っているのをたまたまミカエルが見かけた。何となく気になって声を掛けたところ、妖樹族の女は自分が滅んだ鋼族の族長エイリッヒの妻であったこと、そして光精霊過敏症の療養中にすべてのことが終わり、たった一人残されたこと、腹の中には鋼族の最後の胤が宿っていること、だがこのままでは出産まで体力が持たない可能性が高いことなどをポツポツと話したのだった。


 精霊過敏症は、精霊の親和性が中途半端に高い場合なってしまう病気である。精霊に対する支配力が足りないまま精霊からの干渉が多くなると、常に囁き声のような声が聞こえてくる。精霊の言葉は基本意味を持っていないが、その囁きによって体内の魔力のバランスが崩れ、心身を病んでしまうのだ。


 治す方法は魔力を鍛え精霊に対する支配力を増すしか無いとされているが、それも才能が必要な方法であり誰もが回復できるまで魔力を鍛えられる訳では無かった。


 だが、パウラの境遇に同情したミカエルはある意外な方法でパウラの病を治療した。


 そして、その方法はジーメオンにも出来るはずである。


「治療方法について心当たりがありお呼びしたのですよ」


 思った通り、エイリッヒは俺の言葉に乗ってきた。


「まことか! う、嘘ではあるまいな?」

「嘘ではありませんが、確実というわけではありません」

「う……うむ。精霊過敏症は難治であることは存じておる。だからこそ治療法があるとは聞いたことがない」


 気がつくとエイリッヒは戦闘態勢を解いていた。

 エイリッヒはうつむいて考え、しばらくして顔を上げた。


「……その治療法を妻に試してもらえぬか?」

「はい。そのつもりでした」

「つもり……つまり取引ということか? しかし」

「取引ではありません。奥様の治療に成功したとしても何かを要求するつもりはありません」


 エイリッヒの目の奥に暗い光が宿った。俺が『引き延ばしのための嘘をついている』と思ったのだろう。心を閉ざされては困るので、俺は咳払いをして、核心を伝えた。


「パウラ殿が突然光精霊過敏症を発症した理由は新たな命を授かったからです」

「!?」

「お腹のお子さんはかなり光精霊との親和性が高いようですね。もともとそれなりに光精霊との親和性をお持ちであった奥様はそのせいで強い影響を受けてしまうようになってしまったのだと思われます」

「いや……待て。だ、だがしかし……なんというか。パウラが妊娠……だと……す、すぐには信じられぬ」

「それはご自分でご確認ください。パウラ殿はきっと思い当たる節があるはずです」

「妊娠……妊娠か……それがまことだとして、パウラが妊娠しているとして、どうすれば光精霊過敏症を克服できるのだ? 腹の子の魔力を鍛えるわけにもいかぬ」


 エイリッヒは混乱していた。

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