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守る(1)一念発起

「そこまでだ」

 倉庫の鍵を壊そうとしている集団に湊が声をかけると、彼らはギョッとしたように手を止めた。

 最近この辺りの店が夜中に次々と侵入され、警備員や警察が駆けつけて来るまでの短い時間に商品や現金を盗まれるという事件が相次いでいた。

 そこで柳内警備保障もこの店から依頼を受けたのだ。

 防犯カメラは取り付けてあるが、異常を察知して駆けつけてもその前に逃げられるのであれば失敗だ。そこで、閉店後の店に張り込む事にしたのだ。

 しかしいくらこの辺りが連続して被害に遭っているとはいえ、この店に来るかどうかはわからない。そこで、「今日はこの店に、売上金と、明日一番の支払いの為に大金が置いてある」という情報をさりげなく流し、誘ったのだ。

 被害に遭っている店の特徴と合わせれば、9割の確率で釣られるだろうという目論見は当たり、窃盗団はこのリサイクルショップへ侵入しようとしていた。

「騙しやがったな!」

 フルフェイスのヘルメットをかぶった11人組は、逃げるかと思いきや、迎え撃つのが湊、涼真、雅美だとわかると――悠花は離れた所から撮影をしながら、警察への連絡をする係だ――、向かって来る事を選んだ。

「死ね!」

 各々、バットやゴルフクラブなど好きなものを武器として持ち、振り上げる。

 青い顔を引きつらせてそれに臨むのは涼真だが、雅美は好戦的な顔付きで、湊は無表情で、各々涼真の前に出て行って、特殊警棒でそいつらを手あたり次第という感じで殴りつけていく。

 涼真は後ろから、やられてもまだ動こうとするやつらにとどめを刺していく。

 11人が呻きながら地面に倒れ伏してから数分後、やっとパトカーのサイレンが聞こえて来た。


 翌日の終業後、秘書課別室はいつもの飲み会をしていた。

 ローストビーフ、サバ缶サラダ、田楽豆腐、エビチリ、スコッチエッグ、枝豆。それに社長の柳内が、寿司桶を手土産に合流して来た。

「いやあ、お手柄だったね。それに誰もケガが無くて良かったよ」

 柳内は機嫌よくそう言って、笑う。

「全くです。頼りになりますよ」

 錦織はニコニコしながらそう言って、ビールを飲む。

「雅美さんと湊はね。ボクは何もできなかったし」

 涼真がそう言うと、悠花は目を丸くした。

「そんな事ないですよ?涼真君もちゃんとやってたじゃないですか。私なんて、怖くて近付けないから……」

「いやいや。悠花さんは、経理とかの専門家だし」

 涼真は言って、うんと決心した顔で頷いた。

「決めた。ボク、もう少し真剣に鍛えようと思う」

 湊と雅美は何か言いたげに口を開きかけたが、目を見交わして、口をつぐんだ。


 社内のトレーニングルームの端で、涼真は荒い息を静めようとしながら、打ち合う雅美と山本を見ていた。

「大丈夫か?」

 湊が涼真をちらりと見て、雅美達に目を戻す。

 雅美と山本の方がきっちりと正規のトレーニングを受けているので、手本にするにはこちらがいいだろうと思って、涼真が見るのはこの2人だ。

「凄いよなあ」

「まあ、あの2人は、本物のエキスパートだからな」

 湊が言う通り、流れるような動きも、一挙手一投足もが、美しい。

「ああ。ボクは、ダメだなあ」

 涼真が言うのに、湊は軽く嘆息した。

「お前はわかってないな。

 いいか?ボディーガードというのは、守るのが仕事だ」

「うん?うん。そうだな」

 涼真は、

(こいつ、今更何を言ってるんだ?)

と湊を胡散臭そうに見た。

「涼真は、相手を安心させて、信用を築くのが上手いだろ。それに、粘り強い」

「まあな」

「だから、それが涼真の武器だと思う」

 涼真は湊を見、しばらくしてから言った。

「ありがとうな、湊」

 湊は涼真を困ったように見ていたが、山本が、

「悔しいが、木賊さんはやっぱり強い。篠杜、交代だ」

と言うので、そのまま立ち上がった。




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