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僕の隣にヤマダくん  作者: 結城太郎
人物紹介的なお話
10/30

凛ちゃんの怖い話

ちょっと本筋とは関係のない情報が多かったり、わからない単語を使われたりであまり内容が入って来なかったのだけれど、凛ちゃんの話はオチまで聞けば中々怖い話だった。


まとめるとこんな感じだ。


先週のこと。

凛ちゃんは友達と繁華街にいた。


その日は学校で嫌なことがあったらしく、ファストフード店で友人と凛ちゃん含む三人で愚痴を零していたらしい。


話題の中心は、生活指導の男性教諭。


この先生は、生活指導担当なだけあって、服装などにとても厳しい。

当然ながら、騒がしい生徒には目が行きやすく、凛ちゃんたちのグループは特に目をつけられているのだった。

凛ちゃんに言わせれば、それが実に不平等だそうだ。

凛ちゃんの言い分はわからないでもないが、僕の方が少しだけ大人なので先生の気持ちもわからないでもない。


その日、その先生が凛ちゃんの親友のピアスを没収した。

他にもピアスをしている子など沢山いるのに……

あの先生は贔屓ばかりする。

没収されたピアスがハンドメイド作品で、この世に一つと同じ形はないと言う物だったこともあり、親友の怒りは計り知れない。


散々怒りをぶちまけた後、親友はポツリと言った。


「マジあいつ死んでくんねーかな?」


僕にはドキリとする言葉だけれど、そこはその場のノリと言うか、若気の至りと言うか、凛ちゃんももう一人のお友達もその意見に同意した。


「マジ死ねばいいよね?」

「ほんと死んじゃえよ!!」


「死ね」を連発しながらゲラゲラ笑えるなんて、その時点で怖い話である。

だけど、そのことに気付けないのだから、仕方ない。


「じゃあ、殺してあげようか?」


流石にこのセリフには、誰も笑わなかった。

笑えるわけがない。


声は三人以外の物だった。

恐る恐る視線をそちらへ向けると、いつの間にか中学生くらいの男の子がニヤニヤと笑いながら三人のテーブルの傍に立っていた。

学ランを着ていたが、どこの学校かはわからない。今時珍しい坊ちゃん刈りで、笑っているけれど、とても陰気な雰囲気だったと言う。

いつもは「あっち行けよ」くらい言いそうな強気の友人も、その雰囲気に思わず閉口したのだった。


「ねえ、その人どこの人?なんて名前?僕が代わりに殺してあげる」


男の子は肩を震わせて笑った。


「結構です」


やっと誰かが声を出し、片付けもそこそこに三人は逃げる様に席を立った。

一番怖かったのは、男の子の左手がずっとズボンのポケットに差し込まれていた事だったそうだ。


「でもこれで終わりじゃないんだよ」


まあ、ここで終わられても、どこな消化不良な感じがするので、続きがあるのは助かる。


「今週の月曜にさ」


急に凛ちゃんが内緒話でもする様に声を落とした。


「不良同士の傷害事件ってニュースになったじゃん?」

「ああ、一人がナイフで刺されたやつ?」

「そうそう。あれね……その子だと思うの……」

「え?」

「ニュースでは不良同士のいざこざってあるけど、あれ嘘。しかも、相手が『死ね』って言ったから怖くて刺したとか言ってるらしいし……もしかしたら、無罪?よくわかんないけど、すぐ出てくんじゃないかな?そしたら、絶対次はマジのやるじゃんね?」


ざわっと、腕が粟立った。


「めっちゃ怖くね?」と、凛ちゃんはケラケラ笑ったが、怖いどころの話ではない。

僕は聞いてはいけないことを聞いた気がした。

そして、この話。僕にはもうひとつ怖いと思うことがあった。


「なんで、そこまで知ってんの?」

「ん?だって、LINEとかTwitterでソッコー顔写真回ってきたもん。拡散されまくってるよー。でも、狙われんのヤだから、この話は誰にも言わない様にしようねーって三人で決めたんだ。だから、あんたも言っちゃダメね!」


と、凛ちゃんは件の記事と顔写真の掲載されたスマホ画面を僕の目の前へ掲げた。

少年の暗い顔よりも【拡散希望】の文字の方が、僕を嫌な気持ちにさせた。


そんな事など知る由もなく、スマホを取り出したついでにか、時刻を見た凛ちゃんが「ヤベっ」と、無駄にスクールバッグをガサガサやり始めた。

僕も見ると、もう九時を三十分近く過ぎていた。


あれ?もしかして、こんな時間に女子高生部屋に上げちゃって、青少年なんちゃら条例に触れないかな?って、僕もまだ未成年だからいいのか……?あれ?どうなんだろ?


そんなことを考えているうちに、凛ちゃんは慌ただしくドアの方へと駆け出して行った。


「じゃあ、またね!ヤマダによろしく!!」


そう言って、凛ちゃんは風の様に去って行った。

今更ながら、本当に怖い話を聞いた後なんだから男として送ってあげるのが筋なのだろうが、僕は暫くその場を動けなかった。

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