だから君がいい
だから君がいい
作:ラインハルト
※性別変換はしないでください。両声類、多声類だからという理由は認めません。あくまでも現実での性別でお願いします。
※過度なアレンジ、アドリブは禁止です。本筋から外れない程度のアレンジ、アドリブであれば大丈夫です。
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登場人物
春:ある日から癌に罹っていると知ってしまう。夏海の事を誰よりも想っている。
夏海:学生時代に春と出会い交際を始めた彼女。春の事を一途に想い続ける。
医者:春の事を昔から知っている人物。春or夏海どちらかと兼役でお願いします。
役表
春:♂
夏海:♀
夏海「冬が終わる頃に私は君と出会った…春の訪れを思わせる様な爽やかな笑顔を見せる君と。」
春「はじめまして!僕の名前は春って言います、よろしくね!」
夏海「私は夏海、よろしくね春くん!」
春「僕はあの時、一目惚れをしたのだと思う。
この人と出会えたのは運命なんだと思った」
夏海「私はあの時、一目惚れをしたのだと思う。
この人に会う為に私は生まれてきたんだって」
間
春「今日は夏海と久しぶりのデートなのに、寝坊しちゃったよ!夏海怒ってないといいなぁ」
夏海「春、遅いなぁ…まさか今日の事忘れてるって事はないよね?電話しよ。」
春「あ〜、夏海から電話来たよー。
もしもし?ほんとごめん!寝坊しちゃって!もうすぐ着くから少しだけ待ってて!」
夏海「寝坊しただけだったんだね、よかった…何かあったんじゃないかって心配したんだよ?慌てなくていいから、事故とかに気を付けて来てね?」
春「ありがとう夏海!出来るだけ急いで行くね!
怒ってなくて良かったぁ」
間
春「おまたせ夏海!」
夏海「どこも怪我してない春?大丈夫?」
春「どこも怪我してないよ、大丈夫!」
夏海「よかった…ほんと心配したんだからね!心配させた分、今日はいっぱい楽しんで甘えさせてもらうからね?」
春「分かってるって!僕も久しぶりに夏海に会えるの楽しみにしてたし」
夏海「ほんとかなー?そうやって機嫌直そうとしてない?」
春「そんな事ないって!いじめないでよ」
夏海「ふふっ、ごめんね、少しだけ意地悪したくなって」
春「それじゃ、行こっか?ほら、手出して」
夏海「うん!」
間
夏海「んー!たのしかったねー!」
春「たのしかったね!やっぱ僕、夏海の事大好きだ、このままずっと時が止まればいいと思う位に大好きだよ」
夏海「急にどうしたの?そんなこと言われなくてもわかってるよ?私も、春の事大好きだよ、春の事だけが大好き」
春「なんだか照れるね、こんな事言い合ってると」
夏海「そうだね、たまにこういうのも必要だし、いいんじゃないかな?」
春「そうだね…それじゃ、そろそろ帰ろっか?明日もお互い仕事だし遅くなり過ぎてもね」
夏海「だね。それじゃ、帰ろっか」
間
春「ふぅ…なんだか今日は体調が良くないな、病院にでも行こうかな」
間
春「久しぶりだね先生、いつ以来だろう?」
医者「本当に久しぶりだね春くん、今日はどうしたのかな?」
春「実は、朝起きた時から体調が良くなくて…」
医者「なるほどね…それじゃ、診察をした後にレントゲンも撮ってみるかい?」
春「そうですね、お願いします」
間
医者「春くん…非常に言い難いことだけど、君は…癌に罹っている」
春「……えっ?先生、もう一度お願いします」
医者「落ち着いて聞くんだよ…君は癌に罹っている、それに転移もしている」
春「癌…ですか…治らないんですか?」
医者「今すぐ入院して治療に入ろう春くん、必ず助けてみせる」
春「少しだけ…少しだけ考えさせて下さい」
医者「わかったよ…でも、こうしてる今も病状は進行しているから、出来るだけ早く決断して欲しい」
春「…わかりました」
間
春「僕が癌に…なんで…どうして…転移もしているって、治る可能性の方が低いじゃないか…夏海にどうやって話せばいいんだよ」
間
医者「どうするか決めたかい春くん?」
春「決めましたよ、先生…入院します」
医者「それじゃ、入院の手続きや御家族には私から連絡しておくよ」
春「ありがとうございます…あっ!先生!家族に連絡した時に僕の彼女にはこの事を伝えない様に言ってて貰えませんか?」
医者「彼女にこの事は伝えない様にと、伝えればいいんだね?」
春「はい、お願いします」
間
夏海「最近、春どうしてるんだろう…あまり連絡も来なくなったけど、仕事忙しいのかな」
春「夏海どうしてるだろうな…連絡も出来てないし、心配してるだろうな…入院したのはいいけど、こんなに辛いなんて…メールだけでもしておこう。
最近連絡出来てなくてごめんね。仕事で出張が入っちゃって忙しくて、なかなか連絡出来なかったんだ、ほんとごめんね。」
夏海「ん?メール?春からだ!よかったー、ちゃんと春から連絡来た。
えーっと、出張で忙しくてなかなか連絡が出来なかった。
そういう事だったんだー、良かった。
仕事が忙しくて、連絡出来なかったのなら仕方ないよ。
ちゃんと春から連絡来て安心したよ。
返信完了!」
間
医者「春くん、体調はどうかな?」
春「辛いですよ先生…それでも僕、頑張りますよ…癌に負けないように」
医者「病は気からとも言うから、頑張ろう春くん…必ず救ってみせるから」
春「ありがとうございます先生…僕…本当に治るんですよね?」
医者「もちろん治してみせるよ、君を死なせはしない」
春「ありがとうございます」
間
春「先生の、あの顔…あの辛そうな顔、ははっ…やっぱり僕は治らないんだね…ごめんね、夏海…僕は君の隣で、一緒に生きて行くことは出来ないみたいだよ…辛いなぁ…」
間
春「先生、お願いがあるんですけど」
医者「なにかな春くん?」
春「今からビデオレターを撮りたいんですけどカメラの設置と録画開始だけお願い出来ますか?それと録画中は1人にして欲しいです」
医者「分かったよ…それじゃ、少しだけ待っててくれるかな?」
春「ありがとうございます」
医者「それじゃ、撮影開始するよ?準備はいいかい?」
春「はい、お願いします」
間
春「これくらいでいいかな…本当はもっと伝えておきたい事があるけど、長くなりすぎると僕が笑えなくなっちゃうや」
間
医者「録画は終わったかな?」
春「はい、ありがとうございました。
もし…もしも僕が治らなくて死んでしまったら、これを家族から夏海に…僕の彼女に渡すように伝えて貰えませんか?」
医者「分かった…もしも君の癌が完治せずに、君が亡くなるような事があれば伝えておくよ」
春「ありがとうございます先生…僕…少しの可能性だとしても頑張りますから」
医者「私も君が完治するように尽力を尽くすよ」
間
夏海「春と出会って、付き合ってからもう…5回目の冬が終わるのかぁ…長い様で、短く感じてるなぁ…
まだ、出張先で忙しいのかな春…また連絡が来なくなって寂しくなってきたなぁ…
ねぇ?本当は春が入院している事知ってるんだよ…必ず戻って来るって信じてるからね春、私、春が戻ってくるの待ってるから…信じてるから…
あれ?春のお母さんから着信?」
夏海「はい、もしもし…お久しぶりです、はい、はい…春くんから私にビデオレターですか?
はい、わかりました、受け取りに伺いますね」
間
夏海「春から私にビデオレターってどんな内容だろう?春の事だから、連絡出来なくてごめん!怒ってない?って内容だったりして、ふふっ。
とりあえず、再生して見てみようかな」
間
春「ちゃんと映ってるかな?どうかな?
えーっと…元気にしてる?ちゃんとご飯食べてるかな?これを見てる頃には、僕(私)はもう旅立った後になっちゃうね。
もっと君と一緒に過ごしたかったなぁ…でも…でもね?君と過した日々は、どれもこれも鮮明に思い出す事が出来るし、僕(私)にとっては、どれも大切なかけがえのないものになったよ。
君と話した事…君と笑った事…君と…喧嘩したこと…
病気の事…黙っててごめんね。
ほんとはね、ちゃんと話すつもりだったんだ…
でも、君の…君の事を想うと話せなかった…
僕(私)は君と出会えてよかった…幸せだったよ…この時がずっと続けばいいと…時が止まってしまえばいいと思う程に幸せだった。
こんな事言うと君が泣いちゃうね…ごめんね。
これから先は、僕(私)は君の隣に居なくなってしまうから…僕(私)以外の人と幸せになってね?
幸せになってくれないと、僕(私)が泣いちゃうよ?
君は、それでも君がいいって言うかもだけど、それでも…他の誰かと幸せな家庭を築いて欲しいな。
僕(私)は少しだけ先に行ってるから、君はゆっくり来てね?
ちゃんとお土産話いっぱい持ってきて欲しいなぁ。
あまり長くなっても、君が辛くなっちゃうね…
そろそろ終わろうかな…
僕(私)が居なくても、ちゃんと元気に仕事して遊んで、結婚して…子供達に見送られてからこっちに来るんだよ?わかった?
それじゃ、ほんとうに終わるね?
さよならは言わないよ…それじゃ、またね!」
間
夏海「えっ…なに…これ…どういう事…ねぇ!春!嘘でしょ…嘘って言ってよ…私は…私は、春じゃないと…春がいないと駄目なんだよ。
どうして…」
間
夏海「春が亡くなってから1度目の冬が終わって、また春が来る…私は今でも君の事を想っているよ。
君と過ごして来た今日までの日々は、どれも、鮮明に思い出す事が出来るよ。
ねぇ?…君は今、どんな事を思っているのかな?
私は、君を忘れる事なんてできないよ。
どうして、君は私の前から、いなくなってしまったの…
もっと君と、話をして…笑って…喧嘩して…
楽しい時間を過ごしていきたかった…
でも、君はいなくなってしまったね…
どうして、病気の事教えてくれなかったの?
こんな事なら、出会わなければよかった…
そう思ったこともあるよ…でもね、君と出会えたからこそ、本当の意味で、誰かを愛する気持ちが理解出来たんだと思うよ。
君は最期に、僕以外の人と幸せになってと言ってくれたね…
でも、それは無理だよ…君以外の人なんて考えられない…君以上に、誰かを好きになることなんて、愛する事なんて、できないよ。
私に、本当の意味で愛を教えてくれたのは、春だけなんだよ…
私は、これから先何があろうと愛した人の事を忘れる事はできないよ…だから…だから君がいい」