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僕の隣にヤマダくん  作者: 結城太郎
僕とヤマダ君 第一部
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連れてって 後日談

ただ単に、僕を怖がらせるためにした話だったのだろうけど、それから数日、僕があまりにも色々詮索するのでヤマダ君は続きを話してくれた。


例の場所へ行った後日、おおよその位置を調べてみたところ、やはりその辺りに集落はなく、三十年近く前に廃村となった村があると言う事がわかった。


ヤマダ君は、この話を二人の友人に伝えた。


一人目は自称霊感ありの、オカルトマニア。彼は嬉々として、この話を聞き、早速、その場へ向かった。


すると、やはりそこには彼女がいて、彼にこう言ったのだと言う。


「やはり、連れていってもらうだけでは無理だったんだ。次にあの人が来た時は、とり憑いていくしかない」


と——


自称霊能者曰く、彼女は地縛霊であり、長年あの村に囚われているらしい。そのため、村の外へ出た瞬間、引き戻されてしまったのだと……

彼女を村から連れ出そうとしてくれたのは、ヤマダ君が初めてだったから、再び、ヤマダ君が村を訪れ、今度は本当に連れ出してくれるのを待っているのだそうだ。


「アホくさ」


と、ヤマダ君は笑った。


「何十年も囚われているなら、俺より前に同じことをする奴がいたっておかしくないし、俺じゃなくてもそいつにとり憑いて出る事だって出来るんじゃねーのか?なんで、あいつはお喋りしただけで無事に帰って来てんだよ」

「それ本人に言ったの?」

「言ったよ。そしたら、俺じゃなきゃダメだとかぬかしやがるから、もうそれ以上突っ込むのやめた」



そして二人目は芦屋道満の末裔を名乗り、未だに呪術を生業としている家の息子だ。彼のこともヤマダ君はバカにした様な言い方をするが、高校卒業後もなにかと付き合いがある所を見ると、言葉とは裏腹に一目置いているのだろう。僕も何度か会った事がある。

ヤマダ君と同じくらい妙で、食えない男だ。


彼曰く


「タヌキにでも化かされたんじゃないか」


だそうで、ヤマダ君はどちらかと言えばその説を信じているのだと言う。


しかし、まてよ……と僕は思う。

僕と出会う以前のヤマダ君の体験談は、なにかしらの結論に至っていた。

もし、結論が出ていないのであれば、僕、ないし誰かを実験台として連れて行くはずだ。

もちろん、こんな風に真相は明かすことなくに……


なんとも煮え切らないオチではあるけれど、僕にこの話をしたと言うことは、もうその村に行く気はないのだろう。

そう気付いてホッとすると同時に、ふと思う。


ヤマダ君が結論を求めていないのは、案外、自称霊能者の言うことを信じているからではなかろうか?


そんなこと言ったら、どんな目に遭わされるかわからないので、笑みと共に心の金庫奥深くにしまっておくことにしよう。

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