07.フレンド神使(2)
ストーリー出発用の門の前にまでやって来た。端末を取り出し、行き先を確認する。前回、2話を攻略したので新しいバナーが表示されていた。新しい目的地は――
「黄都?」
おや、と反応を示したのは烏羽だ。常日頃から浮かべている、何かを企んでいるような笑みだ。ただ、常々そんな表情なので実際は何も企んでなどいないのかもしれないが。
「とうとう目的地が都になりましたか。ええ! これまでの村や町に比べると、かなり広いまっぷとなるでしょう! ふふふ、楽しみですねぇ、召喚士殿」
「へー、マップ作り込まれてるのかなあ。かなりリアルだし、ちょっと楽しみかも」
「はい? そういう事を言っている訳ではないのですが。ええ」
「このグラフィックで海とか行きたいな……。まあ、正式リリースしたら夏イベもあるだろうし、海楽しみだなぁ」
烏羽は沈黙した。イベントに関する台詞は用意されていないのだろう。そもそも、イベントを開催した所で何を景品にするのか、という話だが。期間限定の神使が景品だったりするのかもしれない。
色の名前が付けられている彼等だし、外国産でバイオレットとか。ありそう。
そんな事に思いを馳せながら、バナーをタップする。いつもならば門が荘厳な感じで開け放たれるのだが、今日はその前にワンクッションが挟まる。
そう、本日二度目のチュートリアル。フレンド神使の同行についての説明だ。強化のチュートリアルは薄群青がやってくれたが、フレンドのチュートリアルは端末が行うらしい。この違いは一体何なのか。
『同行させるフレンドの神使について
以降のストーリーでは、フレンドの設定する神使を同行させる事が出来ます。まずはフレンドの中から好きな神使を選びましょう。フレンドがいない召喚士様の為に、此方でフレンドを用意しております。』
タップしてチュートリアルを消す。運営が用意したフレンドが一番上に表示されてはいたが、その下にチャットルームの面子が並んでいた。試しに白星1の『月白』を選択してみたが、特に問題は発生しない。
しかし次の瞬間、確認画面で赤文字の注意書きが表示される。
『※注意!
お連れの神使と相性の悪いフレンド神使が設定されています。このまま同行させますか?』
「えっ、何この恐い注意は……」
「大丈夫ですか、主サン? トラブってます?」
薄群青がやや心配そうにそう訊ねてきたが、「大丈夫」と返し端末に視線を落とす。「はい」か「いいえ」を選ぶボタンが出現していた。ここで「はい」を選べば同行者に月白を設定できると思われる。
こう書かれているという事は、ストーリーとは別に神使のサブストーリー的なモノが展開されるのかもしれない。あわよくばレアシーンとかありそう。この注意文も裏を返せばイベントの伏線で、実際には本当の意味でのトラブルなど無いはず。あったら困るけれど。
この文字が何を意図して出て来たのか、それらしいフェイクなのかは判断する術がない。字は真偽の判断が出来ないからだ。
――いいや、連れて行ってみよう。
所詮はゲーム。面白いトラブルが起これば、それはトラブルではなく儲けもの。神使同士の相性が設定されているなんて作り込まれているな、とそれくらいだ。
考えた結果、花実は「はい」をタップして白星1の月白を同行者に選んだ。まだ月白とやらの外見は確認出来ていないが、同行者欄が名前だけだと見づらいという要望を運営に送った方がいいのかもしれない。
チュートリアルが再び進む。フレンドの神使はどういう扱いになるのかと思えば、どうやら必要時に助っ人としてプレイヤーが喚び出す形式のようだった。
『フレンドの神使はストーリー中、端末に表示されるバナーのタップで行えます。ストーリー1話につき、1度しか喚び出せませんので使用時はお気をつけ下さい』
――強いフレンドがいたら、ヌルゲーになっちゃうもんね。了解。
心中で頷く。ストーリー中に1回か。ゲームを円滑に進める、と言うより詰み防止の意味合いが強い。ガチャ運が奇跡的に悪いプレイヤーの為の処置、と言ったところか。
納得してチュートリアルを終える。大変な事になってきたら、迷い無く白星1から借りた神使を喚び出す。それだけだ。
端末から顔を上げると、心底退屈そうな表情に変わった烏羽と目が合う。しかも、嘆息された。
「終わりましたか? ええ、我々を平気で待たせる召喚士殿に嫌味を言いたい訳ではありませんとも」
「それが嫌味なのでは……?」
「反抗的ですねえ、ええ。構いませんけれど」
キャラクターと会話を試みるようになってから、烏羽を不機嫌にさせてばかりのような気がする。ただ、彼の吐き出す嫌味な発言は全て真実なので、嘘を吐かれるよりは精神的に楽ではあるが。
肩を竦めて初期神使の視線を受け流し、ストーリーに入る為のバナーを再度タップする。フレンド同行のチュートリアルが挟まったので、処置がやり直しになっていたようだ。
余裕があるのなら、別のフレンドからも神使を借りたいな、などと考えていると門が開け放たれた。次の目的地は都らしい。このグラフィックで広いマップに出られるのは楽しみだ。
花実は意気揚々とその足を踏み出した。




