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リトル・レディ(2)レディの操縦法

 澄ました顔の順子を、少し困ったような顔の家政婦が見る。箸使いのひどさと好き嫌いで、北浜と家政婦は毎食困っていたのだ。

 それを見ていて、つい、湊は口を出した。

「レディなら、まさか好き嫌いをしてトマトを残すなんて子供っぽいまね、まさかしないよな」

 順子はグッと箸を握りしめ、涼真は慌てふためいた。

 しかし順子は、傲然と顎をそらして言った。

「まさか。こ、これは、とっておいただけよ!最後に食べようと思って!」

 向かい側で、家政婦が唖然としている。

「そうだろうな。そうだと思った。

 では、レディ。立派なレディは、箸遣いにも気を配らないといけませんよね」

 順子はぐぬぬと唸り声を上げ、つりそうな指使いで箸を持って、どうにかトマトを口に運んだ。

 家政婦は、口を押さえ、目を見開いている。

「どう?」

「ああ、はい、よくできました。偉い偉い」

「キイー!腹が立つわね!何か!」

「怒りながら食べると消化に悪いですよ、レディ」

「うるさい!」

「トマト完食のご褒美にプリンです」

「こ、子ども扱い、は」

「じゃあ、俺がもらおうっと」

「いらないなんて言ってないでしょ!?」

 順子はプリンをひったくり、足をブラブラと嬉しそうに振りながらプリンを食べる。

 その様子を家政婦と北浜は、最初は目を丸くして、やがてはにこにこと見ていた。

 順子は高飛車というかわがままという面がある。しかしそれもレディという言葉を逆手に取れば、わがままも好き嫌いも宿題もコントロールできるので、面倒が無くて便利だとすら湊は思っていた。

「湊、警護対象をおちょくるなよなぁ」

 家の周囲の定時警備に出ると、涼真がため息混じりにそう言う。

「気にするな」

「しろ」

 周囲がクリーンな事を確認し、中に入る。

 その時電話がなり始め、北浜はスマホに出た。

 仕事の電話かと思ったが、表情が険しくなる。

「お義父さん。

 ええ、元気ですよ。順子も、問題ありません」

 仲のいい親子という雰囲気ではない。

「親権だって私が持っています。私が育てます。私の娘ですから」

 硬い声で短く言い合いをして電話を切り、溜め息をついた。

「北浜さん。今のは、お父様ですか」

 代表して、雅美が柔らかく訊いた。

「お恥ずかしいところを。

 はい。妻が亡くなってから、義父が順子を引き取りたいと言うんです」

 北浜は言いながら、スマホの待ち受け画面を見た。北浜と順子と亡くなった妻との写真だ。

「元々義父は僕達の結婚に反対で。妻が亡くなったので、順子を養女にしたいと言い出しているんです。それで、婿を取って会社を継がせると。

 ああ。義父は、井川ホテルグループの社長です」

 誰もが知るような有名ホテルチェーンだ。去年、跡継ぎの息子が急死している。心筋梗塞となっているが、一部では、危ないクスリの使用が囁かれていた。

 順子は表情を硬くして、

「私は、絶対にパパから離れないから!パパ、ちゃんとおじいちゃんに言ってよ」

と言い、北浜が

「勿論だよ」

と言うと、安心したように、宿題をすると言って二階の部屋へ上がっていた。

 チビと悠花がついて行く。

「親権が北浜さんにあるのは向こうもわかっているんでしょう?」

 涼真が確認すると、北浜は

「ええ。だから、私を殺すんじゃないかと思うほどですよ」

と、苦笑した。


 悠花は順子の部屋に入って、それが目に付いた。親子3人で撮られた写真が学習机の上に飾られていた。

 それを見ている事に気付いた順子は、悠花に自慢気に言った。

「ママ、素敵でしょう。きれいで、優しくて、憧れなの。わたしもママみたいなレディを目指すの」

 悠花は笑って、順子の頭を撫でた。

「そうね。順子ちゃんなら、きっとなれるわ」

「ありがとう」

 順子はヘヘッと笑った。


 北浜が仕事の為に部屋へ行くと、湊、涼真、雅美は小声で話し合った。

「不審者って、井川さんかな」

「でも、自分がいくら孫が可愛くても、親権を奪うのは無理なのはわかるでしょうし、北浜さんをどうにかしてまでなんて……」

「まあ、跡継ぎで困ってるのかも知れないにしてもなあ」

 揃って首を捻る。

「まあ、何でもあり得ると思っておこう」

 油断は禁物。そう肝に銘じた。








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