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33.グレーゾーン(3)

 ***


 いつもの宿の大部屋に戻ってきた。そう長い外出ではなかったはずだが、随分と久々に戻って来たような気がする。

 変わった点と言えば褐返がいなくなった場所に、薄藍がインしたくらいだろうか。まさか、架空の4人目がプレイヤー側の神使だったとは。憶測があまりにも無駄に加速してしまった感は否めない。


「まさか、褐返くんが裏切者だったなんてねぇ。黒系だったけれど~、洗脳が解けた今でも凄く真面目にお仕事してたと思うのに~」

「何より恐ろしいのは、召喚士サンがあんまりにも的確に褐返サンが裏切者だって見抜いた事なんスけど、コレ何? 先見とか、予知能力的な力でも持ってるんスかね。主神様ならそういう仕込みしといてもおかしくはないけど……」


 薄群青に説明を求めるように視線を向けられたが、花実は気付かないふりをした。話題を変えるべく、別の話を引っ張り出してみる。


「この後はみんな、どうするの?」


 問いに対し、薄藍が一番に反応する。彼は概ねプレイヤーに優しい。


「僕は阿久根村に戻ります。薄桜が待っているので」

「あー、そういえばそうだった。助けてくれて、ありがとう……。流石にあの時の灰梅と二人きりだって気付いた時は死ぬかと思ったよ」

「いえいえ」


 そんなやり取りに対し、薄群青が疑問を口にした。


「そういえば、どうやって月城町まで来たんスかね、薄藍は」

「僕ですか? 神使が2体以上いれば、近距離移動できますよ。阿久根村と月城町はさほど離れていないですし」

「ふーん、月城にも2体神使がいる訳だし、やり方を一応教えて貰っていいッスか」

「ああいや、簡単な話です。汚泥の海には輪力が一切ありません。ので、輪力がある土地から輪力を引きつつ、それを受け取って結界を張りながら汚泥の中を進むだけですよ。なので、輪力を供給及び結界を薄桜に任せ、僕は汚泥の中を突き進んでここまでやって来たに過ぎません」

「なるほどね。確かにあまり遠くへは行けなさそうだ……。ま、覚えとくわ」


 ――この会話は後のストーリーに今までの神使が追加参戦するフラグかもしれない。

 こういうやり取りを見るに、やはり神使は出来るだけ犠牲を出さずに進めるべきだろう。とはいえ、これはゲーム。ある程度、路線に沿って進んでいるはずだ。烏羽がいくら同僚を事ある毎に処断しようとしても、ゲーム側からそれとなくストップが掛かるとは思う。

 などと考えていると、少し疲れた顔をした灰梅が言葉を発する。


「わたしと~、薄群青くんは~、月城町に残ってお役目を果たすわ~。召喚士ちゃんはどうするのかしらぁ?」

「私達は次のストーリーに進むかな。あ、でも、数日は進められないかも……」

「……何だかよく分からないけれど、助けが必要なら~、出来るだけ駆け付けるようにするから一緒に頑張りましょうね~」

「あっはい」


 プレイヤーに驚く程、好意的だ。ソーシャルゲームと言うのはプレイヤーにヘイトが高いキャラクターが少ない傾向にあるので、これが一般的なのかもしれない。というか、もう流石に分かる。最初に引いた烏羽が完全に少数派のキャラクターだ。

 ところで、とそれまで黙って事の成り行きを眺めていた烏羽が態とらしく首を傾げる。


「薄藍殿はいつからここに? 今までは何をしていたので?」

「僕は召喚士殿がやって来る1日前に、月城に到着していました。別件があったのですが、裏切者がどうのと揉めていて、様子見をしていましたけどね……」

「では、あのクソ険悪な状況を横目に、ずっと隠密行動で人前には出て来なかったと。ええ、召喚士殿の件がなければ許されませんよ、そんな動き」

「あの場で僕が出て行ったら、僕に裏切者の濡れ衣を着せる流れになるでしょう。自分で自分の潔白は分かっているので、無用な混乱を避けたまでです」


 この様子からして、烏羽もずっと薄藍がいた事には気付かなかったようだ。これも全容が明らかになっていない、特殊能力の恩恵らしい。ところで、うちの神使はいつになったらその能力を使用してくれるのだろうか。強化メニューの話も全然来ないし、親密度とかいう目に見えないパラメーターがあるのか?


 考え込んでいる内に烏羽と薄藍のやり取りが唐突に終息する。この2人、前々から思っていたがかなり相性が悪い。まあそもそも、烏羽と相性の良い誰かというのは存在するのかも怪しいが。

 さて、と烏羽が肩を竦める。


「もう月城でやる事は無いのでは? ええ、月白の管轄ですし奴と鉢合わせる前に社へ戻りましょう、召喚士殿」


 お開きを感じ取ったのか、不意に薄群青が声を上げた。


「あ、召喚士サン。さっきは俺の発言を信じてくれて……まあ、ありがとさん。ぶっちゃけ、烏羽サンと共同生活なんて本気でごめんだけど、困ってるなら俺の事を喚んで貰っても構わないッスよ」

「おや、私が……何ですか? ええ、新人いびりなどしませんよ。貴方の行動次第ですが」

「秒で矛盾するの止めて貰っていいッスか。ともかく、そういう訳だから。また縁があったらよろしく」


 およそ初めて召喚に前向きな発言を貰い、花実は素直に感動した。これがソシャゲの醍醐味である。よかった、ちゃんとソーシャルゲームらしくなって。

 こうして惜しまれながらも月城町もとい2話の舞台を後にしたのだった。


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