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欲しい物(2)再会

 そろそろ終業時間なので帰り支度をしながら、錦織が言った。

「例の女性だけどね、お見合いパーティーの」

 錦織 均。柳内警備保障秘書課別室室長である。見た目はにこにことした日向ぼっこでもしているのが似合いそうな雰囲気だが、元は切れ者の公安マンだ。

「結婚しようとか言ってなかったし、ハッキリとあれをくれこれをくれとも要求してなかったそうだ。男が彼女の歓心を買いために勝手に忖度して頑張っちゃったという事だね。だから、結婚詐欺で送検はできないらしいよ」

 それに、各々溜め息のようなものをもらした。

「限りなく結婚をちらつかせてねだったんでしょうにねえ」

 雅美はそう言い、

「ああいう女の人っているんですよね。かわいい女を演出して、甘えて、おねだりして、もっといい人が見つかるか相手がうるさくなって来たら『そんなつもりじゃなかった』とか被害者みたいな顔をして言う人」

と悠花は嫌そうに言う。

「怖い……」

 涼真は真顔でショックを受けたような顔をし、湊はウンザリしたような顔をしていた。

「涼真はころっと騙されそうだよな」

「んな!?」

「そうね。だから彼女もあの時、自分の味方になってくれそうな人として涼真君の腕に縋り付いたんでしょうね」

「そういうの、薄々わかりますもんね」

 涼真は雅美と悠花に言われ、ガーン、と言いたげな顔で固まった。

「ま、怖い女に騙されないようにな」

 湊はポンポンと肩を叩き、

「お疲れ様」

と席を立った。


 涼真は買い物をして帰ると言う湊に追いついて、途中まで一緒に帰る事にした。

「お見合いかあ。彼女を作ろうにも、出会いがないしなあ。ああいうのに登録するのもいいのかな」

 涼真が言う。

「お見合いパーティーねえ。何か、笑顔なのに怖かったぞ、あれ」

 湊が言うと、涼真は少し俯いた。

「うん。ちょっと、あれは、な」

 結婚相手を見定めるその目がハンターのようだったし、襲われたあの女の事は、そうと知らなければ、清楚でかわいらしいか弱い美人にしか見えなかった。

 涼真は軽いトラウマになりかけていた。

「涼真は、ころっと騙されて結婚して、結婚した途端いいように扱われそうだな。亭主元気で留守がいいみたいな」

「ああ、ボクもそんな気がしてきた!」

 涼真は愕然として、頭を抱えて強く振った。

 と、その光景が目に入り、湊も隣で、悪意を感じ取っていた。

「いいだろ、な?」

「やめてよ」

 男が女に何か言って絡んでいた。

「大変だ!」

 涼真は飛び出して行き、湊は止めそこなって渋々それに続く。

「何をしてるんだ!」

「何だ、お前は?」

「嫌がってるだろう?」

「関係ないやつはすっこんでろ、ボケが!」

 男女の間に入った涼真に、男が絡んで行く。

 そしてとうとう殴ろうとしたので、湊がその肘を背後から掴んだ。ツボを押さえているので、かなり痛い筈だ。

「痛テ、テテテ!何しやがる!?」

「これ以上やると、警察呼ぶぞ」

 男はチッと舌打ちすると、湊と涼真を睨み、女に、

「また来るからな」

と言って、足早に立ち去った。

 涼真はそれを確認して、

「もう大丈夫ですよ」

と振り返り、その女の顔を見て、

「ゲッ」

と言った。

「何よ、失礼ね」

 女は口を尖らせた。そこにいたのは、お見合いパーティーで襲われたあの女だった。

「湊ぉ」

「お前が何も聞かずに走って行くからだろ」

 湊は面倒臭いと言わんばかりの顔で、肩を竦める。

「まあ、御礼は言っておくわ。ありがとう。

 そう言えば名前を言ってなかったわね。近藤幸恵。よろしくね」

 涼真は

(わかってるのに、やっぱりかわいく見える)

と、泣きたくなった。

「で、あれは?」

 湊がどうでも良さそうに訊くと、幸恵は顔を歪めて答えた。

「元カレよ。さんざんお金もせびり取って、私の名前で借金までして、それでほかの女と浮気して――いえ、私が浮気相手というか金蔓だったのよね――で、私のいない間に家中の金目の物を持ち出して出て行ったやつ。

 今度はその女に振られたのか、また金欠なのか知らないけど、よりを戻そうって言って来たの」

 涼真も湊も、眉をひそめた。

「酷いな」

「見下げたやつだな」

「でしょ。でも、あいつ、言う事きかないと殴るし……」

 幸恵が下を向き、次いで、目を輝かせて顔を勢いよくあげる。

「いい事思い付いたわ!あなた達をボディーガードに雇うわ!」

 涼真と湊は、顔を見合わせた。




 

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