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10/66

10 ゴーレムは固い。固くてデカい。


 大柄な身体からは想像できない俊敏さで右のフックをザビーネに向かって放つ。ザビーネはわずかに後退した。空気との間で摩擦が発生しそうな勢いで西瓜ほどの大きさの砲弾じみた拳がザビーネをかすめた。


 拳が通り過ぎた瞬間、ザビーネが一歩前に出る。完全に見切った動きだ。


 右手の手の平をエイリッヒに向けて、腐食魔法の最終侵攻地点を指定する。


 だがエイリッヒの回転は止まらず、右フックに続いて左の裏拳がザビーネに襲いかかった。


 ザビーネはこの動きを予想してなかったようで、驚愕の表情を浮かべた。


 必死に両腕でガードしようとするザビーネに、エイリッヒの左拳が迫る。腕ごとザビーネの頭を粉砕する直前、エイリッヒの左腕が大きく上に跳ね上げられた。俺がザビーネから奪ったばかりの精霊門を使って、氷魔術を発動し氷の塊でフックの軌道をそらしたのだ。


 ギリギリだった。最初にザビーネが闇フェーズに移行していたら、腐食魔法では間に合わなかっただろう。


 エイリッヒは即座に飛び下がって距離を取る。


 俺は追撃をせず、


「そういうことではなくてですね。エイリッヒさんを呼びだした理由はちゃんとあるのです!」


 エイリッヒが構えたまま疑わしげに


「なんだと? とうてい信じられぬ。ギルガンドも宰相殿の呼び出しのあと、姿を見ぬ」

「ギルガンド? 誰ですかそれは?」

「鋼族の勇者だ」

「正直存じあげませんね。呼び出したという記憶もありません」

「理由があったとしてもこやつがジーメオン様に無礼を働いた事実は変わりませぬ。万死に値します」

「誤解を与えたのは私にも責任があると言えます。とにかくザビーネさんはちょっと落ち着きなさい。これは命令です」

「はい。ご命令とあらば」


 ザビーネの顔が一瞬で冷静に戻った。天を衝いていた怒髪が収まり、所作までいつものザビーネに戻り優雅な立ち姿を見せる。その謹直に見える表情の裏でザビーネが歓喜しているのが長い付き合いだからわかった。ザビーネはとにかく俺に命令されるのを好むのである。


 その変化に毒気を抜かれたのはエイリッヒも同様のようで、大きく息を吐き、それから構えを解いた。


「……分かった。理由があるというのならば聞こう」

「助かります」


 とにかく俺は大きく息を吸い、


「では--」


 俺は一か八か口から出任せでごまかそうと思った。

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